胸の痛みがあるのに、検査では異常なし? ― もしかして「INOCA(イノカ)」かもしれません ―
「心臓の血管に詰まりはない」と言われたのに、胸が締め付けられるように痛い…。
そんな症状にお悩みの方はいませんか?
実はそれ、**「INOCA(イノカ)」**と呼ばれる状態かもしれません。
INOCAって何?
INOCAとは、「Ischemia with No Obstructive Coronary Artery disease」の略で、日本語では
**「虚血性非閉塞性冠動脈疾患」**と訳されます。
簡単に言えば、心臓の血管(冠動脈)に明らかな詰まりがないのに、血流が悪くなって心筋に酸素が届きにくくなっている状態です。
「異常なし」とされがちですが、実際には心臓の血流に問題があることがあります。
どんな症状?
以下のような症状があれば、INOCAの可能性があります:
胸の痛み、締め付けられる感じ
胸がムカムカ、あるいは焼けるような不快感
階段を上るときやストレス時に悪化
夜間や安静時にも発生することがある
なぜ「異常なし」と診断されてしまうの?
一般的な冠動脈CTや心臓カテーテル検査では、「太い血管の詰まり」しか見えないため、微細な血流障害は見逃されてしまうことがあります。
INOCAの多くは、以下のような原因で起こります:
冠攣縮性狭心症(VSA):血管が一時的にけいれんして狭くなる
微小血管障害(CMD):非常に細い血管がうまく働かず血流が滞る
女性に多い病気です
最近の研究では、特に中高年の女性に多いことが分かってきました。
ホルモンバランスや血管の反応性が影響していると考えられています。
治療できるの?
はい、INOCAは適切な治療で改善が可能です。
治療法には:
血管拡張薬(カルシウム拮抗薬など)
血小板の働きを抑える薬
生活習慣の見直し(禁煙、ストレス対策、運動など)
があり、個々の状態に応じて医師が調整します。
福本医院では
循環器専門医である福本医院の院長は、INOCAの可能性がある方に丁寧に診察を行い、必要に応じて循環器専門病院との連携を行っています。
「検査では異常がないのに症状がつらい」…そんな時は、決して一人で悩まず、ぜひご相談ください。
まとめ
✅ 胸の痛みがあるのに検査で異常がない方へ
✅ 女性に多く、見逃されやすい「INOCA」
✅ 適切な診断と治療で、改善が可能です!
ご相談は【福本医院 心斎橋】まで。
📚 参考文献
Taqueti, V. R., & Di Carli, M. F. (2018)
Coronary Microvascular Disease Pathogenic Mechanisms and Therapeutic Options: JACC State-of-the-Art Review.
(冠微小血管疾患の病態メカニズムと治療選択肢:JACCレビュー)
Journal of the American College of Cardiology, 72(21), 2625–2641.
https://doi.org/10.1016/j.jacc.2018.09.042
Bairey Merz, C. N., Pepine, C. J., Walsh, M. N., & Fleg, J. L. (2017)
Ischemia and No Obstructive Coronary Artery Disease (INOCA): Developing Evidence-Based Therapies and Research Agenda for the Next Decade.
(虚血性非閉塞性冠動脈疾患(INOCA):エビデンスに基づく治療と今後10年の研究課題)
Circulation, 135(11), 1075–1092.
https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.116.024534
Cleveland Clinic. (2021)
INOCA: A Common, Dangerous, Often Overlooked Cause of Chest Pain.
(INOCA:よくある・見逃されやすい・危険な胸痛の原因)
Consult QD, Cleveland Clinic Heart & Vascular Institute
https://consultqd.clevelandclinic.org/inoca-a-common-dangerous-often-overlooked-cause-of-chest-pain