🌸 季節性アレルギー(花粉症) ― 科学的根拠に基づく原因・診断・治療 ― 福本医院/内科・心斎橋
🩺 1. 季節性アレルギーとは
季節性アレルギーとは、特定の季節に飛散する花粉(スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサなど)に対する免疫反応が原因で起こる疾患です。
主な症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなど。いわゆる「花粉症」もその代表です。
2020年の Nature Reviews Disease Primers による総説では、アレルギー性鼻炎は世界人口の15〜25%が発症しており、都市化・大気汚染・気候変動によって増加傾向にあると報告されています【文献1】。
📅 2. 日本の季節性アレルギー原因カレンダー
(関西エリア基準/福本医院・心斎橋)
月 |
主な原因アレルゲン |
発生地域・特徴 |
主な症状 |
---|---|---|---|
1月 |
スギ(飛散開始)ハウスダスト・ダニ(通年) |
西日本では早くもスギ花粉が飛び始める |
鼻水・くしゃみ・目のかゆみ |
2月 |
スギ(最盛期前半)ヒノキ(飛散開始) |
乾燥・風が強い日ほど多い |
鼻閉・くしゃみ発作 |
3月 |
スギ・ヒノキ(ピーク)黄砂・PM2.5も増加 |
花粉+大気汚染の複合刺激で症状が悪化 |
鼻・眼・咽頭刺激、咳 |
4月 |
ヒノキ(ピーク)シラカンバ(北海道・東北) |
関西ではヒノキが主因 |
鼻閉・涙目・倦怠感 |
5月 |
イネ科(カモガヤ・オオアワガエリ) |
河川敷・公園に多い |
鼻炎・眼症状・咽喉のかゆみ |
6月 |
イネ科(続く)カビ(Cladosporium, Alternaria) |
梅雨で湿度上昇 |
鼻閉・咳・皮膚かゆみ |
7月 |
カビ(最盛期)ダニ(繁殖期) |
高温多湿でアレルゲン増加 |
鼻炎・喘息悪化・湿疹 |
8月 |
カビ(継続)ブタクサ(関西で飛散開始) |
郊外・空き地に多い |
くしゃみ・鼻水・喉のかゆみ |
9月 |
ブタクサ・ヨモギ(ピーク)カナムグラ |
秋の代表的アレルゲン |
鼻炎・眼症状・咳 |
10月 |
ヨモギ(残存)ダニ死骸・ハウスダスト |
室内掃除の季節に注意 |
鼻炎・アトピー再燃 |
11月 |
ハウスダスト・カビ |
暖房開始で再飛散 |
鼻炎・皮膚炎 |
12月 |
ハウスダスト・ダニ |
換気不足による蓄積 |
鼻閉・夜間咳 |
💡 関西特有の特徴
-
スギ花粉は関東より約2週間早く飛散(1月下旬~4月中旬)。
-
ヒノキ花粉は3月中旬から5月上旬がピーク。
-
イネ科は5〜7月に2波、9月にも少量。
-
ブタクサ・ヨモギは8〜10月に飛散。
-
カビ・ダニは梅雨〜夏に悪化し、秋口の死骸でも症状を引き起こすことがある。
🧬 3. 原因と病態メカニズム
花粉などのアレルゲンが鼻粘膜や結膜に付着すると、免疫系が「異物」と誤認してIgE抗体を産生します。
これが肥満細胞(マスト細胞)に結合し、再びアレルゲンが侵入するとヒスタミンなどの炎症物質が放出され、くしゃみ・鼻水・かゆみを引き起こします。
2023年の Signal Transduction and Targeted Therapy に掲載されたレビュー【文献2】では、
アレルギー疾患の共通基盤として「上皮バリア障害」「Th2細胞活性化」「IL-4・IL-5・IL-13経路の亢進」が重要であるとまとめられています。
🧪 4. 診断:原因アレルゲンを特定する
診断には、問診・身体所見に加えて次のような検査を組み合わせます。
-
血液検査(特異的IgE抗体)
MAST48、View39などで主要アレルゲンを一括検査可能。
💊 5. 治療の基本
① 薬物療法
-
抗ヒスタミン薬(第2世代):眠気が少なく、鼻水・くしゃみに有効。
-
鼻噴霧用ステロイド:鼻づまり改善に最も効果的。
-
ロイコトリエン受容体拮抗薬:気道炎症にも有効。
② 生活環境の工夫
-
花粉の多い時期は外出・洗濯物の工夫を。
-
室内はHEPAフィルター付き空気清浄機を推奨。
-
マスク・メガネの併用が有効です。

エアコンのフィルター掃除は、ハウスダストやダニ対策に欠かせません。
季節の変わり目には、マスクを着けて安全に清掃しましょう。
🏥 6. 福本医院での検査と治療方針
-
View39・MAST48によるアレルギー一括検査
-
予防的内服(初期療法) の推奨
📖 参考文献
-
Bousquet J, et al. Allergic rhinitis. Nature Reviews Disease Primers. 2020;6(1):95.
-
Wang J, Zhao L, et al. Pathogenesis of allergic diseases and implications for therapeutic interventions. Signal Transduction and Targeted Therapy. 2023;8(1):268.
DOI: 10.1038/s41392-023-01344-4
-
Durham SR, et al. Allergen immunotherapy: past, present and future. Nature Reviews Immunology.2023;23(3):151–168.
-