虚血性心疾患とは?

虚血性心疾患(IHD: Ischemic Heart Disease)は、心臓の筋肉(心筋)に十分な血液が届かず、酸素不足になることで生じる疾患です。代表的なものに「狭心症」「心筋梗塞」があります。

心筋に酸素を届ける冠動脈が動脈硬化などで狭くなったり詰まったりすると、胸の痛みや圧迫感といった症状が現れます。日本でも高齢化の影響で患者数は増加傾向にあり、早期発見・早期治療が重要です。


主な症状

以下のような症状がある場合、虚血性心疾患の可能性があります:

  • 胸が締め付けられるような痛み(特に運動時)

  • 胸の圧迫感や重苦しさ

  • 左腕や顎、背中に広がる痛み

  • 呼吸困難

  • 冷や汗、めまい、吐き気

症状は「数分で治まる軽いもの」から、「命に関わる緊急状態」まで様々です。特に高齢者や糖尿病の方では、痛みを感じにくいこともあるため注意が必要です。

狭心症発作


検査について

当院では、以下の検査を組み合わせて診断を行っています:

  • 心電図(安静時・運動負荷)

  • 心エコー検査

  • 胸部レントゲン

  • 血液検査(心筋逸脱酵素、LDL・HbA1cなど)

  • 心臓CT・冠動脈CT検査

  • 必要に応じて心臓カテーテル検査

特に心臓CTは、冠動脈の狭窄を評価できる有用な検査です。最近では被曝量も低減されました。

冠動脈CT


治療法

症状の重症度や冠動脈の状態に応じて、以下の治療を行います:

1. 薬物治療

  • 抗血小板薬(アスピリンなど)

  • 硝酸薬(ニトロ)

  • β遮断薬、Ca拮抗薬

  • スタチン(脂質低下薬)

  • ARB/ACE阻害薬(高血圧・心不全予防)

2. カテーテル治療(PCI)

細くなった冠動脈を風船やステントで広げる治療です。入院期間が短く、負担の少ない治療法です。

3. 冠動脈バイパス手術(CABG)

複数の血管が詰まっている場合や、左主幹部病変がある場合には手術が適応となります。


虚血性心疾患は「生活習慣病」

以下のような因子がリスクを高めます:

  • 高血圧

  • 高コレステロール

  • 糖尿病

  • 喫煙

  • 運動不足

  • ストレス

  • 睡眠不足

当院では、再発予防のための生活習慣改善プログラム栄養指導も行っています。


当院でのフォローアップ

当院では、虚血性心疾患の早期発見・再発予防に力を入れています。

  • 定期的な心電図と血液検査

  • 専門医による動脈硬化のリスク評価

  • 心臓リハビリテーションのご案内も可能

  • 手術後・カテーテル治療後の外来フォローも対応

紹介状がなくてもご相談いただけます。


参考文献

1. Journal of the American College of Cardiology(JACC)

  • 記事タイトル: 「Evolving Management Paradigm for Stable Ischemic Heart Disease」

  • 概要: このレビューでは、安定型虚血性心疾患の管理における薬物療法と手技的アプローチの統合が、患者の転帰を最適化する可能性について論じられています。 


2. Nature Reviews Cardiology

  • 記事タイトル: 「Clinical quantitative cardiac imaging for the assessment of myocardial ischaemia」

  • 概要: このレビューでは、心筋虚血の評価における心臓画像診断の役割について、SPECT、PET、MRI、心エコー、CTなどの各モダリティの利点と限界を概説しています。 


3. International Journal of Molecular Sciences(MDPI)

  • 記事タイトル: 「Ischemic Heart Disease and Heart Failure: Role of Coronary Ion Channels」

  • 概要: このレビューでは、冠動脈のイオンチャネルが虚血性心疾患および心不全の病態生理において果たす役割について詳述されています。 


日本循環器学会ガイドライン

  • タイトル: 「慢性冠動脈疾患診療ガイドライン(2023年改訂版)」

  • 概要: このガイドラインは、慢性冠動脈疾患(虚血性心疾患を含む)の診療に関する最新のエビデンスと推奨を提供しています。


最後に

胸の違和感や息切れを感じたら、それは心臓からのサインかもしれません。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。