【片脚のむくみ・急な息切れは血栓?】 深部静脈血栓症(DVT)・肺塞栓症の見分け方|Wellsスコア解説 大阪市中央区 心斎橋 福本医院
「片脚だけ急に腫れてきた」
「ふくらはぎが痛い」
「急に息が苦しい」
それは、血栓(エコノミークラス症候群)の可能性があります。
正式名称は
深部静脈血栓症(DVT)。
その血栓が肺に飛ぶと
肺塞栓症(PE)になります。
早期発見できれば治療可能ですが、見逃すと命に関わることがあります。
■ 深部静脈血栓症(DVT)とは?
脚の深い静脈に血のかたまりができる病気です。
主な症状:
-
片脚だけの腫れ
-
ふくらはぎの痛み
-
押すと痛い
-
赤みや熱感
この血栓が肺に飛ぶと、
突然の息切れや胸痛を起こします。
(参考:Lancet 2016)

片足(左足)のふくらはぎが赤く大きく腫れ上がり、痛みと熱感を訴えるいののさん。
■ なぜ「いきなりDダイマー検査」ではないの?
Dダイマーは血栓ができると上昇する血液検査です。
しかし、
-
風邪
-
がん
-
手術後
-
炎症
-
高齢
でも簡単に上昇します。
重要なのは:
👉 Dダイマーは「陰性なら除外に有用」な検査であり、陽性=血栓確定ではありません。
そのため、まず行うのが…
■ Wells(ウェルズ)スコアとは?
検査を行う前に、血栓の“事前確率”を評価する臨床予測ルールです。
(NEJM 2003)
以下の項目を点数化します。
✔ それぞれ1点
-
がん治療中
-
最近3日以上寝込んだ
-
最近大きな手術
-
脚全体が腫れている
-
片脚が反対より3cm以上太い
-
押すと強く痛む場所がある
-
むくみが強い
-
以前に血栓になったことがある
-
表面の血管が目立つ
✔ −2点
-
他の病気の可能性が高いと医師が判断
■ 判定
-
2点以上 → 血栓の可能性が高い
-
1点以下 → 可能性が低い
■ その後の診療の流れ
● 可能性が低い場合
→ Dダイマー測定
→ 50歳以上では「年齢 × 0.01 μg/mL(FEU換算)」を目安に判断
→ 基準未満なら血栓はほぼ否定可能
(JAMA 2014)
● 可能性が高い場合
→ Dダイマーを待たずに超音波検査へ
■ 肺塞栓症(PE)を疑う症状
-
急な息切れ
-
胸痛
-
動悸
-
酸素濃度低下
これらがあれば、速やかに高次医療機関へ紹介します。

突然の胸の痛みと息苦しさ(肺塞栓症などが疑われる症状)を訴えるいののさん。
■ 低用量ピルを服用中の方へ
ピルは避妊や月経管理に有効ですが、
血栓リスクはわずかに上昇します(BMJ 2013)。
若年でもゼロではありません。
違和感レベルでもご相談ください。
■ こんな方は要注意
-
長時間移動(飛行機・新幹線)
-
手術後
-
妊娠・産後
-
がん治療中
-
脱水
-
ピル内服中
■ まとめ
血栓は怖い病気ですが、
✔ まずWellsスコアで事前確率評価
✔ 年齢調整Dダイマーの活用
✔ 必要な場合のみ超音波検査
適切な評価により、安全に診断・除外が可能です。
福本医院では、
国際標準に基づいた診療を行っています。
■ よくある質問(FAQ)
Q1. 片脚が少しむくむだけでも受診すべき?
片脚のみの腫れや痛みを伴う場合は、一度ご相談ください。
Q2. Dダイマーが高い=血栓ですか?
いいえ。炎症や加齢でも上昇します。超音波などで確認します。
Q3. ピルを飲んでいると必ず血栓になりますか?
必ずではありません。リスクは上がりますが、絶対ではありません。
Q4. エコノミークラス症候群は若い人でもなりますか?
長時間の不動や脱水があれば、若年でも起こる可能性があります。
Q5. 血栓は予防できますか?
長時間座りっぱなしを避け、水分摂取と適度な運動が有効です。
■ 参考文献
1. 深部静脈血栓症および肺塞栓症の包括的レビュー
-
論文タイトル: Deep vein thrombosis and pulmonary embolism
-
著者: Di Nisio M, et al.
-
掲載誌: The Lancet (2016年)
-
概要: 世界のトップ医学誌『The Lancet』に掲載された、深部静脈血栓症と肺塞栓症(総称してVTE)に関する包括的なレビューです。病態生理、診断アルゴリズム(D-dimer検査や超音波・CTの活用)、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を用いた最新の治療戦略まで、臨床における事実に基づく標準的な知見をまとめています。
2. 深部静脈血栓症および肺塞栓症に関する基礎的レビュー
-
論文タイトル: Pulmonary embolism and deep vein thrombosis
-
著者: Goldhaber SZ, et al.
-
掲載誌: The Lancet (2012年)
-
概要: 同じく『The Lancet』によるレビューです。VTEの危険因子として「旅行・不動状態」「ホルモン療法(ピルなど)」がどのように血液の凝固異常や血管内皮障害を引き起こすかというメカニズム(Virchowの三徴)について、詳細かつ検証可能なデータを基に解説しています。
3. 低用量ピル(経口避妊薬)と血栓症リスクのシステマティック・レビュー
-
論文タイトル: Different combined oral contraceptives and the risk of venous thrombosis: systematic review and network meta-analysis
-
著者: Stegeman BH, et al.
-
掲載誌: The BMJ (2013年)
-
概要: 著名な医学誌『The BMJ』に掲載されたシステマティック・レビューおよびネットワーク・メタ解析です。世代の異なる低用量ピル(プロゲストーゲンの種類やエストロゲンの含有量)と静脈血栓症リスクの関連性を、多数の観察研究のデータから比較・検証しています。ピル内服による相対的なリスク上昇の事実と、絶対リスク(実際の発生率)の低さについて客観的な指標を提供しています。
-
DOI: 10.1136/bmj.f5298
4. エコノミークラス症候群(旅行と血栓症)に関するシステマティック・レビュー
-
論文タイトル: Air travel and venous thromboembolism: a systematic review
-
著者: Philbrick JT, et al.
-
掲載誌: Journal of General Internal Medicine (2007年)
-
概要: いわゆる「エコノミークラス症候群」について、長時間の航空旅行とVTE発症の関連を調査したシステマティック・レビューです。弾性ストッキングの予防効果や、フライト時間が6時間を超える場合のリスク増加などについて、実証データに基づいた具体的なリスク評価と推奨事項をまとめています。
5. 血栓症の危険因子(ピル・旅行を含む)の包括的レビュー
-
論文タイトル: A Comprehensive Review of Risk Factors for Venous Thromboembolism: From Epidemiology to Pathophysiology
-
著者: Pastori D, et al.
-
掲載誌: International Journal of Molecular Sciences (2023年)
-
概要: VTEの疫学から病態生理までを網羅した近年(2023年)の包括的レビューです。「長時間のフライト(旅行)」や「経口避妊薬・ホルモン補充療法」といった個別の後天的なリスク因子が、いかにして血栓形成のトリガーとなるかについて最新の科学的知見を整理しています。
-
DOI: 10.3390/ijms24043169






















