「高血圧の基準が130/80に下がった」は誤りです|健診の判定値・診断基準・治療目標のちがい

■ この記事のポイント
- 2025年のガイドライン改訂で「高血圧の基準が130/80mmHgに下がった」という説明が広まりましたが、これは誤りです
- 高血圧と診断する基準は、診察室血圧140/90mmHg以上・家庭血圧135/85mmHg以上で、前の版から変わっていません
- 変わったのは、治療を始めたあとに目指す「目標値」のほうです
- ただし130〜139/80〜89mmHgは「高値血圧」で、正常ではありません。生活を見直す段階です
- 健診の結果票の判定区分は、ガイドラインの区分ともまた別のもので、切れ目が一致していません

この記事は2026年8月時点の情報です。日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(2025年8月29日発行)に基づいています。
「高血圧の基準が130/80mmHgに下がった」という説明は誤りです
2025年8月に日本高血圧学会の『高血圧管理・治療ガイドライン2025』が発刊されて以降、「高血圧の基準が130/80mmHgに引き下げられた」「130を超えたら高血圧と診断される」といった説明を見かけるようになりました。
これは誤りです。
日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の表5-6「異なる測定法における高血圧基準」では、高血圧と診断する基準は次のとおりとされています。前の版(2019年)から変わっていません。
| 測定方法 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
|---|---|---|---|
| 診察室血圧 | 140mmHg以上 | かつ/または | 90mmHg以上 |
| 家庭血圧 | 135mmHg以上 | かつ/または | 85mmHg以上 |
では130/80mmHgとは何かというと、治療を始めたあとに目指す目標値です。診断の線引きと、治療で目指す値は、別のものです。
ただし、ここで安心しないでください。130〜139/80〜89mmHgは「高値血圧」という区分で、高血圧ではありませんが、正常でもありません。この範囲でも血管への負担はすでに始まっており、生活を見直す対象になります。「140/90未満だから何もしなくてよい」ということではありません。
まず見ていただきたいのは、結果票に書かれた実際の数値です。診察室で測った値が140/90mmHg以上(ご家庭で測った値なら135/85mmHg以上)かどうか。ここが最初の分かれ目になります。
なお、米国の2017年ACC/AHAガイドラインは高血圧の定義そのものを130/80mmHg以上に引き下げていますが、これは米国の基準です。日本の基準とは異なります。世界のガイドラインの違いについては高血圧はどこまで下げるべき?で詳しく解説しています。
ご自身の数値がどこに当たるか判断がつかない場合は、結果票をお持ちのうえでご相談ください。
高血圧と診断する基準は、診察室140/90mmHg以上・家庭135/85mmHg以上です
もう少し細かく見ると、血圧は次のように区分されています(同ガイドライン 表5-5「成人における血圧値の分類」)。
| 分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 |
|---|---|---|
| 正常血圧 | 120未満 かつ 80未満 | 115未満 かつ 75未満 |
| 正常高値血圧 | 120〜129 かつ 80未満 | 115〜124 かつ 75未満 |
| 高値血圧 | 130〜139 かつ/または 80〜89 | 125〜134 かつ/または 75〜84 |
| I度高血圧 | 140〜159 かつ/または 90〜99 | 135〜144 かつ/または 85〜89 |
| II度高血圧 | 160〜179 かつ/または 100〜109 | 145〜159 かつ/または 90〜99 |
| III度高血圧 | 180以上 かつ/または 110以上 | 160以上 かつ/または 100以上 |
出典:日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会 編『高血圧管理・治療ガイドライン2025』表5-5「成人における血圧値の分類」。単位はmmHg。「かつ」は収縮期・拡張期の両方が当てはまる場合、「かつ/または」はどちらか一方でも当てはまればその分類になる、という意味です。原典の表記をそのまま用いています。なお、この記事では収縮期だけが高い「(孤立性)収縮期高血圧」の行を省いています。
収縮期130〜139mmHg、または拡張期80〜89mmHg(あるいはその両方)は「高値血圧」という区分で、高血圧ではありません。ただし「問題がない」という意味でもなく、生活を見直す段階に来ているという位置づけです。
家庭血圧のほうが重要です
診察室での血圧は、緊張などで一時的に高くなることがあります。日常の状態をより正確に反映するのは家庭血圧です。同ガイドラインでも、家庭血圧のほうが将来の病気の予測に優れていることが、複数の国内研究から報告されています。
測り方は、朝(起床後1時間以内、排尿後、朝食と服薬の前)と、晩(就寝前)の1日2回(2つの機会)。いずれも椅子に座って1〜2分ほど落ち着いてから測ります。1つの機会につき2度測って、その平均をとるのが原則です。
すでにお薬を飲んでいる方へ。測った数値を見て、ご自身の判断でお薬を中止したり、量を増やしたり減らしたりすることは避けてください。ガイドラインにも、家庭血圧の測定にあたっての注意として明記されています。記録は主治医にお見せいただくのがいちばん役に立ちます。
なお、腕時計型などのカフを使わない血圧計については、同ガイドラインは現時点では診断や治療の目的での使用を推奨していません。
測り方や数値の読み方で迷われたら、記録をお持ちください。一緒に確認します。
130/80mmHgは「治療を始めたあとに目指す値」です
『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の表6-3「降圧目標」では、目指す値が次のように示されています。
- 診察室血圧 130/80mmHg未満
- 家庭血圧 125/75mmHg未満
これは、高血圧と診断されて治療を始めた方が目指す値です。健診でこの数値を超えていたからといって、すぐに薬が必要という意味ではありません。まだ治療を始めていない方が、自己流でこの値まで下げようとするものでもありません。
2025年の改訂で変わったのは、この目標値のほうです。前の版では、75歳以上の方や脳血管障害・慢性腎臓病のある方などについて140/90mmHg未満という別の目標が設けられていましたが、今回はこの区別がなくなり、原則として年齢や持病によらず同じ目標に統一されました。
「高血圧の基準が130/80mmHgに下がった」という説明は、この目標値の変更を、診断基準の変更と取り違えたものだと考えられます。
一方で、下げすぎにも注意が必要です
同ガイドラインは、収縮期血圧を120mmHg未満まで下げる場合には、過度の降圧による有害事象に注意するよう述べています。降圧の過程では、立ちくらみやめまい、倦怠感といった症状、起立性低血圧、腎機能への影響、電解質の異常などに注意が必要です。
75歳以上の方の目標について
75歳以上の方については、通院やご自身の身のまわりのことがどこまでできるかという生活の状態に応じて、目標を個別に調整することが示されています。年齢だけで一律に緩めるのではなく、まず標準の目標を目指したうえで、状態に応じて調整するという考え方です。
この記事では、その調整後の具体的な数値をあえて書いていません。体力、持病、ふらつきの有無、服用しているお薬、生活の状況によって、安全な目標が一人ひとり大きく異なるためです。一律の数値をお示しすると、「この数字を超えているから薬を増やそう」「下回ったから減らそう」という自己調整につながり、かえって危険になります。
ご高齢のご家族の血圧が気になる方は、数値だけを調べるのではなく、主治医に「この方の目標はいくつですか」と直接お尋ねください。これがいちばん確実で安全な方法です。
なぜ「基準が下がった」という誤解が広まったのでしょうか
降圧目標が130/80mmHg未満に統一されたこと自体は事実です。この目標値の変更だけが強調されて伝わり、「診断基準」との区別が抜け落ちたことが、誤解の広まった経緯だと考えられます。
日本高血圧学会も、2024年5月24日に「特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を」という文書を公表し、この誤解に注意を促しています。同学会はそのなかで、健診で血圧が高かった場合の対応を次のように整理しています。
- 収縮期160mmHg以上または拡張期100mmHg以上(II度以上)… すぐに医療機関を受診する
- 収縮期140〜159mmHgまたは拡張期90〜99mmHg(I度高血圧)… 生活習慣を改善し、改善しなければ受診する
ただし、I度高血圧であっても、脳心血管病、心房細動、慢性腎臓病、糖尿病、危険因子の集積がある場合は、至急かかりつけの医療機関を受診すべきであるとされています。
ご自身がどれに当たるか判断がつかない場合は、結果票をお持ちのうえでご相談ください。
健診の結果票の区分は、ガイドラインの区分とも別のものです
ここも混同されやすいところです。血圧の数値をめぐっては、性格の異なる3つのものさしが同時に使われています。
1つめは、健診の結果票の判定区分です。日本人間ドック・予防医療学会の「判定区分(2026年4月1日改定)」では、血圧(2回測定:平均値)は次のように分けられています。
| 判定 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 |
|---|---|---|
| A(異常なし) | 129以下 | 84以下 |
| B(軽度異常) | 130〜139 | 85〜89 |
| C(要再検査・生活改善) | 140〜159 | 90〜99 |
| D(要精密検査・治療) | 160以上 | 100以上 |
2つめは、高血圧の診断基準(診察室140/90mmHg以上)。3つめは、治療で目指す目標値(130/80mmHg未満)です。
注意していただきたいのは、この3つは切れ目が一致していないということです。
ずれが生じるのは、下の血圧(拡張期)の80〜84mmHgの帯です。上の血圧(収縮期)の区切りは、健診の判定区分もガイドラインも130mmHgで一致しています。しかし下の血圧は、健診の判定区分が85mmHg、ガイドラインが80mmHgで分かれます。
たとえば血圧が125/82mmHgだった場合。上も下も健診の判定区分では「A(異常なし)」の範囲に入りますが、ガイドラインの分類では下の血圧が82mmHgであるため「高値血圧」にあたります。
結果票の判定は、健診機関によって区分の呼び方や区切りが異なることもあります。「異常なし」と書かれていても、下の血圧が80mmHgを超えている場合は、生活を見直す段階に来ていると考えていただくのが安全です。
結果票の判定区分そのものの読み方は、健康診断の受け方と結果票の見方で解説しています。
判定と数値が食い違って見えるときこそ、一度ご相談ください。
受診できるかどうかは、意志の強さだけの問題ではありません
高血圧は自覚症状がほとんどないまま血管に負担をかけ続けます。健診で指摘された時点で体調に変化がないのは、むしろ当然のことです。だからこそ、後回しにされやすい病気です。
このことに関連する研究があります。沖縄県の中小規模事業所を対象とした琉球大学の研究では、健診で新たに高血圧が見つかった方2,906人(1,366事業所、前年に高血圧の既往がなく降圧薬も服用していない方)を追跡し、職場に健康管理の担当者がいるかどうかと、健診後1か月以内の受診率との関連が報告されています。
1か月以内に受診した方は、担当者がいない事業所で2.00%、いる事業所で2.97%でした。全体では統計学的に有意な差とはいえませんでした(調整オッズ比1.74、95%信頼区間0.94〜3.22)。一方、収縮期150mmHg以上または拡張期95mmHg以上と血圧がより高かった層では、担当者がいない事業所で2.29%、いる事業所で4.97%と差がみられました(調整オッズ比3.05、95%信頼区間1.12〜8.29)。
ひとつの観察研究であり、これだけで因果を結論づけることはできません。それでも示唆されるのは、受診できるかどうかは本人の意志の強さだけで決まるのではなく、背中を押してくれる仕組みがあるかどうかにも左右されるということです。また、いずれの数値も受診率そのものは数%にとどまっており、健診で高血圧を指摘された方の多くが、その後受診していないという現状も示しています。
職場にそうした担当者がいない方も多いと思います。この記事が、その役割を果たせればと考えています。健診で血圧を指摘されたなら、今が動くタイミングです。朝と晩の家庭血圧を1週間ほど記録して、結果票と一緒にお持ちください。それだけで、診療の精度は大きく上がります。
受診の目安
症状がなくても相談したい場合
- 健診で140/90mmHg以上を指摘された
- ご家庭で測る血圧が135/85mmHg以上の状態が続いている
- 健診で「高値血圧」「要注意」などと指摘され、判断がつかない
- いびきや日中の強い眠気があり、血圧も高い
症状がある場合
- 強い頭痛、めまい、動悸などをともなう血圧の上昇がある
- 薬を飲んでいるのに血圧が下がりにくい
- 血圧計が不整脈などの警告表示を出す
受診の前に、朝と晩の家庭血圧を数日から1週間ほど記録し、結果票と一緒にお持ちいただくと、診断の助けになります。
よくある質問
Q. 血圧が125/82mmHgでした。健診は「異常なし」でしたが、大丈夫ですか?
A. 健診の判定区分では「異常なし」に入りますが、ガイドラインの分類では「高値血圧」にあたります。下の血圧の区切りが、健診では85mmHg、ガイドラインでは80mmHgと異なるためです。高血圧ではありませんが、正常でもなく、生活を見直す段階です。まずはご家庭で1週間ほど測ってみてください。平均が135/85mmHg以上になるようであれば高血圧にあたりますので、受診をおすすめします。それ未満であっても、ご家庭で測った血圧が125/75mmHg以上であれば、ガイドラインの分類では「高値血圧」にあたります(表5-5)。減塩や運動を始める時期です。判断に迷われたら、記録をお持ちのうえご相談ください。
Q. 目標が130/80mmHg未満なら、私もそこまで下げないといけませんか?
A. 130/80mmHg未満は、高血圧と診断されて治療を始めた方が目指す値です。まだ高血圧と診断されていない段階の方が、薬で無理に下げる値ではありません。また、下げすぎにも注意が必要で、収縮期120mmHg未満まで下がる場合は別の配慮が要ります。ご自身の目標は主治医とご相談ください。
Q. 高齢の家族がいます。年齢が高ければ目標は緩くてよいのでは?
A. 2025年の改訂では、年齢による別目標は設けられなくなりました。ただし75歳以上の方については、通院や身のまわりのことがどこまでできるかという生活の状態に応じて、目標を個別に調整することが示されています。適切な目標は体力・持病・生活状況によって一人ひとり異なるため、この記事では具体的な数値を挙げていません。主治医に「この方の目標はいくつですか」と直接お尋ねいただくのが確実です。
まとめ
- 「高血圧の基準が130/80mmHgに下がった」という説明は誤りです
- 日本の診断基準は診察室140/90mmHg以上・家庭135/85mmHg以上で、変わっていません
- 130/80mmHg未満は、治療を始めたあとに目指す目標値です
- ただし130〜139/80〜89mmHgの「高値血圧」も正常ではなく、生活を見直す段階です
- 健診の判定区分、診断基準、治療目標は、それぞれ切れ目が異なります
健康診断で血圧を指摘された方、ご自身の数値の意味が分かりにくい方は、結果票とご家庭の血圧の記録をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。
参考文献
1. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)
ガイドライン名 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)
編集 日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会
発行 特定非営利活動法人日本高血圧学会、2025年8月29日(制作・発売:ライフサイエンス出版)
リンク https://www.jpnsh.jp/guideline.html
解説 本記事の血圧分類(表5-5)、異なる測定法における高血圧基準(表5-6)、降圧目標(表6-3)、高齢者のカテゴリー分類(表10-4)の出典です。
2. JSH2025 英語版全文
論文名 The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)
著者 Ohya Y, et al.
掲載誌 Hypertension Research. 2026;49(1):9-235.
DOI 10.1038/s41440-025-02462-y
リンク https://www.nature.com/articles/s41440-025-02462-y
解説 上記ガイドラインの英語版全文で、無料で全文を読むことができます。表・図の番号は書籍版と共通です。
3. 特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を
発行 日本高血圧学会、2024年5月24日
リンク https://jpnsh.jp/data/202405-level.pdf
解説 受診勧奨判定値が変更されていないことについての学会の公式見解です。II度以上とI度高血圧で対応が異なることが示されています。
4. 判定区分(2026年4月1日改定)
発行 日本人間ドック・予防医療学会
掲載ページ 検査表の見方
リンク https://www.ningen-dock.jp/ningendock/wp-content/uploads/2026/02/2026hanteikijun.pdf
解説 本記事の健診結果票の判定区分(A〜D)の出典です。同学会の判定区分にはこのほかE(治療中)があります。
5. 職場の健康管理担当者と、高血圧を指摘されたあとの受診
論文名 Healthcare administrators and hypertension at small-to-medium worksites in Okinawa, Japan
著者 Kudaka S, Sakima A, Nakamura K.
掲載誌 Hypertension Research. 2025;48(1):168-179.(オンライン公開 2024年11月8日)
DOI 10.1038/s41440-024-01979-y
リンク https://www.nature.com/articles/s41440-024-01979-y
解説 健診で新たに高血圧が見つかった方の、1か月以内の受診率と、職場の健康管理担当者の有無との関連を報告した観察研究です。



















