🧠 現代人は「脳」を酷使しすぎている

スマートフォン、SNS、メール、ニュース、動画配信。

私たちは1日中「判断」「選択」「抑制」を繰り返しています。

この状態が長期化すると起こるのが 脳疲労(mental fatigue) です。

脳疲労は気分の問題ではありません。

前頭前野を中心とした神経回路の機能変化が背景にあることが示されています【1】。

パソコンデスクに座り、スマートフォンを見ながら大あくびをしている福本医院公式キャラクター「いののさん」のイラスト。

パソコンの前でスマホを見ながら、すっかり眠そうにあくびをするいののさん。

 

🧪 脳疲労は「神経の代謝変化」

2022年の Current Biology の研究では、

長時間の認知作業後に 外側前頭前野にグルタミン酸が蓄積する ことが報告されました【2】。

これは、

  • 意思決定能力の低下

  • 衝動的判断の増加

  • 集中力低下

と関連していました。

つまり、脳疲労は「気合いの問題」ではなく、

神経代謝レベルでの変化です。

 

🌀 なぜ自律神経が乱れるのか?

前頭前野は自律神経系と密接に連携しています。

Thayerらの神経内臓統合理論では、

前頭前野の機能低下は心拍変動(HRV)の低下や交感神経優位状態を引き起こすと説明されています【3】。

その結果、

  • 動悸

  • めまい

  • 胃腸不調

  • 息苦しさ

といった「自律神経失調症様症状」が出現します。

 

🌙 睡眠障害との関係

慢性的な脳の過活動は、

睡眠に必要な神経回復プロセスを妨げます。

Krauseらの総説では、

睡眠不足が前頭前野機能を低下させ、情動制御と意思決定能力を悪化させることが示されています【4】。

つまり、

脳疲労 → 睡眠の質低下 → さらに前頭前野機能低下

という悪循環が起こります。

ベッドで眠りが浅く、少し顔をしかめて眠る福本医院公式キャラクター「いののさん」のイラスト。枕元のテーブルには光るスマートフォンが置かれている。

枕元にスマホを置いたまま、眠りが浅い、いののさん。

 

⚠ 放置するとどうなる?

慢性的なストレス状態は

「アロスタティック負荷」と呼ばれ、脳と身体に蓄積的ダメージを与えます【5】。

その結果、

  • 慢性不眠

  • 不安障害

  • うつ病

  • 慢性疲労症候群様状態

へと進展する可能性があります。

 

🛠 脳疲労への対策

① 情報ダイエット

  • 通知を制限する

  • マルチタスクを避ける

  • SNS時間を可視化する

 

② 睡眠を最優先にする

  • 就寝90分前のデジタル遮断

  • 起床後の光曝露

  • 就寝時間の固定

 

③ 自律神経リセット

  • 4秒吸って6秒吐く呼吸法

  • 週150分の有酸素運動

  • 軽いストレッチ

 

④ 医療的介入

症状が強い場合は、

  • 不眠症治療(CBT-I含む)

  • 必要に応じた薬物療法

  • 自律神経評価(HRVなど)

  • 血液検査での除外診断

が重要です。

福本医院の診察室で、看護師のいのかさんがいののさんに「デジタルデトックスしましょ」とアドバイスをしているイラスト。

福本医院の看護師・いのかさんから、スマホやパソコンでお疲れ気味のいののさんへ「デジタルデトックス」のご提案です。

 

🏥 まとめ

脳疲労は「甘え」ではありません。

  • 神経回路の機能変化【1】

  • 神経代謝の変化【2】

  • 自律神経制御の乱れ【3】

  • 睡眠機能低下【4】

  • 慢性ストレス負荷【5】

といった、科学的に説明可能な現象です。

「なんとなくしんどい」が続く場合は、

早めのご相談をおすすめします。

 

📚 参考文献

1. 神経回路の機能変化

  • 論文タイトル: Chronic Stress Weakens Connectivity in the Prefrontal Cortex: Architectural and Molecular Changes

  • 著者: Datta D, Arnsten AFT.

  • ジャーナル名: Chronic Stress (Thousand Oaks)

  • 発行年: 2021年

  • DOI: 10.1177/24705470211029254

  • リンク: PMC8408896

  • 内容: 慢性ストレスが前頭前野の神経回路の接続性をいかに弱め、構造的・分子的な変化を引き起こすかを論じたレビューです。

2. 神経代謝の変化

  • 論文タイトル: Interactions between sleep, stress, and metabolism: From physiological to pathological conditions

  • 著者: Hirotsu C, Tufik S, Andersen ML.

  • ジャーナル名: Sleep Science

  • 発行年: 2015年

  • DOI: 10.1016/j.slsci.2015.09.002

  • リンク: PMC4688585

  • 内容: ストレスによるHPA軸の活性化が、睡眠とエネルギー代謝(メタボリズム)にどのような相互作用と悪影響をもたらすかを包括的にまとめています。

3. 自律神経制御の乱れ

  • 論文タイトル: Stress, the Autonomic Nervous System, and the Immune-kynurenine Pathway in the Etiology of Depression

  • 著者: Won E, Kim YK.

  • ジャーナル名: Current Neuropharmacology

  • 発行年: 2016年

  • DOI: 10.2174/1570159×14666151208113006

  • リンク: PMC5050399

  • 内容: ストレスが自律神経系(交感神経・副交感神経のバランス)を崩し、それが免疫系を介してどのようにうつ病の病態を形成するかを解説しています。

4. 睡眠機能低下

  • 論文タイトル: The impact of stress on sleep: Pathogenic sleep reactivity as a vulnerability to insomnia and circadian disorders

  • 著者: Kalmbach DA, Anderson JR, Drake CL.

  • ジャーナル名: Journal of Sleep Research

  • 発行年: 2018年

  • DOI: 10.1111/jsr.12710

  • リンク: PMC7045300

  • 内容: ストレスに対する睡眠機能の脆弱性(睡眠反応性)が、いかにして慢性不眠や自律神経の乱れを引き起こすかというメカニズムを論じています。

5. 慢性ストレス負荷

  • 論文タイトル: Neurobiological and Systemic Effects of Chronic Stress

  • 著者: McEwen BS. (※ストレス研究の世界的権威であるブルース・マキューエン博士による総括的レビューです)

  • ジャーナル名: Chronic Stress (Thousand Oaks)

  • 発行年: 2017年

  • DOI: 10.1177/2470547017692328

  • リンク: PMC5573220

  • 内容: 慢性ストレスが脳の構造や全身の生理機能(神経内分泌、自律神経、免疫、代謝)に及ぼす影響(アロスタティック負荷)を総合的に解説しています。