この記事について

本記事は、当院がダイエット診療を行ううえでの理論的根拠を示すものです。数式を用いて体重の決まり方を導くため、やや専門的な内容になっています。

具体的な減量の方法をお探しの方は、続編の「ダイエット方法 ―『ダイエット論』に基づいた具体的な進め方」を直接ご覧ください。
ダイエット全般の概要は「医学的ダイエットの基本|体重は生活習慣で決まる―継続できる減量法とGLP-1治療―」にまとめています。

「食事制限を続けているのに、途中から体重が減らなくなった」
「ダイエットをやめたら、あっという間に元通りになった」

診療の場で、非常に多くの方から伺うお話です。そして多くの場合、それは意志が弱いからでも、体質のせいでもありません。体重というものが、そもそもそういう性質を持っているからです。

本記事では、体重が何によって決まるのかを、数式によって導きます。用いるのは四則演算のみです。結論から先に示します。

体重=(摂取カロリー-活動で消費したカロリー)÷基礎代謝基準値

分子は生活習慣で決まり、分母は年齢と性別で決まる定数です。すなわち——

体重は、生活習慣と年齢と性別で決まります。

言い換えれば、体重が100kgの方は「100kgを維持する生活習慣」で過ごしておられる、ということです。生活習慣が変われば体重も変わり、生活習慣が元に戻れば体重も元に戻ります。

この一文が、当院のダイエット診療のすべての出発点です。以下、なぜこの式が導かれるのかを、順に示します。

目次

1. 出発点となる三つの式
2. 三つの式を一本にまとめる
3. なぜ、減り方はだんだん鈍るのか
4. では、どこで止まるのか
5. 具体例:1日100kcalだけ減らすと、どうなるか
6. この式から言えること ― 停滞とリバウンド
7. よくある誤解 ― 基礎代謝を上げれば痩せる?
8. この理論の限界
9. まとめ

 

【動画でご覧になりたい方へ】
同じ内容を動画でも公開しています。数式の部分は早送りしていただいても、結論は伝わるように構成しています。

1. 出発点となる三つの式

いずれも異論の余地のない、三つの式から始めます。

基本の三式:体重変化量=摂取カロリー-消費カロリー/消費カロリー=活動で消費したカロリー+基礎代謝量/基礎代謝量=基礎代謝基準値×体重

基礎代謝量とは

基礎代謝量とは、皮膚・脂肪・筋肉・骨といった骨格と、内臓が成長・維持されるために使われるエネルギーです。骨格や内臓が大きいほど、基礎代謝量は多くなります。

植物で考えると理解しやすくなります。植物は葉、枝、幹、根、花や実を成長・維持するためにエネルギーを使いますが、自ら動きません。つまり植物の「活動で消費したカロリー」はゼロであり、消費カロリーはすべて基礎代謝量ということになります。人間の基礎代謝量も、これと同様に「身体を成長・維持するために必要なエネルギー」です。

基礎代謝基準値とは

基礎代謝基準値とは、体重1kgあたり1日に必要な基礎代謝量(kcal/kg体重/日)です。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に、年齢と性別ごとの数値が示されています(2025年版では「基礎代謝量基準値」と表記されます)。

基礎代謝量基準値(kcal/kg体重/日)
年齢 男性 女性
18〜29歳 23.7 22.1
30〜49歳 22.5 21.9
50〜64歳 21.8 20.7
65〜74歳 21.6 20.7
75歳以上 21.5 20.7

 

ここで決定的に重要なのは、これが年齢と性別だけで決まる定数であるという点です。ご本人の努力によって変えられる数字ではありません。

そして、年齢とともに下がっていくことにもご注目ください。この事実は、後ほど効いてきます。

以降、この基礎代謝基準値を K と表記します。

2. 三つの式を一本にまとめる

②と③を①に代入します。

体重変化量=摂取カロリー-活動で消費したカロリー-K×体重

ここで注意すべき点が一つあります。左辺の単位は「kg」、右辺の単位は「kcal」であり、このままでは等式として成立しません。体脂肪1g=7kcal、すなわち1kg=7,000kcalという換算を挟む必要があります。

1日あたりで書き直すと、こうなります。

1日の体重変化量=(摂取カロリー-活動で消費したカロリー-K×体重)÷7,000

これが本記事の中心となる式です。ここから二つの結論が導かれます。

3. なぜ、減り方はだんだん鈍るのか

新しい生活習慣を始めた方を考えます。摂取カロリーと活動で消費したカロリーは、新しい習慣のもとで一定であるとします。

1ヶ月目:70kg → 66kg(4kg減)

30日間の合計で式を立てます。基礎代謝量は、その期間の平均体重で計算します。

A式:7,000×(-4)=30日間の摂取カロリー-30日間の活動で消費したカロリー-K×68×30

2ヶ月目:66kg から ΔW kg 減ったとする

同じ生活習慣を続けます。

B式:7,000×(-ΔW)=30日間の摂取カロリー-30日間の活動で消費したカロリー-K×{66+(66-ΔW)}÷2×30

A式 - B式

生活習慣を変えていないため、摂取カロリーと活動で消費したカロリーの項は打ち消し合います。残るのは基礎代謝の項のみです。

A式からB式を引いた展開:ΔW(7,000+15K)=28,000-60K

したがって、

ΔW=(28,000-60K)÷(7,000+15K)

ここで、4 という数字を同じ分母で書き直します。

4=(28,000+60K)÷(7,000+15K)

両者を比較すると、分子が 120K だけ異なります。すなわち、

ΔW=4-120K÷(7,000+15K) よって ΔW<4kg

1ヶ月目に4kg減った生活習慣をそのまま続けても、2ヶ月目に減る量は必ず4kgを下回ります。これが数式から導かれる答えです。

理由は明快です。体重が減った分だけ、基礎代謝量(= K × 体重)も減少します。同じ食事量・同じ運動量であっても、消費カロリーが目減りするため、エネルギー収支の赤字幅が縮んでいくのです。

3ヶ月目、4ヶ月目…

まったく同じ計算を繰り返せば、次が成り立ちます。

4>ΔW2>ΔW3>ΔW4>…>ΔWn>0(減少量はゼロに収束する)減少量は毎月小さくなり続け、しかし決して負にはなりません。つまりΔW はゼロに収束します。体重は減り続けるのではなく、ある一点で止まるのです。

4. では、どこで止まるのか

中心の式に戻り、体重が減らなくなった状態を代入します。

体重変化量=0 を代入すると、0=摂取カロリー-活動で消費したカロリー-K×体重

これを体重について解けば、冒頭に示した結論が得られます。

体重=(摂取カロリー-活動で消費したカロリー)÷基礎代謝基準値K

注目すべきは、7,000 という換算係数が消えていることです。この係数は「どれくらいの速さで収束するか」を決めるだけで、「どこに収束するか」には一切影響しません。

分子は摂取カロリーと活動量、すなわち生活習慣。分母は年齢と性別で決まる定数。以上により、体重が生活習慣と年齢と性別で決まることが示されました。

【補足】収束の速さ ― 年単位です
上記の関係を微分方程式として解くと、体重は目標値へ指数関数的に近づくことが分かります。その時定数はおよそ 7,000 ÷(K × 身体活動レベル) 日です。30〜49歳男性・身体活動レベル「ふつう」(1.75)で計算すると、およそ180日となります。つまり、新しい生活習慣の効果が出きるまでには1年以上を要します。「3ヶ月で止まった」のは失敗ではなく、まだ途中だということでもあります。

5. 具体例:1日100kcalだけ減らすと、どうなるか

夕食のご飯を半分にする。おおよそ1日100kcalの節約です。これを続けると、どうなるでしょうか。

素朴な予測

100 kcal × 365日 = 36,500 kcal。体脂肪1g=7kcalですから、7,000で割ると1年で5.21kg減るはずです。

実際

そうはなりません。体重が減るにつれて基礎代謝量も減り、収束していくからです。結論の式より、収束先の体重の変化は次のように求まります。

体重の減少幅=100kcal÷基礎代謝基準値K

30〜49歳男性(参照体重70.0kg、K=22.5、身体活動レベル1.75)で実際に計算すると、こうなります。

1日100kcal減らし続けたときの体重の推移。素朴な予測では毎年5.2kg減り続けるが、実際は約2.5kg減ったところで収束する

点線=素朴な予測(直線的に減り続ける)/実線=実際(収束する)

体重は約2.5kg減ったところで頭打ちになります。1年後の時点でおよそ −2.2kg。その後どれだけ続けても、−2.5kg より先には進みません。

この結論は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」が示す図とも一致します。1日100kcalの食事制限を続けた場合、体重は2kg程度減ったところで頭打ちになる——これは、上記の数式から必然的に導かれる帰結です。

【補足】なぜ「100 ÷ K」より小さいのか
厳密には、活動で消費するカロリーも体重に比例します(重い身体を運ぶほうがエネルギーを要するため)。この分を織り込むと、実効的な分母は「K × 身体活動レベル」となり、収束幅はさらに小さくなります。上のグラフはこれを反映した計算です。

1日100kcal減らすことで得られるのは「1年で5kg」ではなく、「2.5kg痩せた身体で、その後ずっと過ごす」ということです。これは効果がないという意味ではありません。新しい体重が、新しい生活習慣によって定義されたということです。

6. この式から言えること ― 停滞とリバウンド

なぜ痩せないのか

体重が減らないということは、現在の生活習慣が、その体重に見合っているということです。つまり改善が不十分——今なお食べ過ぎか、運動不足か、その両方である、ということになります。厳しい言い方ですが、式はそう述べています。

ただし、減り方が鈍ること自体は正常です。停滞は失敗ではありません。その生活習慣で決まる体重に近づいた、というだけのことです。さらに減らしたいのであれば、生活習慣をもう一段変える必要があります。

リバウンドとは何か

「生活習慣が体重を決める」ということは、そのまま裏返せば

「元の生活習慣に戻れば、体重も元に戻る」

ということです。これがリバウンドの正体です。意志の問題でも、体質の問題でも、代謝が壊れたのでもありません。式が元に戻っただけです。

目標体重に到達したところでダイエットだけをやめる、というのは「元の生活習慣に戻る」ことにほかなりません。したがって、必ず元の体重に戻ります。

ダイエット方法・ダイエット薬の位置づけ

世の中には有効なダイエット方法もダイエット薬もあります。本理論の枠組みでは、それらを始めることは「新しい生活習慣を一つ取り入れる」ことに相当します。

したがって、リバウンドを避ける道は二つしかありません。

  1. その方法・治療を継続する
  2. 目標体重を維持できる新しい生活習慣が身についてから、終了する

70kgから50kgへの減量を望まれる方であれば、「−20kgを達成できる方法」を導入しながら、並行して生活習慣を改善し、50kgを維持できる生活習慣が定着した時点で終了する。これが唯一の道筋ということになります。

ダイエット治療は目的ではなく、生活習慣が変わるまでの助走である——当院がこの立場を取る理由が、ここにあります。

歳を取ると、同じ生活では太る

先ほどの表のとおり、基礎代謝基準値 K は年齢とともに低下します。結論の式において分母が小さくなるということは、同じ分子(同じ生活習慣)であれば、収束する体重は大きくなることを意味します。

「昔と同じように食べているのに太った」のではありません。「昔と同じように食べているから太った」のです。

7. よくある誤解 ― 基礎代謝を上げれば痩せる?

三つ目の式を、もう一度ご覧ください。

基礎代謝量=基礎代謝基準値K×現在の体重

K は年齢と性別で決まる定数です。したがって、基礎代謝量を上げるには、体重を増やすほかありません。そして当然ながら、ダイエットによって体重が減れば、基礎代謝量は減ります

「基礎代謝を上げて痩せる」という発想は、この式の上では成立しません。

それでも筋肉が重要である理由

では筋力トレーニングは無意味かというと、まったく逆です。体積で考えてください。

脂肪1gの体積1.10cm³に対し筋肉1gは0.91cm³。10kg置き換わると体積は約17.3%減少

体重は1kgも変わらないにもかかわらず、身体は目に見えて締まります。ダイエットの本当の目的は、体重計の数字ではなく、体脂肪を減らし身体の体積を減らすことです。したがって筋肉量を増やす、少なくとも維持することが決定的に重要になります。

そのためには、タンパク質を推奨量(18〜64歳で男性65g・女性50g)以上摂ることと、生活習慣のなかへの適切な運動の組み込みが必要です。

8. この理論の限界

科学的な議論である以上、適用の限界を明示しておきます。

  • 高度の肥満・やせの方には当てはまりません。基礎代謝量基準値は、標準的な体格の集団から得られた値です。
  • 基礎代謝量には個人差があります。本理論は集団の平均値を用いた近似であり、個々人の予測を保証するものではありません。
  • 甲状腺機能異常など、代謝に影響する疾患がある場合は前提が変わります。急激な体重の増減がある場合は、まず疾患の除外が必要です。
  • 体重の増減には、水分やグリコーゲンの変動が大きく寄与します。短期間の変動を、そのまま体脂肪の増減と解釈することはできません。
  • 体脂肪1g=7kcalは近似値です。脂肪組織には水分等が含まれるため、この換算を用いています。

なお、体重が収束するという性質そのものは、国際的にも確認されています。Hall らは数理モデルによって、摂取カロリーを減らしたときの体重が新しい定常状態へ向かうこと、そしてその変化の半分に到達するのに約1年、95%に達するのに約3年を要することを示しました2)。本記事の式が示す収束は、実際にはこれよりさらに緩やかである可能性があります。いずれにせよ、停滞は失敗ではありません。

これらの限界はありますが、「体重は生活習慣によって決まり、ある一点に収束する」という骨格は変わりません。分母がどのような値であれ、収束するという性質そのものは保たれるからです。

まとめ

  • 体重は生活習慣と年齢と性別で決まる
  • 同じ生活習慣を続ける限り、体重は減り続けず一点に収束する
  • 収束先は(摂取カロリー − 活動で消費したカロリー)÷ 基礎代謝基準値
  • 収束には年単位の時間を要する。停滞は失敗ではない
  • 元の生活習慣に戻れば体重も戻る。それがリバウンド
  • 基礎代謝量は上げられない。しかし筋肉量の維持が身体の体積を決める
  • 年齢とともに K は下がる。同じ生活では太る

現在の体重が望ましくないのであれば、変えるべきは体重ではなく、生活習慣です。目標体重の生活習慣で過ごす。ダイエットとは、突き詰めればそれだけのことです。

具体的にどのように生活習慣を変えていくかについては、続編のダイエット方法 ―『ダイエット論』に基づいた具体的な進め方」で詳しくご説明します。

体重の増加は、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病、さらには心不全のリスクに直結します。減量についてお困りのことがあれば、どうぞ当院にご相談ください。

この記事の監修

福本医院 院長 福本 淳
内科・循環器内科
平成9年 神戸大学医学部医学科卒
医学博士
循環器専門医(登録番号 15490)
経歴について、詳しくはこちら

 

参考文献

  1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年10月公表)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
  2. Hall KD, Sacks G, Chandramohan D, Chow CC, Wang YC, Gortmaker SL, Swinburn BA. Quantification of the effect of energy imbalance on bodyweight. Lancet. 2011;378(9793):826-837.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21872751/

※ 本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個々の診断・治療に代わるものではありません。
※ 記載の基礎代謝量基準値は、高度の肥満・やせの方には適用できません。
※ 糖尿病などで治療中の方は、食事内容の変更前に必ず主治医にご相談ください。

初出:2021年7月13日(動画公開)/全面改訂:2026年7月