この記事のポイント

  • 有酸素運動とは、酸素を使いながら長時間続けられる運動です
  • ウォーキングや自転車、水泳などが代表的です
  • 強度の目安は「会話できる」「息切れしない」レベルです
  • 心拍数では最大心拍数の60〜70%程度が目安です
  • 世界のガイドラインでは週150分以上の運動が推奨されています
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満・心不全の予防や改善に役立ちます

スポーツジムでランニングマシーンを使って早歩きをする福本医院公式キャラクターの「いのばあ」と「いのねえ」。いのばあの心拍数は105回/分、いのねえは運動時間30分を表示。二人が「日本代表勝つかしら?」「期待しましょ」と会話しながら有酸素運動を楽しんでいるイラスト。

有酸素運動は無理なく続けられる早歩きがおすすめ。いのばあといのねえがランニングマシーンで会話を楽しみながら運動している様子を描いたイラストです。

 

「健康のために運動しましょう」と言われても、

  • どんな運動をすればよいのか
  • どのくらいの強さがよいのか
  • 毎日どれくらい続ければよいのか

迷う方は少なくありません。

健康維持やダイエット、生活習慣病の改善に最もおすすめなのが有酸素運動です。

有酸素運動は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、脂肪肝(MASLD)、慢性腎臓病(CKD)、CKM症候群(心腎代謝症候群)、心不全などの予防や改善に役立つことが、多くの研究で示されています。

また、適度な有酸素運動を継続することで、動脈硬化の進行を抑え、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスク低下にもつながることが期待されています。

この記事では、有酸素運動の基本から適切な運動強度、効果的な時間の目安まで、循環器専門医の立場からわかりやすく解説します。

 

有酸素運動とは?

有酸素運動とは、酸素を利用しながらエネルギーを作り出す運動のことです。

比較的軽い負荷で長時間続けることができるのが特徴です。

代表的な有酸素運動には、

  • ウォーキング
  • 散歩
  • ジョギング
  • 自転車
  • 水泳
  • エアロビクス
  • 軽い登山

などがあります。

心臓や肺に適度な刺激を与えながら全身の筋肉を使うため、健康維持や生活習慣病予防に効果的です。

無酸素運動との違い

有酸素運動と対照的なのが無酸素運動です。

無酸素運動には、

  • 短距離走
  • 全力ダッシュ
  • 筋力トレーニング
  • 重量挙げ

などがあります。

有酸素運動は長時間続けられる運動ですが、無酸素運動は短時間で大きな力を発揮する運動です。

筋力維持や転倒予防のためには筋力トレーニングも重要ですが、生活習慣病予防や脂肪燃焼、心不全管理の基本となるのは有酸素運動です。

有酸素運動と無酸素運動の境目は?

運動生理学では、有酸素運動と無酸素運動の境目をAT(Anaerobic Threshold:嫌気性代謝閾値)と呼びます。

ATを超えると乳酸が増え始め、運動を長時間続けることが難しくなります。

アスリートでは運動負荷試験でATを測定することがありますが、一般の方が日常生活でATを意識する必要はありません。

実際には、もっと簡単な目安があります。

「会話できる強さ」が健康の秘訣

有酸素運動の強さを判断する最も簡単な方法は、「会話できるかどうか」です。

有酸素運動の目安としては、

  • 隣の人と会話できる
  • 息切れしない
  • 30分以上続けられる
  • 運動後も強い疲労感が残らない

程度の強さが適しています。

一方で、

  • 会話が難しい
  • 息が上がる
  • 数分で疲れてしまう

場合は、運動強度が高すぎる可能性があります。

心不全や生活習慣病の改善を目的とする場合は、AT(嫌気性代謝閾値)の80%以下程度の「会話できる強さ」が理想的とされています。

ゼーゼーと息が切れる運動を短時間行うよりも、会話しながら30分程度続けられる運動の方が、心臓への負担が少なく、脂肪燃焼や生活習慣病の改善にもつながります。

有酸素運動の目安となる心拍数は?

「会話できる強さ」と言われても、実際にはどのくらいの運動強度なのか気になる方もいるでしょう。

有酸素運動の目安としてよく使われるのが心拍数です。

一般的には、

最大心拍数 = 220 − 年齢

でおおよその最大心拍数を推定します。

そして有酸素運動として推奨される強度は、

最大心拍数の60〜70%程度

とされています。

例えば60歳の方の場合、

220 − 60 = 160

最大心拍数は約160回/分です。

その60〜70%は約96〜112回/分となります。

この程度の心拍数であれば、多くの場合は会話を続けながら運動することができます。

ただし、高血圧や心不全、不整脈のある方、心臓の薬を服用している方では心拍数の目安が変わることがあります。

特にビソプロロールなどのβ遮断薬を服用している方では心拍数が上がりにくいため、心拍数よりも「会話できる強さ」を優先する方が実践的です。

Apple Watchを活用すると運動強度がわかりやすい

最近はApple Watchなどのスマートウォッチを利用している方も増えています。

Apple Watchでは運動中の心拍数をリアルタイムで確認できるため、有酸素運動の強度管理に役立ちます。

例えばウォーキング中に心拍数を確認し、

  • 会話できる
  • 息切れしない
  • 心拍数が目標範囲内

であれば、適切な有酸素運動ができている可能性が高いと考えられます。

反対に、

  • 会話が難しい
  • 息が上がる
  • 心拍数が高すぎる

場合は、少しペースを落とした方がよいかもしれません。

Apple Watchは医療機器ではありませんが、日々の運動習慣を見直すきっかけとして非常に便利なツールです。

福本医院でも、Apple Watchの心拍数記録や心電図記録を持参される患者さんが増えています。

1日30分が理想と言われる理由

世界保健機関(WHO)や米国スポーツ医学会(ACSM)は、週150分以上の中等度有酸素運動を推奨しています。

これは、

1日30分 × 週5日

に相当します。

まとまった時間が取れない場合は、

  • 10分を3回
  • 15分を2回

に分けても構いません。

大切なのは、一度に長時間行うことよりも継続することです。

ダイエットに有酸素運動は効果がある?

有酸素運動は体重管理やダイエットにも有効です。

運動を続けることでエネルギー消費量が増え、内臓脂肪や体脂肪の減少につながります。

さらに、

  • 血糖値改善
  • インスリン抵抗性改善
  • 血圧低下
  • 中性脂肪改善

などの効果も期待できます。

肥満やメタボリックシンドローム、CKM症候群の予防や改善にも重要な治療の一つです。

心不全患者さんにも有酸素運動が勧められる理由

以前は心不全患者さんには安静が勧められることがありました。

しかし現在では、病状が安定している心不全患者さんに対しては、有酸素運動が重要な治療の一つと考えられています。

適切な有酸素運動によって、

  • 運動能力の改善
  • 息切れの軽減
  • 生活の質(QOL)の改善
  • 心不全による入院リスクの低下

などが期待できます。

運動中に胸痛や強い息切れ、めまいなどが出る場合は運動を中止し、医師に相談してください。

少し重複しているので、循環器専門医らしい自然な流れにすると読みやすくなります。

高血圧・糖尿病・脂肪肝にも有効

有酸素運動は、

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 肥満
  • 脂肪肝(MASLD)
  • 慢性腎臓病(CKD)

など、多くの生活習慣病の予防や改善に役立ちます。

薬だけに頼るのではなく、

「食事」「運動」「睡眠」

を整えることが健康管理の基本です。

循環器専門医として日々診療していると、生活習慣病の改善に成功される方の多くは、特別なトレーニングをしているわけではありません。

無理のないウォーキングや自転車などの有酸素運動を習慣化し、自分のペースで長く続けている方がほとんどです。

有酸素運動は、必ずしも激しく行う必要はありません。

  • エレベーターではなく階段を使う
  • 一駅分歩く
  • 買い物の際に少し遠回りする

このような日常生活の中での小さな積み重ねも、健康維持に十分役立ちます。

運動習慣を身につけるうえで大切なのは、短期間だけ頑張ることではありません。

「頑張ること」よりも、「続けること」。

それが、高血圧や糖尿病、脂肪肝、CKD、心不全などの予防・改善につながる第一歩です。

まとめ

有酸素運動とは、酸素を使いながら長時間続けられる運動です。

ウォーキングや自転車、水泳などが代表的で、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、脂肪肝、慢性腎臓病、心不全などの予防や改善に役立ちます。

運動強度の目安は、

「会話できる」「息切れしない」

レベルです。

頑張りすぎる必要はありません。

まずは1日30分を目標に、自分のペースで続けられる運動習慣を始めてみましょう。

 

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よくある質問(FAQ)

Q. 有酸素運動とは何ですか?

有酸素運動とは、酸素を利用しながらエネルギーを作り出す運動のことです。ウォーキングや自転車、水泳などが代表的で、比較的軽い負荷で長時間続けられるのが特徴です。

Q. ウォーキングは有酸素運動ですか?

はい。ウォーキングは代表的な有酸素運動です。特別な道具が不要で始めやすく、高血圧や糖尿病、肥満の予防・改善にも役立ちます。

Q. 散歩でも効果はありますか?

はい。ゆっくりした散歩でも身体活動量を増やす効果があります。健康維持のためには、会話できる程度の少し速めの歩行を意識するとさらに効果的です。

Q. 有酸素運動は毎日した方が良いですか?

毎日行う必要はありませんが、継続が大切です。WHOでは週150分以上の中等度有酸素運動が推奨されています。1日30分を週5日程度が目安です。

Q. 有酸素運動は何分行えば良いですか?

1回20〜30分程度が目安です。まとまった時間が取れない場合は、10分ずつに分けて行っても構いません。

Q. 有酸素運動の理想的な心拍数は?

一般的には最大心拍数(220−年齢)の60〜70%程度が目安です。ただし、最も簡単な目安は「会話できる強さ」です。

Q. Apple Watchで運動強度はわかりますか?

Apple Watchでは運動中の心拍数を確認できます。会話ができて、心拍数も目標範囲内であれば、適切な有酸素運動ができている可能性があります。

Q. 有酸素運動と筋トレはどちらが先ですか?

どちらでも構いませんが、ダイエットや筋力維持を目的とする場合は筋力トレーニングを先に行い、その後に有酸素運動を行う方法がよく用いられます。

Q. 高血圧でも運動して大丈夫ですか?

多くの場合は問題ありません。むしろ有酸素運動は血圧を下げる効果が期待できます。ただし、血圧が著しく高い場合や症状がある場合は医師に相談してください。

Q. 心不全でも有酸素運動はできますか?

病状が安定している心不全患者さんでは、有酸素運動が推奨されています。運動能力や生活の質(QOL)の改善につながることが知られています。

Q. CKD(慢性腎臓病)でも運動して大丈夫ですか?

はい。多くのCKD患者さんでは適度な有酸素運動が推奨されています。ただし、病状によっては制限が必要な場合もあるため、主治医と相談しましょう。

Q. 脂肪肝の改善に有酸素運動は有効ですか?

有効です。有酸素運動は内臓脂肪や肝脂肪の減少に役立ち、MASLD(脂肪肝)の改善につながることが期待されています。

Q. ダイエットにはウォーキングとジョギングどちらが良いですか?

どちらも有効ですが、継続しやすい運動を選ぶことが重要です。膝や腰への負担が少ないウォーキングは、多くの方におすすめです。

Q. 運動中に胸痛や息切れが出たらどうすればよいですか?

直ちに運動を中止してください。症状が続く場合や繰り返す場合は、循環器内科を受診することをおすすめします。

Q. 運動すると動悸がします。受診した方がよいですか?

運動中の軽い脈拍増加は正常ですが、急に脈が速くなる、脈が乱れる、胸痛やめまいを伴う場合は不整脈の可能性もあります。気になる場合は循環器内科にご相談ください。

 

参考文献・ガイドライン

1. 2022 AHA/ACC/HFSA 心不全診療ガイドライン

Heidenreich PA, et al. 2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure

心不全診療の世界標準ガイドラインです。運動療法(Exercise Training)は、心不全患者の運動能力や生活の質(QOL)を改善するため推奨されています。心臓リハビリテーションの重要性についても詳しく解説されています。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000001063

2. ACC(米国心臓病学会)ガイドライン解説

2022 AHA/ACC/HFSA Heart Failure Guideline: Key Perspectives

上記ガイドラインの要点解説です。運動療法は心不全患者の身体機能や運動耐容能の改善に有効とされています。

https://www.acc.org/latest-in-cardiology/ten-points-to-remember/2022/03/29/19/53/2022-aha-acc-hfsa-heart-failure-guideline-gl-hf

3. HF-ACTION Trial

O’Connor CM, et al. Exercise Training in Patients With Chronic Heart Failure

心不全患者2,300人以上を対象にした歴史的臨床試験です。定期的な有酸素運動が運動能力やQOLの改善に有効であることを示しました。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0900101

4. ESC(欧州心臓病学会)心不全ガイドライン

2021 ESC Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure

欧州の心不全診療ガイドラインです。安定した慢性心不全患者では有酸素運動を積極的に推奨しています。心臓リハビリテーションの重要性も強調されています。

https://academic.oup.com/eurheartj/article/42/36/3599/6358045

5. WHO身体活動ガイドライン(2020)

World Health Organization Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour

成人は週150〜300分の中等度有酸素運動、または75〜150分の高強度運動を行うことが推奨されています。

「1日30分×週5日」が推奨される根拠となる世界的ガイドラインです。

https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128

6. JAMA Network Open(2024)

Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: Systematic Review and Meta-analysis

6,800人以上を対象としたメタ解析です。有酸素運動は体重減少だけでなく、腹囲や体脂肪率の改善にも有効であることが示されました。

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2828487

7. ACSM Position Stand

Appropriate Physical Activity Intervention Strategies for Weight Loss and Prevention of Weight Regain for Adults

米国スポーツ医学会(ACSM)の代表的ポジションステートメントです。

ダイエット目的では150分/週以上、体重維持には200〜300分/週程度の運動が推奨されています。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19127177/

 

福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。

心斎橋、長堀橋、本町、四ツ橋から徒歩圏内にあり、新町・堀江・立売堀をはじめ大阪市西区からも多くの患者様にご来院いただいております。

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この記事の監修

福本医院

院長 福本 淳

内科・循環器内科

平成9年 神戸大学医学部医学科卒

医学博士

循環器専門医(登録番号15490)

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