この記事のポイント

  • 糖尿病治療は「血糖値を下げる」から「体重・心臓・腎臓をまとめて守る」時代へ変化しています
  • チルゼパチドは従来のGLP-1製剤を上回る血糖降下・体重減少効果が大規模試験で確認されています
  • SGLT2阻害薬は心不全・慢性腎臓病の予防にも重要な薬です
  • 早めの対応が将来の合併症予防につながります

はじめに

「健康診断でHbA1cが高いと言われた」 「薬を飲んでいるけれど、もっと良い治療があるのでは?」 「GLP-1やチルゼパチドが気になっている」

大阪市中央区・心斎橋にある福本医院でも、こうした相談が最近とても増えています。

糖尿病の治療は、ここ数年で大きく変わっています。

以前は「血糖値を下げること」が治療の中心でした。しかし現在は、血糖値に加えて、

  • 体重を適切にコントロールすること
  • 心臓の病気を防ぐこと
  • 腎臓を守ること

この3つをまとめて考える治療が世界標準になっています。米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)の合同ガイドラインでも、この考え方が明確に示されています(参考文献1・2)。

この記事では、循環器専門医の立場から、最新の治療薬の特徴と選び方をわかりやすく解説します。

 

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体重管理が治療の中心になっています

近年の糖尿病治療で最も重視されているのが「体重」です。

体重が減ることで、

  • 血糖値が下がりやすくなる
  • 血圧やコレステロールも改善する
  • 将来の心臓病・腎臓病リスクが下がる

といった効果が期待できます。

ADA/EASD合同提言(2022年)では、体重コントロールが糖尿病治療の中核に位置づけられており、食事・運動による生活習慣改善と、必要に応じた薬物療法を組み合わせることが推奨されています(参考文献2)。

 

運動は薬と組み合わせることで効果が高まります

体重管理において、薬だけでなく運動習慣も重要な役割を担っています。

特に有酸素運動は、

  • 血糖値の改善
  • インスリン抵抗性の低下
  • 内臓脂肪の減少
  • 血圧・コレステロールの改善

に役立つことが多くの研究で示されています。

ADA 2025ガイドラインでも、成人糖尿病患者に対して週150分以上の中等度有酸素運動が推奨されています(参考文献1)。

「中等度」の目安は、隣の人と会話できる程度の強さです。ウォーキングや自転車、水泳などが代表的で、特別な器具がなくても始められます。まとまった時間が取れない場合は、10分を3回に分けて行うだけでも効果が期待できます。大切なのは、完璧にやろうとするより続けることです。

スポーツジムでランニングマシーンを使って早歩きをする福本医院公式キャラクターの「いのばあ」と「いのねえ」。いのばあの心拍数は105回/分、いのねえは運動時間30分を表示。二人が「日本代表勝つかしら?」「期待しましょ」と会話しながら有酸素運動を楽しんでいるイラスト。

有酸素運動は無理なく続けられる早歩きがおすすめ。いのばあといのねえがランニングマシーンで会話を楽しみながら運動している様子を描いた福本医院オリジナルイラストです。

 

最近よく使われるお薬① GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬は、食欲を自然に抑え、血糖値を下げるホルモンの働きを利用した治療薬です。

主な特徴は、

  • 食欲を自然に抑える
  • 体重が減りやすい
  • 低血糖を起こしにくい
  • 心臓の病気のリスクを下げる効果が確認されている

無理な食事制限が続かない方にも、生活習慣の改善を後押ししてくれる治療です。

いのばあが椅子に座り、マンジャロ(チルゼパチド)を腹部に皮下注射しているイラスト

椅子に座った状態で、腹部にマンジャロ(チルゼパチド)を自己注射するイメージイラストです。初めての方でも落ち着いて行えるよう、実際の使用方法をわかりやすく表現しています。

 

最近よく使われるお薬② チルゼパチド(マンジャロ)

チルゼパチドは、GLP-1に加えてGIPというホルモンにも同時に作用する新しいタイプの薬です。

世界的な医学誌NEJMに掲載されたSURPASS-2試験では、従来のGLP-1製剤(セマグルチド)と直接比較した結果、チルゼパチドがより強い血糖降下・体重減少効果を示しました(参考文献3)。

さらに肥満・過体重の方を対象にしたSURMOUNT-1試験では、チルゼパチドを使用したグループで最大約20%の体重減少が報告されており、「体重管理が治療の中心」という考え方を直接支える重要な研究結果です(参考文献4)。

血糖値の改善だけでなく、体重管理の面でも大きなメリットがある薬として、現在の糖尿病治療の中心的な選択肢の一つになっています。

 

最近よく使われるお薬③ SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は、尿と一緒に糖を体の外に出すことで血糖値を下げる薬です。仕組みは他の薬と異なりますが、それ以上に注目されているのが「心臓・腎臓を守る効果」です。

EMPA-REG OUTCOME試験(NEJM)では、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンが、心血管死亡・心不全入院・腎機能低下を有意に減少させることが示されました(参考文献5)。

この結果をきっかけに、SGLT2阻害薬は「血糖を下げる薬」から「心臓・腎臓を守る薬」として位置づけられるようになりました。

KDIGO 2024ガイドラインでも、慢性腎臓病(CKD)を合併した糖尿病患者さんには積極的な使用が推奨されています(参考文献6)。

特に、

  • 心不全がある方
  • 慢性腎臓病(CKD)がある方
  • 動脈硬化・心血管リスクが高い方

にとって重要な薬です。

 

3つの薬の特徴比較

薬の種類 主な特徴 特に向いている方
GLP-1受容体作動薬 食欲抑制・体重減少・低血糖リスク低い 体重を減らしたい方・食欲コントロールが難しい方
チルゼパチド より強い体重減少・血糖改善効果 体重減少効果を重視する方
SGLT2阻害薬 心不全・腎臓保護効果 心臓病・慢性腎臓病がある方

※個人の病状・年齢・生活スタイルによって最適な治療は異なります。必ず医師と相談してください。

 

どの治療が自分に合っているのか

現在の糖尿病治療は「この薬が一番良い」という単純なものではありません。

BMJに掲載されたリビングシステマティックレビュー(2025年)では、63種類の糖尿病治療薬について心血管・腎臓・体重への効果と副作用が網羅的に比較されており、患者さんの状態に応じた個別化治療の重要性が示されています(参考文献7)。

たとえば、

  • 体重を減らしたい方 → チルゼパチドやGLP-1受容体作動薬
  • 心不全・慢性腎臓病がある方 → SGLT2阻害薬を優先
  • 年齢・低血糖リスクが気になる方 → それぞれの副作用プロファイルで判断

こうした条件によって、適した治療は変わります。大切なのは、一人ひとりの状態に合わせて治療を選ぶことです。

 

受診をおすすめする目安

以下のような方は、一度ご相談ください。

  • 健康診断でHbA1c 6.5%以上または空腹時血糖126mg/dL以上を指摘された
  • HbA1c 5.6〜6.4%の「糖尿病予備群」と言われた
  • 体重が増えてきている、お腹周りが気になる
  • 現在の薬の効果に不安がある
  • チルゼパチドやGLP-1など新しい治療について知りたい
  • 心臓病・慢性腎臓病があり、血糖コントロールも気になる

糖尿病は初期にほとんど症状がない病気です。しかし放置すると、心臓・腎臓・血管に少しずつダメージが蓄積されます。「まだ大丈夫」と思っている段階こそ、見直しのタイミングです。

 

糖尿病のよくある質問(FAQ)

Q. 糖尿病は治りますか? 完全な「完治」は難しいことが多いですが、適切な治療と生活習慣の見直しで血糖値を正常に近い状態に保つことは十分可能です。早期であれば薬なしでコントロールできるケースもあります。

Q. HbA1cとは何ですか? 過去1〜2か月の平均的な血糖状態を示す指標です。健康診断で最も重要な数値の一つで、治療の目安にもなります。

Q. チルゼパチドとはどんな薬ですか? GLP-1とGIPの両方に作用する新しいタイプの糖尿病治療薬です。従来のGLP-1製剤より強い血糖改善・体重減少効果が大規模試験で確認されています。医師の管理のもとで使用します。

Q. SGLT2阻害薬は糖尿病以外にも効果がありますか? はい。心不全の予防・慢性腎臓病の進行抑制に有効であることが大規模試験で示されており、糖尿病がない患者さんへの使用も広がっています。

Q. GLP-1は「痩せる薬」ですか? 本来は糖尿病治療薬ですが、体重減少効果があります。医師の管理のもとで適切に使用することが重要です。自己判断での使用はお控えください。

Q. 食事だけで血糖値を改善できますか? 初期の段階では可能な場合もあります。ただし進行している場合は薬との併用が必要です。無理な制限より、長続きする方法を選ぶことが大切です。

Q. 糖尿病の薬は一生続ける必要がありますか? 状態によっては減量・中止できることもあります。体重減少や生活改善によって薬を減らせるケースも少なくありません。ただし自己判断での中止は危険ですので、必ず医師と相談してください。

Q. インスリンは最後の手段ですか? 必ずしもそうではありません。早い段階で使うことで膵臓の負担を軽くし、将来の合併症を防ぐ目的で使うこともあります。

Q. 糖尿病を放置するとどうなりますか? 心筋梗塞・脳梗塞・腎不全・失明・透析などのリスクが高まります。自覚症状がなくても進行するため注意が必要です。

Q. どのタイミングで受診すればいいですか? 健康診断で異常を指摘された時点が一つの目安です。体重増加・生活習慣の乱れが気になる場合も、早めの相談が将来の合併症予防につながります。

Q. 心斎橋・長堀橋・本町周辺で糖尿病を相談できる内科はありますか? はい。福本医院(大阪市中央区南船場)では、糖尿病の診療・生活習慣病の管理・最新治療薬のご相談に対応しています。心斎橋・長堀橋・本町・四ツ橋から徒歩圏内です。お気軽にご相談ください。

 

まとめ

糖尿病治療はここ数年で大きく進歩しています。

「血糖値を下げる」だけでなく、体重・心臓・腎臓をまとめて守る治療が世界標準です。チルゼパチドやSGLT2阻害薬など、新しい薬の選択肢も広がっています。

大切なのは、自分の状態に合った治療を早めに始め、無理なく続けること。「まだ症状がないから大丈夫」と思っている段階こそ、血管を守る最も重要なタイミングです。

気になる症状や健診異常がある方は、大阪市中央区・心斎橋の福本医院までお気軽にご相談ください。心斎橋・長堀橋・本町・四ツ橋から徒歩圏内です。

 

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English Summary

Latest Treatment of Type 2 Diabetes: GLP-1, Tirzepatide, and SGLT2 Inhibitors — A Cardiologist’s Guide

The management of type 2 diabetes has undergone a paradigm shift. Rather than focusing solely on lowering blood glucose, current international guidelines emphasize a comprehensive approach that simultaneously addresses body weight, cardiovascular risk, and kidney protection.

Body weight as the central target The 2022 ADA/EASD consensus report positions weight management at the core of diabetes treatment. Weight loss of even 5–10% has been shown to improve glycemic control, blood pressure, and lipid profiles, reducing the long-term risk of cardiovascular and renal complications. In addition, ADA 2025 guidelines recommend at least 150 minutes per week of moderate-intensity aerobic exercise, such as walking or cycling, as a cornerstone of lifestyle management.

Tirzepatide (Mounjaro) Tirzepatide is a dual GIP/GLP-1 receptor agonist representing a new generation of diabetes therapy. In the SURPASS-2 trial (NEJM, 2021), tirzepatide demonstrated superior glycemic reduction and weight loss compared to semaglutide. The SURMOUNT-1 trial (NEJM, 2022) further showed weight reductions of up to approximately 20% in patients with obesity, directly supporting the weight-centric treatment model.

SGLT2 inhibitors SGLT2 inhibitors lower blood glucose by promoting urinary glucose excretion, but their most clinically significant benefit lies in cardioprotection and renoprotection. The landmark EMPA-REG OUTCOME trial (NEJM, 2015) demonstrated that empagliflozin significantly reduced cardiovascular mortality, heart failure hospitalization, and renal progression. KDIGO 2024 guidelines recommend SGLT2 inhibitors for patients with diabetic kidney disease.

Individualized treatment selection A living systematic review published in The BMJ (2025) comparing 63 antidiabetic agents underscores the importance of individualized therapy. Treatment selection should be guided by the patient’s weight, age, cardiovascular history, renal function, and lifestyle. There is no single best drug — the optimal choice varies by individual profile.

When to seek evaluation Patients with HbA1c ≥6.5%, fasting plasma glucose ≥126 mg/dL, prediabetes (HbA1c 5.6–6.4%), or concurrent heart disease and chronic kidney disease are encouraged to consult a physician promptly. Early intervention offers the greatest opportunity to prevent long-term complications.

About the author This article was written by Dr. Atsushi Fukumoto, Director of Fukumoto Medical Clinic (Shinsaibashi, Chūō-ku, Osaka, Japan), a board-certified cardiologist (Certification No. 15490), MD, PhD, graduate of Kobe University School of Medicine (1997). The clinic is located in Minami-Senba, within walking distance of Shinsaibashi, Nagahori-bashi, Hommachi, and Yotsubashi stations and neighborhoods.

 

参考文献

1. ADA Standards of Care in Diabetes—2025 著者:American Diabetes Association 掲載誌:Diabetes Care. 2025;48(Supplement 1) DOI:10.2337/dc25-S009

https://diabetesjournals.org/care/article/48/Supplement_1/S181/157564/

米国糖尿病学会による世界標準の診療ガイドライン最新版。GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)・SGLT2阻害薬の早期からの活用、体重管理を治療の中心に据える考え方が明記されています。

2. ADA/EASD合同コンセンサスレポート(2022年) 著者:American Diabetes Association and European Association for the Study of Diabetes 掲載誌:Diabetologia. 2022;65(12):1925-1966 DOI:10.1007/s00125-022-05787-2

https://link.springer.com/article/10.1007/s00125-022-05787-2

米国・欧州の2大糖尿病学会が共同で策定した2型糖尿病の血糖管理に関する合同提言。体重コントロールを治療の中核に位置づけ、心血管・腎臓保護を包括的に推奨した重要な指針です。

3. SURPASS-2試験(NEJM) 著者:Frías JP, Davies MJ, Rosenstock J, et al. 掲載誌:New England Journal of Medicine. 2021;385(6):503-515 DOI:10.1056/NEJMoa2107519

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2107519

チルゼパチドとセマグルチドを直接比較した第3相RCT。チルゼパチドが従来のGLP-1製剤を上回る血糖降下・体重減少効果を示した、現代の糖尿病治療を変えた代表的試験です。

4. SURMOUNT-1試験(NEJM) 著者:Jastreboff AM, Aronne LJ, Ahmad NN, et al. 掲載誌:New England Journal of Medicine. 2022;387(3):205-216 DOI:10.1056/NEJMoa2206038

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2206038

肥満・過体重を対象にチルゼパチドの体重減少効果を検証した第3相RCT。最大約20%の体重減少が示され、「体重管理が治療の中心」という考え方の直接的な科学的根拠となっています。

5. EMPA-REG OUTCOME試験(NEJM) 著者:Zinman B, Wanner C, Lachin JM, et al.(EMPA-REG OUTCOME Investigators) 掲載誌:New England Journal of Medicine. 2015;373(22):2117-2128 DOI:10.1056/NEJMoa1504720

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1504720

SGLT2阻害薬エンパグリフロジンが心血管死亡・心不全入院・腎機能低下を有意に減少させることを示した歴史的RCT。SGLT2阻害薬が「血糖を下げる薬」から「心臓・腎臓を守る薬」へと位置づけられるきっかけとなった重要論文です。

6. KDIGO 2024 CKDガイドライン 著者:Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO) 掲載誌:Annals of Internal Medicine. 2024 DOI:10.7326/ANNALS-24-01926

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/ANNALS-24-01926

慢性腎臓病(CKD)の評価と管理に関する国際標準ガイドライン2024年版。糖尿病性腎症を含むCKD患者へのSGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬の積極的使用が推奨されており、糖尿病診療においても重要な指針です。

7. BMJ Living Systematic Review(2025年) 著者:Bidonde J, et al. 掲載誌:The BMJ. 2025 DOI:10.1136/bmj-2024-083039

https://www.bmj.com/content/390/bmj-2024-083039

現在利用可能な63種類の糖尿病治療薬について、心血管・腎臓・体重への有効性と副作用を最新エビデンスを随時取り込みながら更新し続ける包括的システマティックレビュー。治療薬の全体像を把握するうえで有用な参考文献です。

 

 

この記事の監修:福本医院 院長 福本淳(内科・循環器内科、循環器専門医 登録番号15490、医学博士、神戸大学医学部卒)

福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。心斎橋、長堀橋、本町、四ツ橋から徒歩圏内にあり、新町・堀江・立売堀をはじめ大阪市西区からも多くの患者様にご来院いただいております。

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