「しっかり寝たい」あなたへ|不眠症と睡眠薬の選び方・切り替え・減薬
2026/7/23 改訂
■ この記事のポイント
- この記事は「これから睡眠薬を始めたい方」「今の眠剤で改善が不十分な方」「ベンゾジアゼピン系の依存が心配で新しい薬に変えたい方」に向けて書いています。
- 近年はロゼレムやDORA(ベルソムラ・デエビゴ・クービビック・ボルズィ)など、依存性の少ない薬が選ばれることが増えています。
- 長く飲んでいる薬は、急にやめず「新しい薬に置き換えながら少しずつ減らす」のが基本です。
- 心療内科で数種類の薬を併用中の方は、まず処方元の主治医にご相談ください(理由は本文で説明します)。
- 当院は循環器の立場から、不眠と心臓・血圧・睡眠時無呼吸症候群(SAS)の関係もあわせて診療します。


まず、あなたはどのタイプですか?
不眠症は「一番良い薬」を選ぶ病気ではなく、お悩みのタイプに合わせて薬と対策を選ぶものです。近いものを、記事の後半でご案内しています。
- タイプA:これから睡眠薬を始めたい方(初めての方)
- タイプB:眠剤を飲んでいるが、効果が不十分で別の薬も検討したい方
- タイプC:ベンゾジアゼピン系を飲んでいて、依存が心配で新しい薬に変えたい方
いずれのタイプも、生活習慣(睡眠衛生)の見直しと、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの隠れた原因の確認が土台になります。
はじめにお願いです(心療内科で複数の薬を飲んでいる方へ)
心療内科や精神科で、抗うつ薬・抗不安薬・気分安定薬・複数の睡眠薬などを併用されている方は、当院で睡眠薬だけを入れ替えることはおすすめしていません。
これは「診られない」という意味ではなく、複数の向精神薬を使った治療は、全体像を把握している処方元の主治医が調整するのが最も安全だからです。睡眠薬だけを一部変更すると、他の薬との相互作用や、もとの症状のバランスが崩れることがあります。
当院が得意とするのは、次のような方です。
- これから睡眠薬を始めたい方
- 睡眠薬を1〜2種類だけ飲んでいて、見直したい方
- ベンゾジアゼピン系・Z薬から、依存性の少ない薬へ切り替えたい方
- 不眠の背景に、高血圧・不整脈・睡眠時無呼吸症候群などが疑われる方
多剤併用中の方は、まず現在の主治医にご相談ください。そのうえで、心臓や血圧、睡眠時無呼吸の評価が必要な場合には、循環器の立場から連携してお手伝いします。
睡眠の「根源」はどこにあるのか
長い間、「なぜ眠くなるのか」は医学最大の謎の一つでした。
2025年、この疑問に大きな答えを与える研究がNature誌に掲載されました。この研究では、睡眠欲求は脳内ミトコンドリアの代謝ストレスによって生じる可能性が示されました。
脳内には「睡眠促進ニューロン(dFBNs)」と呼ばれる神経細胞があります。起きて活動している間、脳は大量のエネルギーを消費します。するとミトコンドリアから電子が漏れ出し、代謝ストレスが蓄積します。これが「眠い」という感覚の正体である可能性が示されました。
つまり睡眠とは、単なる休息ではなく、脳のエネルギー工場であるミトコンドリアをリセットする、生命維持に不可欠なメンテナンス時間なのです。
睡眠不足が招くリスク(循環器専門医の視点から)
睡眠不足は「眠い」だけでは済みません。慢性的な睡眠不足は、さまざまな病気のリスクを高めることが分かっています。
心血管疾患
睡眠時間が短い人では、心筋梗塞・脳卒中・心不全・高血圧のリスクが高くなります。
糖尿病
睡眠不足では、レプチン(満腹ホルモン)が減り、グレリン(食欲ホルモン)が増えます。その結果、食欲が増え、肥満や2型糖尿病につながります。
認知症
睡眠中には、脳内に蓄積した老廃物(アミロイドβなど)が排出されます。睡眠不足が続くとこの排出が不十分になり、アルツハイマー病のリスク上昇との関連が報告されています。
死亡率
睡眠時間が6時間未満の人は、7〜8時間睡眠の人と比べて総死亡率が高くなることも報告されています。
不眠症は「眠れない病気」ではなく「起き続けてしまう病気」
最近では、不眠症は「脳が起き続けてしまう病気」と考えられるようになっています。
健康な人では、夜になると覚醒を維持する神経活動が低下します。しかし不眠症では、脳の覚醒ネットワークが過剰に働いたままになります。体は疲れているのに、脳だけが眠ることを拒否している状態です。
その結果、寝つけない・夜中に目が覚める・朝早く目が覚める・熟睡感がない、といった症状が起こります。慢性化すると交感神経が優位になり、高血圧・動悸・不整脈・血糖値上昇など、循環器の面にも悪影響を及ぼします。
高齢者で「中途覚醒」が増える理由
高齢になると、睡眠そのものが変化します。深い睡眠(徐波睡眠)が減り、浅い睡眠が増え、夜間の尿が増え、早寝早起きになります。
そのため高齢の方では、「寝つき」よりも「途中で目が覚める」ことが問題になるケースが多くなります。
また、従来からよく使われてきた睡眠薬は眠らせる力が強い一方、高齢の方では転倒・骨折・せん妄・記憶障害・翌朝のふらつきを起こしやすくなります。このため現在は、依存性の少ないロゼレムやDORAが第一選択として検討されることが増えています。
睡眠薬の種類を正しく理解する
睡眠薬は、大きく4つに分類されます。
| 分類 | 代表的な薬 |
|---|---|
| ベンゾジアゼピン系(BZD) | ハルシオン、レンドルミン、ユーロジン など |
| 非ベンゾジアゼピン系(Z薬) | マイスリー、アモバン、ルネスタ |
| メラトニン受容体作動薬 | ロゼレム |
| オレキシン受容体拮抗薬(DORA) | ベルソムラ、デエビゴ、クービビック、ボルズィ |
近年の不眠症診療では、依存性の少ないロゼレムやDORAが用いられることが多くなっています。
ベンゾジアゼピン系(BZD)
長年使われてきた代表的な睡眠薬です。即効性があり「眠れない」という症状にはよく効きますが、依存性があり、現在は新たに開始することは少なくなっています。
代表的な薬は、ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、ユーロジン(エスタゾラム)です。ハルシオンは超短時間型で寝つきに、ユーロジンは作用時間が長めで中途覚醒にも使われてきました。いずれも依存や転倒・ふらつきに注意が必要で、高齢の方では必要最小限とすることが望ましいとされています。長く服用中の方は、急に中止せず、記事後半の【タイプC】をご覧ください。
非ベンゾジアゼピン系(Z薬)
作用はBZDに似ていますが、構造が異なります。以前は「安全」と考えられていましたが、現在では依存性や転倒リスクはBZDと大きく変わらないことが分かっています。
代表がマイスリー(ゾルピデム)です。日本で最も多く処方されている睡眠薬の一つで、寝つきによく効く一方、中途覚醒には向きません。長期連用で依存が生じることがあり、当院でも減薬のご相談が最も多い薬です。急にやめず、少しずつ減らすことが大切です。
アモバン(ゾピクロン)は苦味を感じる副作用が比較的多く、ルネスタ(エスゾピクロン)はZ薬の中では作用時間がやや長いのが特徴です。いずれも高齢の方では必要最小限とします。
メラトニン受容体作動薬(ロゼレム)
ロゼレム(ラメルテオン)は、睡眠薬というより体内時計を整える薬と考えると分かりやすい薬です。自然な眠気を引き出すため依存性がなく、高齢の方にも使いやすい薬です。強い催眠作用はありませんが、体内時計の乱れによる不眠や、依存を避けたい方の選択肢になります。
オレキシン受容体拮抗薬(DORA)
近年、不眠症治療で広く使われるようになっている薬です。眠らせる薬ではなく、脳の「覚醒スイッチ」を切る薬で、自然な睡眠に近い眠りが得られ、依存性も少ないのが特徴です。
- ベルソムラ(スボレキサント/2014年発売):世界初のDORA。寝つきと中途覚醒の両方に用いられます。
- デエビゴ(レンボレキサント/2020年発売):作用時間が長く、中途覚醒・早朝覚醒に使いやすい薬です。翌朝の眠気には注意が必要です。
- クービビック(ダリドレキサント/2024年発売):半減期は約8時間で、翌朝への持ち越しが比較的少ないと報告されています。
- ボルズィ(ボルノレキサント/2025年発売):半減期が短く、翌朝への影響を抑えることを目指して開発された薬です。服用後に眠気が残る場合は、運転など危険を伴う作業は避けてください。
4剤に優劣があるわけではなく、効果や副作用には個人差があります。星印での比較をご覧になりたい方は、記事末尾の「参考:主な睡眠薬の比較表」をご覧ください。
症状別・睡眠薬の選び方(早見チャート)
ご自身のタイプが分かりにくい方は、まずこちらをご覧ください。一般的な考え方です。
寝つきが悪い(入眠困難)
⇩
ロゼレム/ベルソムラ/クービビック/ボルズィ
夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
⇩
デエビゴ/ベルソムラ
⇩
改善が不十分なら
⇩
少量トラゾドンの併用を検討することがあります
朝に眠気が残るのが心配
⇩
半減期の短いクービビック/ボルズィ
高齢の方
⇩
ロゼレム、またはDORA(ベルソムラ・デエビゴ・クービビック・ボルズィ)
⇩
転倒や認知機能への影響を考え、ベンゾジアゼピン系やZ薬は必要最小限とすることが望ましいとされています
マイスリーなどを長年服用している
⇩
急に中止しない
⇩
DORAやロゼレムへ置き換える
⇩
数週間〜数か月かけて少しずつ減量
効果や副作用には個人差があるため、実際の薬の選択は医師とご相談のうえ決定します。
「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」など、不眠のお悩みは一人で抱え込まずにご相談ください。福本医院では、睡眠薬の見直しや、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査・CPAP治療にも対応しています。
【タイプA】初めて睡眠薬を使う方へ
初めて睡眠薬を検討される方は、依存性の少ない薬から、少量で始めるのが基本です。上の早見チャートで、ご自身が「寝つき」「中途覚醒」「朝の眠気」のどれで困っているかを整理してみてください。
あわせて大切なのが、薬を始める前の生活習慣の見直しです。後述の睡眠衛生10項目を1〜2週間試すだけで、眠りが整う方も少なくありません。
また、飲み始めたあとも「効いているか」「翌朝に残っていないか」を確認しながら、必要な期間だけ使うことが大切です。漫然と続けず、定期的に見直していきましょう。
【タイプB】今の薬で眠れない方へ(効果が不十分なとき)
「飲んでいるのに、あまり眠れない」というとき、まず考えたいのは「薬を増やすこと」ではなく「なぜ眠れないのか」です。
薬を増やす前に確認したいこと
眠れない背景に、次のような別の原因が隠れていることがあります。
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS):いびき・日中の強い眠気・夜中に何度も目が覚める
- うつ病・不安症
- むずむず脚症候群
- 甲状腺の病気
- 心不全や不整脈による夜間の息苦しさ・動悸
特にSASは、睡眠薬を足しても改善しないばかりか、薬によっては悪化させることもあります。「睡眠薬を飲んでも眠れない」「昼間に強い眠気がある」「いびきを指摘される」という方は、原因の確認を優先しましょう。
薬の切り替え・併用の考え方
原因を確認したうえで、症状に合わせて調整します。
- 中途覚醒が中心なら、デエビゴへの切り替えを検討します。
- DORA単剤で効果が不十分なときは、少量のトラゾドン併用を検討することがあります。
- 朝の眠気が気になるなら、半減期の短いクービビックやボルズィへ変更します。
薬の変更は、効果と副作用を見ながら医師と相談して進めます。自己判断で量を増やすのは避けてください。
【タイプC】ベンゾ系から切り替えたい方へ(依存が心配な方)
「何年もマイスリーを飲んでいる」「やめたいけれど、眠れなくなるのが心配」——このようなご相談は少なくありません。
マイスリー(ゾルピデム)やベンゾジアゼピン系は、短期間なら有効な薬ですが、長く飲むと耐性(効きにくくなる)や身体依存が生じることがあります。
急にやめてはいけません
急に中止すると、反跳性不眠(以前より眠れなくなる)・不安・動悸・発汗・手の震え、まれにけいれん、といった離脱症状が出ることがあります。長く飲んでいる方ほど、慎重な減薬が必要です。自己判断での中止は避けてください。
なぜ減薬がすすめられるのか
高齢者でのベンゾジアゼピン系・Z薬の長期使用は、転倒・骨折・記憶障害・認知機能低下・日中の眠気・自動車事故との関連が報告されています。日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」でも、漫然とした長期使用は避けることが推奨されています。
基本は「置換漸減法」(置き換えながら少しずつ減らす)
睡眠薬をやめるときは、新しい薬に切り替えながら少しずつ減らすのが基本です。
- ロゼレムやDORAを開始する(必要に応じて少量のトラゾドンを併用することがあります)
- 数日〜数週間、様子を見る
- マイスリーを4分の1〜2分の1錠ずつ減らす
- 数週間ごとに、さらに減らす
- 中止する
減薬のスピードは人によって異なります。「眠れる状態を保ちながら少しずつ減らす」ことが成功の秘訣です。焦らないことが何より大切です。
なお、このタイプの中でも、心療内科・精神科で睡眠薬以外の薬も複数併用されている方は、まず処方元の主治医にご相談ください。
トラゾドンはどんな薬?
トラゾドンは本来、抗うつ薬として開発された薬で、不眠症に対する使用は本来の適応とは異なります。少量(就寝前12.5〜50mg程度)では眠気を出す作用が強く、睡眠薬として使われることがあります。5-HT2A・ヒスタミンH1・α1受容体を遮断することで眠気が生じ、半減期が6〜7時間程度と夜間の後半までカバーしやすいのが特徴です。依存性がほとんどなく、耐性もつきにくいため、次の2つの場面で用いられます。
中途覚醒への上乗せ
夜中や早朝に目が覚める場合は、まずDORA(デエビゴなど)を土台にして、それでも目が覚めるときに少量のトラゾドンを就寝前に上乗せする、という順が扱いやすい方法です。睡眠目的では50mg程度までで十分なことが多く、それ以上に増やしても日中の眠気や副作用が増えやすくなります。
ベンゾ・Z薬からの切り替えの「橋渡し」
減薬のときにも、トラゾドンは橋渡し役として使えます。ただし、大切な注意点があります。トラゾドンはベンゾジアゼピン系とは仕組みが異なり、ベンゾの身体依存そのものを肩代わりする薬ではありません。反跳性不眠を和らげる補助にはなりますが、離脱症状を防ぐものではないため、ベンゾ・Z薬本体は、前項の置換漸減法に沿ってゆっくり減らす必要があります。減薬が終わったあと、不要であればトラゾドン自体も少しずつ減らしていきます。
注意点(特に高齢者・循環器・多剤併用の方)
α1遮断による起立性低血圧やふらつきは、高齢の方では転倒につながるため、少量から始めます。軽度のQT延長作用があるので、他のQT延長薬を使っている方は注意が必要です。まれに持続勃起症の報告もあります。また、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬と併用するとセロトニン症候群のリスクが上がります。この点からも、複数の向精神薬を併用中の方は、自己判断で足さず、まず処方元の主治医にご相談ください。
睡眠薬を飲む前に見直したい睡眠衛生10項目
毎日の生活習慣を整えることは、不眠症の改善にとても重要です。
- 毎日同じ時間に起きる
- 朝起きたら日光を浴びる
- 日中に適度な運動をする
- 昼寝は20〜30分以内にする
- 夕方以降のカフェインを控える
- 就寝前の飲酒を控える
- 寝る1時間前からスマートフォンやタブレットを見ない
- 寝室は暗く静かな環境に保つ
- ベッドは「眠るための場所」とする
- 眠れないときは一度ベッドを離れ、眠気を感じてから戻る
薬だけに頼らず、生活習慣の改善や認知行動療法(CBT-I)と組み合わせることで、より良い睡眠が期待できます。
心臓病と睡眠は深く関係しています
睡眠不足や不眠症は、「眠れない」という症状だけでなく、高血圧・心房細動・心不全・心筋梗塞などの循環器疾患とも深く関係しています。
また、「睡眠薬を飲んでも眠れない」「昼間に強い眠気がある」「いびきを指摘される」という方では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることも少なくありません。SASは高血圧・心房細動・心不全の原因や悪化因子となることが知られており、適切な診断と治療が重要です。
福本医院では、不眠症の診療だけでなく、睡眠時無呼吸症候群の検査(簡易PSG)やCPAP治療にも対応しています。「最近眠りが浅い」「睡眠薬を見直したい」「夜中に何度も目が覚める」「昼間の眠気が強い」といった方は、お気軽にご相談ください。
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よくあるご質問(FAQ)
Q1. 一番よく効く睡眠薬はどれですか?
「一番効く薬」はありません。寝つきが悪いのか、中途覚醒が多いのか、高齢者かどうかなどによって、適した薬は異なります。
Q2. デエビゴとベルソムラはどちらがおすすめですか?
どちらもDORAですが、一般にデエビゴは中途覚醒・早朝覚醒に、ベルソムラは寝つきと中途覚醒の両方に使われます。
Q3. クービビックの特徴は?
翌朝への持ち越しが比較的少ないのが特徴で、日中の眠気を避けたい方にも選択肢となります。
Q4. ボルズィはどんな人に向いていますか?
半減期が短く、翌朝への影響をできるだけ少なくしたい方に適した選択肢です。ただし、服用後に眠気が残る場合は運転など危険を伴う作業は避けてください。
Q5. マイスリーは危険ですか?
適切に使えば有効な薬ですが、長期間連用すると依存性や転倒リスクが高まることがあります。
Q6. ロゼレムは効きませんか?
ロゼレムは自然な眠気を促す薬です。強い催眠作用はありませんが、依存性がなく、高齢の方にも使いやすい薬です。
Q7. 睡眠薬は一生飲み続けても大丈夫ですか?
症状によっては長期間必要な場合もありますが、定期的に見直し、減量や中止が可能かを主治医と相談することが大切です。
Q8. CPAP治療中でも睡眠薬は飲めますか?
はい、必要に応じて併用することがあります。薬の種類によって注意点が異なるため、自己判断せず主治医にご相談ください。
Q9. お酒と一緒に飲んでもいいですか?
アルコールと睡眠薬の併用は、過度の眠気・転倒・呼吸抑制の危険が高まるため避けてください。
Q10. 睡眠薬を飲んでも眠れない場合は?
睡眠時無呼吸症候群やうつ病、むずむず脚症候群など、別の病気が隠れていることがあります。薬を増やす前に原因を確認することが重要です。
Q11. 睡眠薬を飲むと癖になりますか?
ベンゾジアゼピン系やZ薬では、長期間服用すると依存が生じることがあります。ロゼレムやDORAでは依存性は比較的少ないとされています。
Q12. 睡眠薬は毎日飲んでも大丈夫ですか?
症状によっては毎日服用することもありますが、定期的に効果や副作用を確認し、必要に応じて減量や中止を検討します。
Q13. 睡眠薬を飲むと認知症になりますか?
睡眠薬が認知症の原因になるとは証明されていません。ただし、ベンゾジアゼピン系やZ薬の長期使用では認知機能への影響が懸念されるため、必要最小限の使用が推奨されています。
Q14. 睡眠薬を飲んでいると運転できますか?
薬によって注意事項が異なります。翌朝まで眠気が残る場合があるため、服用後の運転や危険を伴う作業は、添付文書や医師・薬剤師の指示に従ってください。
Q15. 市販の睡眠改善薬との違いは?
市販薬の多くは抗ヒスタミン薬で、一時的な不眠に用いられます。医療用睡眠薬は作用の仕組みが異なり、不眠症のタイプに応じて選びます。
参考:主な睡眠薬の比較表
ご自身が服用している薬を確認したい方向けに、主な睡眠薬を一覧にまとめました。星印は作用のイメージを分かりやすく示した目安であり、優劣を示すものではありません。効果や副作用には個人差があり、実際の選択は医師と相談して決めます。
| 分類 | 薬剤(一般名) | 寝つき | 中途覚醒 | 依存性 | 高齢者 |
|---|---|---|---|---|---|
| BZD | ハルシオン(トリアゾラム) | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
| BZD | レンドルミン(ブロチゾラム) | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ |
| BZD | ユーロジン(エスタゾラム) | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ |
| Z薬 | マイスリー(ゾルピデム) | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| Z薬 | アモバン(ゾピクロン) | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| Z薬 | ルネスタ(エスゾピクロン) | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
| メラトニン | ロゼレム(ラメルテオン) | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | なし | ★★★★★ |
| DORA | ベルソムラ(スボレキサント) | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 少ない | ★★★★☆ |
| DORA | デエビゴ(レンボレキサント) | ★★★★☆ | ★★★★★ | 少ない | ★★★★★ |
| DORA | クービビック(ダリドレキサント) | ★★★★★ | ★★★★☆ | 少ない | ★★★★☆ |
| DORA | ボルズィ(ボルノレキサント) | ★★★★★ | ★★★☆☆ | 少ない | ★★★★☆ |
DORA4剤の「翌朝への影響」の少なさは、目安としてボルズィ、クービビック、ベルソムラ、デエビゴの順とされています(半減期や臨床試験で報告された持ち越しの少なさを参考にした一般的な目安で、個人差があります)。
近年の不眠症治療では、依存性の少ないロゼレムやDORAが用いられることが多くなっています。特に高齢の方では、転倒や認知機能への影響を考え、これらを優先することが望ましいとされています。
まとめ
良い睡眠は、単なる休息ではありません。睡眠中には脳のエネルギーバランスが整えられ、記憶の整理や老廃物の排出が行われます。血圧・血糖・免疫など全身の健康を保つうえでも、睡眠は欠かせない役割を担っています。
一方で、不眠症が続くと、高血圧・心筋梗塞・脳卒中・糖尿病・認知症・うつ病などのリスクが高まることが分かっています。
睡眠薬もこの10年で大きく進歩し、従来のベンゾジアゼピン系やZ薬だけでなく、ロゼレム・ベルソムラ・デエビゴ・クービビック・ボルズィといった、依存性が少なく自然な睡眠を目指す薬が使えるようになっています。
大切なのは、「なぜ眠れないのか」を一緒に考えることです。寝つきが悪い方、中途覚醒が多い方、高齢の方、長年睡眠薬を飲んでいる方には、それぞれに適した方法があります。心療内科で複数の薬を併用されている方は、まず処方元の主治医にご相談ください。
福本医院では、循環器専門医の立場から、睡眠と心臓・血圧・生活習慣病との関係も含めて総合的に診療しています。「睡眠薬を見直したい」「最近眠りが浅くなった」「夜中に何度も目が覚める」といったお悩みは、お気軽にご相談ください。
参考文献
1. Sarnataro R, et al. Mitochondrial origins of the pressure to sleep. Nature. 2025.
睡眠欲求が脳内ミトコンドリアの代謝ストレスと電子漏出によって生じる可能性を示した研究です。
https://www.nature.com/articles/s41586-025-09261-y
2. Itani O, et al. Short sleep duration and health outcomes: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Sleep Medicine. 2017;32:246-256.
睡眠不足と心血管疾患・糖尿病・肥満・死亡率との関連を包括的に解析したメタ解析です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27743803/
3. Spiegel K, et al. Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Ann Intern Med. 2004;141(11):846-850.
睡眠不足が食欲調節ホルモンに影響し、肥満や2型糖尿病リスクの増加につながることを示した研究です。
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/0003-4819-141-11-200412070-00008
4. Lim ASP, et al. Sleep fragmentation and the risk of incident Alzheimer’s disease and cognitive decline in older persons. Sleep. 2013;36(7):1027-1032.
睡眠の質の低下が認知機能低下やアルツハイマー病発症リスクと関連することを示した前向き研究です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23814339/
5. Kambe D, et al. Pharmacokinetics, pharmacodynamics and safety profile of vornorexant (TS-142) in healthy Japanese participants. Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2023;133:576-591.
ボルノレキサント(ボルズィ)の薬物動態・安全性・有効性を検討した第Ⅰ相試験です。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/bcpt.13930
6. 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の依存・離脱症状・減薬方法についてまとめられた公式マニュアルです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000842887.pdf
7. Jaffer KY, et al. Trazodone for Insomnia: A Systematic Review. Innov Clin Neurosci. 2017;14(7-8):24-34.
低用量トラゾドン(25〜100mg)の不眠症に対する有効性と安全性を検討した系統的レビューです。副作用は用量依存性で、最も多いのは眠気とされています。
https://innovationscns.com/trazodone-insomnia-july-august-2017/
8. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン(厚生労働科学研究班・日本睡眠学会、2013年)
不眠症の薬物療法・非薬物療法と、減薬・休薬(出口戦略)を体系的にまとめた国内の代表的ガイドラインです。単剤・常用量を原則とし、漫然とした長期使用や多剤併用を避けることが推奨されています。
https://jssr.jp/files/guideline/suiminyaku-guideline.pdf
福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。
心斎橋、長堀橋、本町、四ツ橋から徒歩圏内にあり、新町・堀江・立売堀をはじめ大阪市西区からも多くの患者様にご来院いただいております。
動悸、不整脈、胸痛、息切れ、高血圧などでお困りの方は、心電図、ホルター心電図、心エコー検査などを活用しながら診療を行っております。気になる症状がある方や、健康診断で異常を指摘された方はお気軽にご相談ください。
この記事の監修
福本医院
院長 福本 淳
内科・循環器内科
平成9年 神戸大学医学部医学科卒
医学博士
循環器専門医(登録番号15490)
外国人患者様へのご案内|完全予約制・日本語での診療について / Information for International Patients






















