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「高血圧の基準が130/80に下がった」は誤りです|健診の判定値・診断基準・治療目標のちがい

■ この記事のポイント
- 2025年のガイドライン改訂で「高血圧の基準が130/80mmHgに下がった」という説明が広まりましたが、これは誤りです
- 高血圧と診断する基準は、診察室血圧140/90mmHg以上・家庭血圧135/85mmHg以上で、前の版から変わっていません
- 変わったのは、治療を始めたあとに目指す「目標値」のほうです
- ただし130〜139/80〜89mmHgは「高値血圧」で、正常ではありません。生活を見直す段階です
- 健診の結果票の判定区分は、ガイドラインの区分ともまた別のもので、切れ目が一致していません

この記事は2026年8月時点の情報です。日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(2025年8月29日発行)に基づいています。
「高血圧の基準が130/80mmHgに下がった」という説明は誤りです
2025年8月に日本高血圧学会の『高血圧管理・治療ガイドライン2025』が発刊されて以降、「高血圧の基準が130/80mmHgに引き下げられた」「130を超えたら高血圧と診断される」といった説明を見かけるようになりました。
これは誤りです。
日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の表5-6「異なる測定法における高血圧基準」では、高血圧と診断する基準は次のとおりとされています。前の版(2019年)から変わっていません。
測定方法 収縮期血圧 拡張期血圧 診察室血圧 140mmHg以上 かつ/または 90mmHg以上 家庭血圧 135mmHg以上 かつ/または 85mmHg以上 では130/80mmHgとは何かというと、治療を始めたあとに目指す目標値です。診断の線引きと、治療で目指す値は、別のものです。
ただし、ここで安心しないでください。130〜139/80〜89mmHgは「高値血圧」という区分で、高血圧ではありませんが、正常でもありません。この範囲でも血管への負担はすでに始まっており、生活を見直す対象になります。「140/90未満だから何もしなくてよい」ということではありません。
まず見ていただきたいのは、結果票に書かれた実際の数値です。診察室で測った値が140/90mmHg以上(ご家庭で測った値なら135/85mmHg以上)かどうか。ここが最初の分かれ目になります。
なお、米国の2017年ACC/AHAガイドラインは高血圧の定義そのものを130/80mmHg以上に引き下げていますが、これは米国の基準です。日本の基準とは異なります。世界のガイドラインの違いについては高血圧はどこまで下げるべき?で詳しく解説しています。
ご自身の数値がどこに当たるか判断がつかない場合は、結果票をお持ちのうえでご相談ください。
高血圧と診断する基準は、診察室140/90mmHg以上・家庭135/85mmHg以上です
もう少し細かく見ると、血圧は次のように区分されています(同ガイドライン 表5-5「成人における血圧値の分類」)。
分類 診察室血圧 家庭血圧 正常血圧 120未満 かつ 80未満 115未満 かつ 75未満 正常高値血圧 120〜129 かつ 80未満 115〜124 かつ 75未満 高値血圧 130〜139 かつ/または 80〜89 125〜134 かつ/または 75〜84 I度高血圧 140〜159 かつ/または 90〜99 135〜144 かつ/または 85〜89 II度高血圧 160〜179 かつ/または 100〜109 145〜159 かつ/または 90〜99 III度高血圧 180以上 かつ/または 110以上 160以上 かつ/または 100以上 出典:日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会 編『高血圧管理・治療ガイドライン2025』表5-5「成人における血圧値の分類」。単位はmmHg。「かつ」は収縮期・拡張期の両方が当てはまる場合、「かつ/または」はどちらか一方でも当てはまればその分類になる、という意味です。原典の表記をそのまま用いています。なお、この記事では収縮期だけが高い「(孤立性)収縮期高血圧」の行を省いています。
収縮期130〜139mmHg、または拡張期80〜89mmHg(あるいはその両方)は「高値血圧」という区分で、高血圧ではありません。ただし「問題がない」という意味でもなく、生活を見直す段階に来ているという位置づけです。
家庭血圧のほうが重要です
診察室での血圧は、緊張などで一時的に高くなることがあります。日常の状態をより正確に反映するのは家庭血圧です。同ガイドラインでも、家庭血圧のほうが将来の病気の予測に優れていることが、複数の国内研究から報告されています。
測り方は、朝(起床後1時間以内、排尿後、朝食と服薬の前)と、晩(就寝前)の1日2回(2つの機会)。いずれも椅子に座って1〜2分ほど落ち着いてから測ります。1つの機会につき2度測って、その平均をとるのが原則です。
すでにお薬を飲んでいる方へ。測った数値を見て、ご自身の判断でお薬を中止したり、量を増やしたり減らしたりすることは避けてください。ガイドラインにも、家庭血圧の測定にあたっての注意として明記されています。記録は主治医にお見せいただくのがいちばん役に立ちます。
なお、腕時計型などのカフを使わない血圧計については、同ガイドラインは現時点では診断や治療の目的での使用を推奨していません。
測り方や数値の読み方で迷われたら、記録をお持ちください。一緒に確認します。
130/80mmHgは「治療を始めたあとに目指す値」です
『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の表6-3「降圧目標」では、目指す値が次のように示されています。
- 診察室血圧 130/80mmHg未満
- 家庭血圧 125/75mmHg未満
これは、高血圧と診断されて治療を始めた方が目指す値です。健診でこの数値を超えていたからといって、すぐに薬が必要という意味ではありません。まだ治療を始めていない方が、自己流でこの値まで下げようとするものでもありません。
2025年の改訂で変わったのは、この目標値のほうです。前の版では、75歳以上の方や脳血管障害・慢性腎臓病のある方などについて140/90mmHg未満という別の目標が設けられていましたが、今回はこの区別がなくなり、原則として年齢や持病によらず同じ目標に統一されました。
「高血圧の基準が130/80mmHgに下がった」という説明は、この目標値の変更を、診断基準の変更と取り違えたものだと考えられます。
一方で、下げすぎにも注意が必要です
同ガイドラインは、収縮期血圧を120mmHg未満まで下げる場合には、過度の降圧による有害事象に注意するよう述べています。降圧の過程では、立ちくらみやめまい、倦怠感といった症状、起立性低血圧、腎機能への影響、電解質の異常などに注意が必要です。
75歳以上の方の目標について
75歳以上の方については、通院やご自身の身のまわりのことがどこまでできるかという生活の状態に応じて、目標を個別に調整することが示されています。年齢だけで一律に緩めるのではなく、まず標準の目標を目指したうえで、状態に応じて調整するという考え方です。
この記事では、その調整後の具体的な数値をあえて書いていません。体力、持病、ふらつきの有無、服用しているお薬、生活の状況によって、安全な目標が一人ひとり大きく異なるためです。一律の数値をお示しすると、「この数字を超えているから薬を増やそう」「下回ったから減らそう」という自己調整につながり、かえって危険になります。
ご高齢のご家族の血圧が気になる方は、数値だけを調べるのではなく、主治医に「この方の目標はいくつですか」と直接お尋ねください。これがいちばん確実で安全な方法です。
なぜ「基準が下がった」という誤解が広まったのでしょうか
降圧目標が130/80mmHg未満に統一されたこと自体は事実です。この目標値の変更だけが強調されて伝わり、「診断基準」との区別が抜け落ちたことが、誤解の広まった経緯だと考えられます。
日本高血圧学会も、2024年5月24日に「特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を」という文書を公表し、この誤解に注意を促しています。同学会はそのなかで、健診で血圧が高かった場合の対応を次のように整理しています。
- 収縮期160mmHg以上または拡張期100mmHg以上(II度以上)… すぐに医療機関を受診する
- 収縮期140〜159mmHgまたは拡張期90〜99mmHg(I度高血圧)… 生活習慣を改善し、改善しなければ受診する
ただし、I度高血圧であっても、脳心血管病、心房細動、慢性腎臓病、糖尿病、危険因子の集積がある場合は、至急かかりつけの医療機関を受診すべきであるとされています。
ご自身がどれに当たるか判断がつかない場合は、結果票をお持ちのうえでご相談ください。
健診の結果票の区分は、ガイドラインの区分とも別のものです
ここも混同されやすいところです。血圧の数値をめぐっては、性格の異なる3つのものさしが同時に使われています。
1つめは、健診の結果票の判定区分です。日本人間ドック・予防医療学会の「判定区分(2026年4月1日改定)」では、血圧(2回測定:平均値)は次のように分けられています。
判定 収縮期血圧 拡張期血圧 A(異常なし) 129以下 84以下 B(軽度異常) 130〜139 85〜89 C(要再検査・生活改善) 140〜159 90〜99 D(要精密検査・治療) 160以上 100以上 2つめは、高血圧の診断基準(診察室140/90mmHg以上)。3つめは、治療で目指す目標値(130/80mmHg未満)です。
注意していただきたいのは、この3つは切れ目が一致していないということです。
ずれが生じるのは、下の血圧(拡張期)の80〜84mmHgの帯です。上の血圧(収縮期)の区切りは、健診の判定区分もガイドラインも130mmHgで一致しています。しかし下の血圧は、健診の判定区分が85mmHg、ガイドラインが80mmHgで分かれます。
たとえば血圧が125/82mmHgだった場合。上も下も健診の判定区分では「A(異常なし)」の範囲に入りますが、ガイドラインの分類では下の血圧が82mmHgであるため「高値血圧」にあたります。
結果票の判定は、健診機関によって区分の呼び方や区切りが異なることもあります。「異常なし」と書かれていても、下の血圧が80mmHgを超えている場合は、生活を見直す段階に来ていると考えていただくのが安全です。
結果票の判定区分そのものの読み方は、健康診断の受け方と結果票の見方で解説しています。
判定と数値が食い違って見えるときこそ、一度ご相談ください。
受診できるかどうかは、意志の強さだけの問題ではありません
高血圧は自覚症状がほとんどないまま血管に負担をかけ続けます。健診で指摘された時点で体調に変化がないのは、むしろ当然のことです。だからこそ、後回しにされやすい病気です。
このことに関連する研究があります。沖縄県の中小規模事業所を対象とした琉球大学の研究では、健診で新たに高血圧が見つかった方2,906人(1,366事業所、前年に高血圧の既往がなく降圧薬も服用していない方)を追跡し、職場に健康管理の担当者がいるかどうかと、健診後1か月以内の受診率との関連が報告されています。
1か月以内に受診した方は、担当者がいない事業所で2.00%、いる事業所で2.97%でした。全体では統計学的に有意な差とはいえませんでした(調整オッズ比1.74、95%信頼区間0.94〜3.22)。一方、収縮期150mmHg以上または拡張期95mmHg以上と血圧がより高かった層では、担当者がいない事業所で2.29%、いる事業所で4.97%と差がみられました(調整オッズ比3.05、95%信頼区間1.12〜8.29)。
ひとつの観察研究であり、これだけで因果を結論づけることはできません。それでも示唆されるのは、受診できるかどうかは本人の意志の強さだけで決まるのではなく、背中を押してくれる仕組みがあるかどうかにも左右されるということです。また、いずれの数値も受診率そのものは数%にとどまっており、健診で高血圧を指摘された方の多くが、その後受診していないという現状も示しています。
職場にそうした担当者がいない方も多いと思います。この記事が、その役割を果たせればと考えています。健診で血圧を指摘されたなら、今が動くタイミングです。朝と晩の家庭血圧を1週間ほど記録して、結果票と一緒にお持ちください。それだけで、診療の精度は大きく上がります。
受診の目安
症状がなくても相談したい場合
- 健診で140/90mmHg以上を指摘された
- ご家庭で測る血圧が135/85mmHg以上の状態が続いている
- 健診で「高値血圧」「要注意」などと指摘され、判断がつかない
- いびきや日中の強い眠気があり、血圧も高い
症状がある場合
- 強い頭痛、めまい、動悸などをともなう血圧の上昇がある
- 薬を飲んでいるのに血圧が下がりにくい
- 血圧計が不整脈などの警告表示を出す
受診の前に、朝と晩の家庭血圧を数日から1週間ほど記録し、結果票と一緒にお持ちいただくと、診断の助けになります。
よくある質問
Q. 血圧が125/82mmHgでした。健診は「異常なし」でしたが、大丈夫ですか?
A. 健診の判定区分では「異常なし」に入りますが、ガイドラインの分類では「高値血圧」にあたります。下の血圧の区切りが、健診では85mmHg、ガイドラインでは80mmHgと異なるためです。高血圧ではありませんが、正常でもなく、生活を見直す段階です。まずはご家庭で1週間ほど測ってみてください。平均が135/85mmHg以上になるようであれば高血圧にあたりますので、受診をおすすめします。それ未満であっても、ご家庭で測った血圧が125/75mmHg以上であれば、ガイドラインの分類では「高値血圧」にあたります(表5-5)。減塩や運動を始める時期です。判断に迷われたら、記録をお持ちのうえご相談ください。
Q. 目標が130/80mmHg未満なら、私もそこまで下げないといけませんか?
A. 130/80mmHg未満は、高血圧と診断されて治療を始めた方が目指す値です。まだ高血圧と診断されていない段階の方が、薬で無理に下げる値ではありません。また、下げすぎにも注意が必要で、収縮期120mmHg未満まで下がる場合は別の配慮が要ります。ご自身の目標は主治医とご相談ください。
Q. 高齢の家族がいます。年齢が高ければ目標は緩くてよいのでは?
A. 2025年の改訂では、年齢による別目標は設けられなくなりました。ただし75歳以上の方については、通院や身のまわりのことがどこまでできるかという生活の状態に応じて、目標を個別に調整することが示されています。適切な目標は体力・持病・生活状況によって一人ひとり異なるため、この記事では具体的な数値を挙げていません。主治医に「この方の目標はいくつですか」と直接お尋ねいただくのが確実です。
まとめ
- 「高血圧の基準が130/80mmHgに下がった」という説明は誤りです
- 日本の診断基準は診察室140/90mmHg以上・家庭135/85mmHg以上で、変わっていません
- 130/80mmHg未満は、治療を始めたあとに目指す目標値です
- ただし130〜139/80〜89mmHgの「高値血圧」も正常ではなく、生活を見直す段階です
- 健診の判定区分、診断基準、治療目標は、それぞれ切れ目が異なります
健康診断で血圧を指摘された方、ご自身の数値の意味が分かりにくい方は、結果票とご家庭の血圧の記録をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。
参考文献
1. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)
ガイドライン名 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)
編集 日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会
発行 特定非営利活動法人日本高血圧学会、2025年8月29日(制作・発売:ライフサイエンス出版)
リンク https://www.jpnsh.jp/guideline.html
解説 本記事の血圧分類(表5-5)、異なる測定法における高血圧基準(表5-6)、降圧目標(表6-3)、高齢者のカテゴリー分類(表10-4)の出典です。2. JSH2025 英語版全文
論文名 The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)
著者 Ohya Y, et al.
掲載誌 Hypertension Research. 2026;49(1):9-235.
DOI 10.1038/s41440-025-02462-y
リンク https://www.nature.com/articles/s41440-025-02462-y
解説 上記ガイドラインの英語版全文で、無料で全文を読むことができます。表・図の番号は書籍版と共通です。3. 特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を
発行 日本高血圧学会、2024年5月24日
リンク https://jpnsh.jp/data/202405-level.pdf
解説 受診勧奨判定値が変更されていないことについての学会の公式見解です。II度以上とI度高血圧で対応が異なることが示されています。4. 判定区分(2026年4月1日改定)
発行 日本人間ドック・予防医療学会
掲載ページ 検査表の見方
リンク https://www.ningen-dock.jp/ningendock/wp-content/uploads/2026/02/2026hanteikijun.pdf
解説 本記事の健診結果票の判定区分(A〜D)の出典です。同学会の判定区分にはこのほかE(治療中)があります。5. 職場の健康管理担当者と、高血圧を指摘されたあとの受診
論文名 Healthcare administrators and hypertension at small-to-medium worksites in Okinawa, Japan
著者 Kudaka S, Sakima A, Nakamura K.
掲載誌 Hypertension Research. 2025;48(1):168-179.(オンライン公開 2024年11月8日)
DOI 10.1038/s41440-024-01979-y
リンク https://www.nature.com/articles/s41440-024-01979-y
解説 健診で新たに高血圧が見つかった方の、1か月以内の受診率と、職場の健康管理担当者の有無との関連を報告した観察研究です。 -
「これって救急?」今すぐ119番を考える症状と、迷ったときの相談先
この記事のポイント
- 健診の数値の異常とは別に、症状そのもので今すぐの対応が必要な場面があります
- 「突然始まった」「普段と明らかに違う」「急速に悪化している」が重要な手掛かりです
- ただし、症状が強くなくても、胸の圧迫感・息苦しさ・顔や手足の片側の異常・言葉の異常は見逃さないでください
- 迷ったときの相談先(#7119、Q助など)も知っておくと安心です
- 救急車を呼ぶことは、大げさなことではありません


はじめに:迷ったときの考え方
健診の数値は、症状が出る前の段階で異常を見つけるためのものです。一方で、この記事で紹介するのは、数値とは関係なく「今どう動くか」を判断すべき症状です。まず、次のように整理して考えると迷いにくくなります。
- すぐに119番:呼吸や意識の異常、後で述べるFASTに当てはまる、疑わしい胸の痛み、突然の胸や背中の激痛、血を吐く・真っ黒い便、突然の激しい腹痛など
- 判断に迷うとき:命に関わる症状に当てはまらないか迷う場合は、利用できる地域では救急安心センター「#7119」、または全国版救急受診アプリ「Q助」で確認できます
なお、この記事で紹介するのは、救急要請を考える症状の代表例です。ここに挙げていない症状でも、呼吸ができない、意識がおかしい、急速に悪化している場合は、迷わず119番に連絡してください。
胸・背中・呼吸の危険信号
胸の中央が締め付けられる、圧迫されるように痛み、その状態が2〜3分続く場合や、冷や汗・吐き気・息苦しさを伴う場合、痛みが顎・肩・背中へ広がる場合は、心筋梗塞などの可能性があります。ためらわず119番に連絡してください。
心筋梗塞は、必ずしも激しい胸の痛みになるとは限りません。高齢の方、糖尿病のある方、女性などでは、息切れ・吐き気・冷や汗・強いだるさだけのこともあります。「これまでにない強さ」だけを基準にせず、いつもと違う胸の圧迫感や息苦しさがあれば注意してください。
また、突然始まった胸や背中の激しい痛みで痛む場所が移っていく場合や、急に息が苦しくなった・息苦しくて会話が最後まで続かない・唇の色が紫色になった・横になると呼吸できないほど苦しい場合も、心臓や肺の緊急性の高い病気のサインであることがあります。いずれも、ためらわず119番に連絡してください。
脳の危険信号:「FAST(ファスト)」で確認する
脳卒中(脳梗塞・脳出血)は、発症からの時間が治療の選択肢を左右する病気です。日本脳卒中学会は、症状にいち早く気づくための合言葉として「FAST」を紹介しています。
- Face(顔):片側の顔が下がる、ゆがむ
- Arm(腕):片方の腕に力が入らない、上がらない
- Speech(言葉):ろれつが回らない、言葉が出てこない
- Time(時間):これらに気づいたら、すぐに行動を。発症時刻の確認も重要です
これらのうち1つでも当てはまれば、脳卒中を疑い119番に連絡してください。
FASTに当てはまらなくても、突然、見え方がおかしくなった(見えにくい・物が二重に見える)、支えなしでは立てないほど急にふらついた場合は、脳卒中の可能性があります。また、これまで経験したことのないような突然の激しい頭痛も、くも膜下出血などの危険なサインであることがあります。いずれも119番に連絡してください。
意識・けいれんの危険信号
呼びかけても反応がない、呼吸がおかしい、けいれんが続く・繰り返す、けいれんの後も意識が戻らない、初めてのけいれん、けいれんが5分以上続く場合は、直ちに119番に連絡してください。胸痛・息苦しさを伴って気を失った場合も同様です。
反応がなく、普段どおりの呼吸をしていない場合は、近くにいる人にAEDを持ってきてもらい、119番の通信指令員の指示に従って胸骨圧迫を始めます。AEDが到着したら音声案内に従って使用してください。
意識を失ったときに転倒した、嘔吐している、けいれんしているなど、ほかに気づいたことがあれば、119番の通信指令員に伝えてください。呼吸の状態を判断できない場合も、電話口で指示を受けてください。
吐血・黒色便・激しい腹痛
次のような場合は、消化管からの出血など緊急性の高い病気の可能性があります。119番に連絡してください。
- 血を吐いた
- 便に血が混ざる、または真っ黒でタール状の便(下血)が出た
- 突然の激しい腹痛が続く
とくに、ふらつき・冷や汗・意識が遠のく感じを伴うときは、ためらわないでください。
症状が消えても119番を考える場合
脳卒中の症状は、一時的に現れてすぐに治まることがあります(一過性脳虚血発作)。顔のゆがみ、片腕の脱力、言葉の異常などが数分で消えても、その後に本格的な脳卒中を起こすリスクが高い状態です。症状が消えた時点で安全になったとは限りません。発症時刻を確認し、自分で運転せず、119番に連絡してください。
迷ったときの相談先(#7119・Q助)
「救急車を呼ぶべきか」迷い、上に挙げたような緊急性の高い症状に当てはまらない場合は、利用できる地域では救急安心センター「#7119」に電話で相談できます(医師・看護師などが対応します)。実施している地域や受付時間は地域によって異なり、全国一律のサービスではないため、消防庁または自治体の最新情報をご確認ください。#7119が利用できない地域では、全国版救急受診アプリ「Q助」や、自治体の救急相談窓口も参考になります。
ただし、呼吸が苦しい、意識がおかしい、FASTに当てはまる、疑わしい胸の痛みがある場合などは、相談先を探すよりも先に、迷わず119番へ連絡してください。相談先を探している間に通報が遅れることは避けてください。
救急車を呼ぶことは、大げさに振る舞うことではありません。時間が治療を左右する症状では、本人やご家族だけで判断し続けないことが大切です。
よくある質問
Q. 症状が軽い気がしますが、それでも救急車を呼んでいいですか?
A. 「突然始まった」「普段と明らかに違う」「急速に悪化している」と感じたら、遠慮せず119番を検討してください。強さがそれほどでなくても、胸の圧迫感、息苦しさ、顔や手足の片側の異常、言葉の異常があるときは、強さだけで判断しないでください。
Q. 自分で車を運転して病院へ行ってもよいですか?
A. 脳卒中や心筋梗塞などが疑われる症状では、移動の途中で悪化する可能性があります。自分で運転せず、119番に連絡してください。
Q. 夜間や休日に症状が出た場合はどうすればいいですか?
A. 緊急性が高いと感じる場合は、時間帯にかかわらず119番へ連絡してください。判断に迷う程度であれば、利用できる地域の#7119や、Q助、自治体の夜間休日の診療案内を確認してください。
Q. 一度症状が治まりました。それでも対応が必要ですか?
A. 特に脳卒中の症状は、一時的に治まった後に本格的な発作を起こすことがあります。治まったからと安心せず、119番に連絡してください。
まとめ
健診の数値は、症状が出る前に異常を見つけるためのものです。一方で、この記事で紹介した症状は、数値とは関係なく「今すぐの行動」が必要になるサインです。「突然始まった」「普段と違う」「急速に悪化している」を手掛かりに、呼吸・意識の異常やFAST、疑わしい胸の痛み、突然の胸や背中の激痛、血を吐く・真っ黒い便などには119番、判断に迷うときは#7119やQ助を利用してください。救急車を呼ぶことは、大げさなことではありません。
参考文献
- 総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう(成人版リーフレット)」https://www.fdma.go.jp/publication/portal/post9.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-006
- 日本脳卒中学会「脳卒中の予防・発症時の対応」https://www.jsts.gr.jp/common/asset/pdf/onset.pdf
- 日本神経学会「てんかん診療ガイドライン2018」第8章 てんかん重積状態https://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/tenkan_2018_08.pdf
- 日本救急医療財団心肺蘇生法委員会 監修『救急蘇生法の指針2020(市民用)』https://qqzaidan.jp/wp-content/uploads/doc-shishin/shishin2020_shimin_hp.pdf
- American Heart Association / American Stroke Association「Heart Attack, Stroke and Cardiac Arrest Symptoms」https://www.heart.org/en/about-us/heart-attack-and-stroke-symptoms
- American Stroke Association「Stroke Symptoms(BE-FAST)」https://www.stroke.org/en/about-stroke/stroke-symptoms
- 米国疾病対策センター(CDC)「First Aid for Seizures」https://www.cdc.gov/epilepsy/first-aid-for-seizures/index.html
- 総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)」https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html /「全国版救急受診アプリ Q助」https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate003.html
福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。
大阪メトロ御堂筋線・心斎橋駅から徒歩2分、なんば(難波)からは1駅です。長堀橋・本町・四ツ橋からも徒歩圏内で、新町・堀江・立売堀をはじめ大阪市西区からも多くの患者様にご来院いただいております。
動悸、不整脈、胸痛、息切れ、高血圧などでお困りの方は、心電図、ホルター心電図、心エコー検査などを活用しながら診療を行っております。気になる症状がある方や、健康診断で異常を指摘された方はお気軽にご相談ください。
この記事の監修
福本医院
院長 福本 淳
内科・循環器内科
平成9年 神戸大学医学部医学科卒
医学博士
循環器専門医(登録番号15490)
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健康診断の尿検査でわかること|尿蛋白・尿潜血・尿糖の意味と受診の目安
■ この記事のポイント
- 尿検査では主に「尿蛋白」「尿潜血」「尿糖」を調べます
- 陽性でも、検査項目によっては体調や運動、月経、服薬などの影響を受けることがあります
- 尿蛋白と尿潜血が同時に陽性の場合は、腎臓の病気の可能性がやや高まります
- 尿潜血は、年齢・喫煙歴・赤血球数などを総合して精査の必要性を判断します
- 肉眼で分かる血尿や、繰り返す陽性は、放置せず医療機関で確認しましょう

尿検査で調べていること
健康診断の尿検査は、試験紙を尿に浸して色の変化を見る簡便な検査で、主に「尿蛋白」「尿潜血」「尿糖」の3項目を調べます。血液検査と違って痛みがなく、体への負担がほとんどないまま、腎臓や尿路、糖代謝の状態を知ることができる検査です。健診結果票全体の見方についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
尿蛋白が陽性だったら
尿蛋白は、本来血液中にとどまるはずのタンパク質が尿に漏れ出している状態です。腎臓の糸球体(血液をろ過する部分)に何らかの負担がかかっているサインのことがあります。
尿蛋白が陽性でも、必ずしも腎臓の病気とは限りません。小児〜若年者では、立った姿勢が続いたときにだけ蛋白が出る「起立性蛋白尿」がよく見られ、病的な意味を持たないことがほとんどです。ただし成人になってから新たに蛋白尿が持続する場合は、起立性蛋白尿と自己判断せず、評価を受けることが勧められます。発熱時や激しい運動の直後にも、一時的に陽性になることがあります。
繰り返し陽性が出る場合、医療機関では尿中のタンパクやアルブミンを数値で測る検査を行い、腎機能や血圧などと合わせて評価することがあります。腎機能の数値の見方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
尿潜血(尿潜血反応が陽性)と言われたら
尿潜血は、尿中の血液成分(ヘモグロビンなど)を試験紙で調べる検査です。陽性だからといって、必ずしも尿に赤血球が増えているとは限らず、医療機関では顕微鏡で尿を調べ(尿沈渣)、実際に赤血球が増えているかを確認することがあります。
原因は、腎臓(糸球体腎炎など)、尿管や膀胱の結石、膀胱炎などの炎症、前立腺の病気(男性)など多岐にわたります。一時的な原因や良性の病気によることもありますが、まれに膀胱や腎臓などの腫瘍が背景にあることもあります。海外の泌尿器科の指針では、年齢・性別・喫煙量(本数×年数で計算する累積量)・尿中の赤血球数・肉眼的血尿の既往などを組み合わせて、詳しい検査の必要性を判断するとされています。こうした基準は近年も見直しが続いているため、年齢や喫煙歴の有無だけで自己判断せず、繰り返し陽性が出る場合は医師に相談してください。
女性の場合、月経の影響で一時的に陽性となることもあります。月経中や直後の検査であれば、期間をおいて再検査することも検討します。
尿糖が陽性だったら
尿糖は、尿中にブドウ糖が検出された状態です。多くは、血糖値が高くなりすぎて腎臓で再吸収しきれなくなった糖が尿にあふれ出ることで生じ、糖尿病や糖尿病予備群と関連していることが多い所見です。
血糖値が正常であっても尿糖が出ることがあります。腎臓が糖を再吸収する能力が体質的に低い「腎性糖尿」のほか、一部の糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬など)は、作用の仕組み上、意図的に尿へ糖を排出させます。すでに糖尿病の治療を受けている方は、尿糖の陽性だけで病状が悪化したと判断せず、服薬の内容と合わせて確認してください。
一時的に陽性になることもあります
尿蛋白は、発熱や激しい運動の直後などに一時的に陽性になることがあります。尿潜血は、月経中の血液の混入や、激しい運動の後に一時的に陽性になることがあります。尿糖は、食後の一時的な血糖上昇や、治療中の薬剤の影響で陽性になることがあります。原因によって「一時的」の意味が異なるため、いずれの項目も、1回の結果だけで自己判断せず、再検査で確認することが大切です。
こんな時は受診をおすすめします
早めに受診してほしい場合
- 目で見て分かるほどの血尿(赤色や茶色の尿)が出た
- 尿に血の塊が混じる
- 強い腰や背中の痛みがある
- 血尿に発熱や排尿時の痛みを伴う
- 排尿時の痛みや頻尿が続く(健診の再検査を待たず、早めに相談してください)
再検査・相談をおすすめする場合
- 尿蛋白または尿潜血が、複数回の健診で繰り返し陽性になっている
- 尿蛋白と尿潜血が同時に陽性と指摘された(健診結果を持って医療機関へ相談してください)
- 尿糖が陽性で、血糖値やHbA1cの異常も指摘されている
受診までにできること
再検査までの間、症状(血尿の色、痛みの有無、発熱など)をメモしておくと、診察の助けになります。健診結果票、お薬手帳、過去の検査結果があれば持参してください。医療機関では、尿沈渣による顕微鏡検査や、必要に応じて画像検査を組み合わせて原因を調べます。
よくある質問
Q. 尿蛋白が(+)でしたが、体調は特に悪くありません。それでも受診が必要ですか?
A. 腎臓の病気は自覚症状が乏しいことが多いため、症状がなくても、繰り返し陽性が出る場合は原因を確認することをおすすめします。
Q. 生理中に健診を受けました。尿潜血の結果は信用できますか?
A. 月経の血液が混入し、陽性になっている可能性があります。期間をおいての再検査を検討してください。
Q. 尿糖が出ていましたが、血液検査のHbA1cは正常でした。糖尿病の薬も飲んでいません。なぜですか?
A. 腎臓が糖を再吸収する能力には個人差があり、血糖値が正常でも尿糖が出る体質の方がいます(腎性糖尿)。採血時の血糖値や検査時の食事状況が影響していることもあります。心配な場合は医師に相談してください。
まとめ
尿検査は、痛みなく手軽に受けられる検査でありながら、腎臓・尿路・糖代謝の状態を知る手がかりになります。1回の陽性で慌てる必要はありませんが、目で見て分かる血尿や、繰り返す陽性がある場合は、放置せず医療機関で原因を確認しましょう。
【健診でeGFR低下・尿蛋白を指摘された方へ】慢性腎臓病(CKD)とは?症状・原因・最新治療を医師が解説|大阪・心斎橋 福本医院
参考文献
- 血尿診断ガイドライン2023(血尿診断ガイドライン改訂委員会編:日本腎臓学会・日本泌尿器科学会・日本小児腎臓病学会・日本医学放射線学会・日本臨床検査医学会・日本臨床衛生検査技師会の6学会・団体合同、ライフサイエンス出版、2023) https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00799/
- Microhematuria: AUA/SUFU Guideline(American Urological Association, 2020, Amended 2025) https://www.auanet.org/guidelines-and-quality/guidelines/microhematuria
- 日本腎臓学会「診療ガイドライン 第3章 検尿の位置づけ」 https://jsn.or.jp/guideline/kennyou/16.php
- MSDマニュアル家庭版「腎性糖尿」 MSDマニュアル該当ページ
福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。
大阪メトロ御堂筋線・心斎橋駅から徒歩2分、なんば(難波)からは1駅です。長堀橋・本町・四ツ橋からも徒歩圏内で、新町・堀江・立売堀をはじめ大阪市西区からも多くの患者様にご来院いただいております。
動悸、不整脈、胸痛、息切れ、高血圧などでお困りの方は、心電図、ホルター心電図、心エコー検査などを活用しながら診療を行っております。気になる症状がある方や、健康診断で異常を指摘された方はお気軽にご相談ください。
この記事の監修
福本医院
院長 福本 淳
内科・循環器内科
平成9年 神戸大学医学部医学科卒
医学博士
循環器専門医(登録番号15490)
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保護中: 循環器・心臓カテゴリー_テスト
2026.07.28
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保護中: 健診・予防カテゴリー_テスト
2026.07.28
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保護中: ダイエット・生活習慣カテゴリー_テスト
2026.07.28
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鉄欠乏性貧血とは|疲れ・動悸・息切れの原因・検査・治療を循環器専門医が解説
こんな症状はありませんか?
- なんとなく疲れやすい、体がだるい
- 少し動いただけで動悸がする
- 階段や坂道で息切れする
- 立ちくらみやめまいがある
- 健診で「貧血ぎみ」「ヘモグロビンが低い」と言われた
- 顔色が悪いと言われる、爪が割れやすい
ひとつでも心当たりがあれば、その背景に「鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)」が隠れているかもしれません。貧血の中でもっとも多いのがこのタイプで、特に月経のある女性に多くみられます。
一方で、動悸や息切れは心臓の病気でも起こる症状です。「貧血だと思っていたら不整脈だった」「不整脈を心配して受診したら鉄不足だった」ということも珍しくありません。だからこそ、循環器内科できちんと切り分けることに意味があります。
この記事のポイント
- 鉄欠乏性貧血は、鉄が足りずヘモグロビンが十分に作れなくなり、全身が酸素不足になる状態です
- 疲れ・動悸・息切れ・めまいなど、一見ばらばらな症状の共通の原因になり得ます
- ヘモグロビンが正常でも、鉄の貯金(フェリチン)だけが減っている「鉄が足りない一歩手前」の状態があります
- 成人、とくに男性や閉経後の女性では、出血の原因(胃・腸の病気など)が隠れていないかの確認が大切です
- 食事の工夫と鉄剤で改善が見込めます。まずは採血で「本当に鉄が足りないのか」を確かめることが第一歩です


貧血とは、鉄欠乏性貧血とは
貧血とは、血液の中で酸素を運ぶ赤血球の中にあるヘモグロビンが減り、全身に酸素を届ける力が落ちた状態のことです。ヘモグロビンは鉄を材料にして作られます。お饅頭にたとえると、鉄は中身の「あんこ」。あんこが足りないと、いくら皮を用意してもきちんとした中身が作れません。これが鉄欠乏性貧血です。
貧血かどうかは、採血のヘモグロビン濃度(Hb)で判断します。世界保健機関(WHO)の目安では、成人男性でHb13g/dL未満、成人女性で12g/dL未満、妊婦では11g/dL未満が貧血の目安とされています。日本鉄バイオサイエンス学会の『鉄欠乏性貧血の診療指針』も同じ値を正常の下限としたうえで、年齢や妊娠の時期で基準が変わることを示しています。思春期前のお子さんと80歳以上の方は男女とも11g/dL以上、妊娠中は前期と後期が11g/dL以上、中期は10.5g/dL以上が基準です。ご高齢の方に一般成人の基準をそのまま当てはめると、実際以上に「貧血」と判定されることがあります。貧血にはいくつか種類がありますが、その中で最も多いのが鉄欠乏性貧血です。日本では頻度が高く、とくに月経のある年代の女性に多くみられます。
貧血はゆっくり進むことが多いため、体が慣れてしまい、Hbがかなり下がるまで自覚しにくいのが特徴です。一般にHbが7〜8g/dL程度まで低下すると症状が目立つことが多くなりますが、年齢や心臓の状態、進行の速さによって症状の出方には個人差があります。
どんな症状が出るのか
酸素が全身にいきわたりにくくなるため、症状は全身に及びます。
体の症状としては、疲れやすさ・だるさ、動悸、息切れ、めまい・立ちくらみ、頭痛、肩こり、顔色の悪さなど。鉄そのものの不足に関係する症状として、爪がスプーンのように反り返る・薄く割れやすくなる、口の端が切れる(口角炎)、舌がヒリヒリする(舌炎)、飲み込みにくさ、氷を無性に食べたくなる(氷食症)などがみられることもあります。
これらは「なんとなく不調」として片づけられやすく、原因がはっきりしないまま放置されがちです。動悸・息切れ・めまいといった症状は循環器の病気でもみられるため、当院では心臓の評価とあわせて、その裏に鉄欠乏がないかも確認しています。
原因は大きく4つ
鉄欠乏は、鉄の「失いすぎ」「摂り足りない」「吸収できない」「必要量が増える」の4つに分けて考えると整理しやすくなります。
鉄を失う(喪失)。もっとも多い原因です。女性では月経がその代表で、経血が多い方ほど不足しやすくなります。見落としてはならないのが消化管からの出血で、胃・十二指腸潰瘍、痔、そして胃がん・大腸がんなどが背景にあることがあります。
摂り足りない(摂取不足)。極端なダイエット、偏った食事、菜食に偏った食生活などで起こります。
吸収できない(吸収障害)。胃の手術後や、胃酸の分泌を抑える薬(PPI=プロトンポンプ阻害薬など)の長期使用などで鉄の吸収が落ちることがあります。
必要量が増える(需要増大)。成長期、妊娠・授乳期は鉄の必要量が増え、相対的に不足しやすくなります。
ここで大切なのは、鉄欠乏性貧血は「病名」であると同時に「結果」でもあるということです。とくに男性や閉経後の女性で鉄欠乏がみつかった場合は、どこかで出血していないか、その原因を確かめることが治療と同じくらい重要になります。鉄剤を飲んで数値を上げるだけでは、隠れた病気を見逃すおそれがあるからです。
検査でわかること:フェリチンと「鉄が足りない一歩手前」

鉄欠乏性貧血で調べる主な採血項目と、鉄欠乏のときの変化。フェリチンは体内の鉄の貯金を反映します。基準値は検査機関により異なります。(福本医院)
貧血の有無はHbでわかりますが、「なぜ貧血なのか」「鉄が足りているのか」を知るには、もう少し詳しい採血が役立ちます。
赤血球の大きさ(MCV)が小さめ(小球性)で、色が薄い(低色素性)場合は、鉄欠乏性貧血が疑われます。さらに、血液中の鉄(血清鉄)、鉄を運ぶ力(TIBC=総鉄結合能)、その埋まり具合(TSAT=トランスフェリン飽和度)、そして体の中の鉄の貯金を映す「フェリチン」を測ることで、鉄の状態を立体的に評価できます。
鉄欠乏性貧血では、血清鉄が下がり、TIBCが上がり、TSATが下がり、フェリチンが下がる、という特徴的なパターンを示します。下の図で、各項目が鉄欠乏のときにどう動くかを整理しました。
このうち、体の鉄の貯金を反映するのがフェリチンです。ヘモグロビンが基準内でも、フェリチンだけが低いことがあります。健診や採血で「フェリチンが低い」と言われた場合は、まさにこの状態、つまり鉄の貯金が減っているサインかもしれません。これは「貧血にはなっていないけれど、鉄の貯金が底をつきかけている」状態で、医学的には鉄欠乏(英語でIron deficiency without anemia)と呼ばれます。一般には「隠れ貧血」と表現されることもあります。この段階でも、疲れやすさや動悸などの不調が出ることがあり、早めに気づいて対処できるのが利点です。
フェリチンの数値は、鉄欠乏を疑うおおまかな目安として次のように考えます。診療指針の診断基準は12ng/mL未満で一本ですが、実際の診療では、12を上回っていても30を下回る場合には鉄欠乏を疑って対応することがあります。正常値そのものというより、「鉄が足りていないかを見極めるための目安」として捉えてください。
- 12ng/mL未満:診療指針の診断基準にあたり、鉄欠乏が強く疑われます
- 12〜30ng/mL程度:鉄欠乏の可能性があります
- 30ng/mL以上:多くの場合、鉄欠乏の可能性は低いと考えられます(ただし炎症や慢性疾患があるときはこの限りではありません)
ただし注意点があります。フェリチンの基準値は検査機関によって多少異なります。また、フェリチンは炎症や感染、肝臓の状態などで高くなる性質があり、体の中で炎症が起きているときは、鉄が足りなくても数値が正常〜高めに見えてしまうことがあります。このため、フェリチンだけでなく、症状や他の項目とあわせて総合的に判断します。数値の解釈は自己判断せず、医療機関でご相談ください。
当院では、必要に応じてフェリチンなど鉄代謝の検査も行い、貧血の有無だけでなく「鉄の貯金」まで含めて確認しています。
日本鉄バイオサイエンス学会の診断基準
『鉄欠乏性貧血の診療指針』では、ヘモグロビン・総鉄結合能(TIBC)・血清フェリチンの3つを組み合わせて、次のように区別します。
ヘモグロビン(g/dL) TIBC(μg/dL) フェリチン(ng/mL) 鉄欠乏性貧血 12未満 360以上 12未満 潜在性鉄欠乏 12以上 問わない 12未満 正常 12以上 360未満 12以上 ※ヘモグロビンは成人女性の基準値です。
ここで大事なのは、貧血がなくてもフェリチンが12ng/mLを下回っていれば「潜在性鉄欠乏」と診断されることです。さきほどの「鉄が足りない一歩手前」には、こうしたはっきりした基準があります。またTIBCが360μg/dL以上に上がっていることも、鉄欠乏を裏づける所見になります。
循環器内科として知っておいていただきたいこと
ここからは、少し専門的な話になります。鉄欠乏は、実は心臓の分野でも近年とても重視されているテーマです。
心不全や慢性腎臓病(CKD)のある方は、しばしば鉄欠乏を合併します。心不全やCKDは体の中で慢性的な炎症が起きている状態のため、フェリチンが見かけ上高くなりやすく、通常の「12ng/mL未満」といった目安では鉄欠乏を見逃してしまいます。そこで心不全の分野では、フェリチンが100ng/mL未満、あるいは100〜300ng/mLでTSATが20%未満のときに鉄欠乏と判断し、鉄の補充を検討する、という一段きめ細かい基準が使われます。
なぜここまで重視されるのか。心不全のある方に鉄を補うと、症状や生活の質、運動する力が改善し、心不全による入院が減る可能性が、複数の大規模な臨床研究で示されてきたからです。急性心不全後の患者を対象としたAFFIRM-AHF試験(Lancet, 2020)、英国で行われたIRONMAN試験(Lancet, 2022)、そして最新のFAIR-HF2試験(JAMA, 2025)などがその代表です。こうした積み重ねを受けて、米国(2022年 ACC/AHA/HFSAガイドライン)と欧州(2023年 ESCガイドライン)はいずれも、鉄欠乏を伴う症状のある心不全(左室駆出率が低下したタイプ)の患者に、静脈注射による鉄剤の投与を推奨しています。
なお、これらの研究や推奨は「静脈注射による鉄補充」に関するもので、専門的な管理のもとで行われる治療です。当院は外来で、内服の鉄剤や食事の見直しを中心に対応しています。ここでお伝えしたいのは、鉄欠乏は「貧血の一種」にとどまらず、心臓の状態にも関わる、循環器として見逃せないテーマだということです。動悸や息切れで受診された方の背景に鉄欠乏がみつかることもあり、当院ではその両面から評価しています。
【健診でeGFR低下・尿蛋白を指摘された方へ】慢性腎臓病(CKD)とは?症状・原因・最新治療を医師が解説|大阪・心斎橋 福本医院
食事と治療
治療の基本は、不足している鉄を補い、原因があればそれに対処することです。
食事でとる鉄には、肉や魚に多く吸収されやすい「ヘム鉄」と、野菜・豆・卵などに含まれ吸収がやや劣る「非ヘム鉄」があります。鉄を多く含む食品には、レバー、赤身の肉、かつお・まぐろ、あさりなどの貝類、ほうれん草や小松菜、大豆製品などがあります。非ヘム鉄はビタミンC(野菜・果物)と一緒にとると吸収が高まります。バランスのよい食事が基本で、特定の食品だけに偏らないことが大切です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、鉄の栄養状態をみる指標としてフェリチンが重視されるようになり、非ヘム鉄の吸収率は体の鉄の充足度によって変わる(足りないときほど吸収が高まる)という考え方が反映されています。体は必要に応じて吸収量を調整しているのです。
食事だけで追いつかないときは、鉄剤(内服薬)を使います。診療指針は、飲み薬の鉄剤を第一選択とし、1日あたり鉄としておおむね100〜200mgを用いるとしています。鉄剤はよく効くため、貧血がかなり進んだ状態であっても、輸血をせずに回復できることが多いのも特徴です。
フェリチンの回復には時間がかかるため、Hbが戻った後もしばらく続けて、鉄の貯金を十分に回復させることが再発予防のうえで重要です。診療指針も、貧血が改善してから貯蔵鉄が満たされるまでには長期間の内服が必要だと明記したうえで、実際には途中で中断してしまう方が少なくないと指摘しています。貧血がなかなか改善しないときや、一度よくなったのに再発したときは、まず飲み方を一緒に確認するところから始めます。
飲み合わせにも注意が要ります。お茶や紅茶に含まれるタンニン酸、胃薬(プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬)、一部の抗菌薬などは鉄の吸収を妨げます。逆にビタミンCは吸収を助けます。吐き気が出るときは、飲む時間を日中から就寝前にずらす、少量から始めるといった工夫で続けられることがあります。飲みにくさは我慢せず、ご相談ください。市販のサプリメントは手軽ですが、貧血の原因が別にある場合に発見が遅れることがあるため、まずは医療機関で原因を確かめることをおすすめします。
処方される鉄剤にはいくつか種類があります
治療に使う内服の鉄剤には、鉄の「型」(二価鉄・三価鉄)や製剤の作り(徐放性かどうか)が異なるものがあります。どれを使うかは、胃腸症状の出やすさ、飲みやすさ、ほかの持病などをふまえて医師が選びます。代表的なものを紹介します。
フェロミア(クエン酸第一鉄ナトリウム)。二価鉄の標準的な鉄剤で、鉄欠乏性貧血の治療で広く使われます。胃酸の影響を受けにくく比較的胃にやさしいとされ、錠剤のほか顆粒もあります。
フェロ・グラデュメット(乾燥硫酸鉄)。鉄をゆっくり放出する徐放性の錠剤です。鉄の含有量が多く1日1回で済むことが多いため続けやすい一方、噛まずに十分な水で飲む必要があります。
フェルム(フマル酸第一鉄)。こちらも徐放性のカプセルで、1日1回の服用です。
リオナ(クエン酸第二鉄水和物)。三価鉄の薬です。もともとは慢性腎臓病(CKD)に伴う高リン血症の治療薬ですが、鉄欠乏性貧血にも適応があります。一般的な鉄剤(二価鉄)で吐き気や胃の不快感などの胃腸症状が強く、内服を続けるのが難しい場合に、選択肢のひとつとなることがあります。診療指針でも、従来の経口鉄剤と比べて悪心・嘔吐が有意に少ないことが臨床試験で示された薬として紹介されています。
薬の値段(薬価。公定価格の目安で2026年時点)は、フェロミア錠50mgとフェロ・グラデュメット錠105mgがいずれも1錠6.3円、リオナ錠250mgが1錠70.40円です。1日あたりの目安ではフェロミアが約13〜25円、フェロ・グラデュメットが約6〜13円、リオナが約141〜282円で、実際の窓口負担はこの1〜3割です。ただし薬は値段だけで選ぶものではなく、効果・副作用・飲みやすさ・持病を総合して決めます。自己判断で選んだり中断したりせず、主治医にご相談ください。
鉄剤が向かない場合もあります
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では、飲み薬の鉄剤が腸の病変に悪影響を及ぼす可能性があるため、はじめから静脈注射の鉄剤を選びます。またウイルス性肝炎や肝硬変がある場合は、鉄が肝臓の状態に影響しうるため、基本的に鉄剤は使いません。持病のある方は、必ず主治医にお伝えください。
また診療指針は、鉄剤を始める前に確実な診断をつけることを求めています。ヘモグロビンが低いというだけでなく、MCVが小さいこと、血清鉄が低いこと、そして血清フェリチンが低いことまで確認してから開始すべき、という考え方です。当院が「まず原因を調べましょう」とお伝えするのは、この方針に沿っています。
こんな時は受診をおすすめします
- 健診で貧血やヘモグロビンの低下を指摘された
- 健診や採血で「フェリチンが低い」と言われた
- 疲れ・動悸・息切れ・めまいが続いている
- 月経の量が多く、貧血を繰り返している
- 市販の鉄サプリを飲んでも改善しない
- 男性や閉経後で、貧血を指摘された(出血源の確認が必要なことがあります)
当院では、ヘモグロビンだけでなくフェリチンなど鉄代謝も評価し、必要に応じて心電図や心エコーなど循環器の検査も組み合わせながら、動悸・息切れの原因を総合的に診断しています。貧血なのか、心臓の病気なのか、あるいは両方なのかを見極めたうえで、患者さん一人ひとりに合った治療をご提案します。「気のせい」で片づけず、まずはご相談ください。
Apple Watchで不整脈・睡眠時無呼吸の通知が来たら? 2026年6月から7日間Holterへ|高血圧にもつながる最新循環器診療
よくある質問(FAQ)
Q1. 鉄欠乏性貧血は放っておいても自然に治りますか? 原因(月経過多や出血など)が続いている限り、自然に治ることは期待しにくいです。原因への対処と鉄の補充が必要です。
Q2. 鉄剤にはどんな副作用がありますか? 吐き気、胃のむかつき、便秘や下痢、腹痛などが比較的よくみられます。つらいときは、飲む時間や剤形を調整することで続けやすくなることがあるため、自己判断で中止せずご相談ください。
Q3. 鉄剤を飲むと便が黒くなりました。大丈夫ですか? 鉄剤による便の黒色化はよくある反応で、多くは心配いりません。ただし、出血による黒い便(タール便)との区別が必要なこともあるため、気になる場合は医師にお伝えください。
Q4. 鉄剤は食前と食後、どちらがよいですか? 一般に空腹時のほうが吸収は良いとされますが、胃の症状が出やすい方は食後でもかまいません。続けられることが何より大切です。
Q5. 市販の鉄サプリメントでも良いですか? 軽い不足の補助にはなり得ますが、貧血の背景に病気が隠れていることがあります。まずは採血で原因を確かめたうえで使うのが安心です。
Q6. コーヒーやお茶は飲んでも大丈夫ですか? お茶やコーヒーに含まれるタンニンは、非ヘム鉄の吸収をやや妨げるとされます。神経質になりすぎる必要はありませんが、鉄剤や食事のすぐ前後は控えると無難です。
Q7. 鉄が多い食べ物は何ですか? レバー、赤身肉、かつお・まぐろ、あさりなどの貝類、ほうれん草、小松菜、大豆製品などです。ビタミンCと一緒にとると吸収が高まります。
Q8. 月経の量が多いと貧血になりやすいですか? はい。月経過多は女性の鉄欠乏性貧血のもっとも多い原因のひとつです。量が多い、レバー状のかたまりが出るなどがあれば、婦人科的な原因の確認も検討します。
Q9. 妊娠中の貧血が心配です。 妊娠中は鉄の必要量が増え、貧血になりやすい時期です。お母さんだけでなく赤ちゃんにも関わるため、健診での貧血の指摘は放置せず、指示に従って対応してください。
Q10. 男性や閉経後の女性でも鉄欠乏になりますか? なります。ただしこの年代では月経による喪失がないため、消化管出血など別の原因が隠れていないかの確認がとくに重要です。
Q11. フェリチンとは何ですか?なぜ測るのですか? フェリチンは体内の鉄の「貯金」を映す数値です。ヘモグロビンが正常でも、貯金が減っていれば早めに対処できるため、測る意義があります。
Q12. ヘモグロビンは正常なのに「鉄不足」と言われました。なぜですか? 貧血になる前の段階、つまりフェリチン(鉄の貯金)が減っている状態です。医学的には鉄欠乏(Iron deficiency without anemia)、一般には「隠れ貧血」と呼ばれることがあります。
Q13. 鉄の点滴(静脈注射の鉄剤)はどんな時に使いますか? 内服がどうしても続けられない、吸収が悪い、早く補いたい、といった場合に、専門的な管理のもとで検討される治療です。心不全に伴う鉄欠乏などで用いられることがあります。適応は医師が判断します。
Q14. 鉄剤はどのくらいの期間飲む必要がありますか? ヘモグロビンが戻っても、鉄の貯金(フェリチン)が十分に回復するまで数か月続けることが多いです。途中でやめると再発しやすくなります。
Q15. スポーツをよくするのですが、貧血になりやすいですか? 運動量が多い方は、汗や消化管からの微小な鉄の喪失などで鉄が不足しやすいことがあります(いわゆるスポーツ貧血)。疲れやパフォーマンス低下が続くときは一度採血をおすすめします。
Q16. 鉄剤を飲むと便秘になりますか? 鉄剤では便秘や下痢など、お通じの変化がよくみられます。便秘が気になるときは、水分と食物繊維をふだんより意識するとやわらぐことがあります。それでもつらい場合は、我慢して続けず、薬の種類や飲み方を調整できることがあるのでご相談ください。
Q17. フェリチンだけが低い場合も、治療した方がよいですか? 貧血(ヘモグロビンの低下)がなくても、フェリチンが低く、疲れやすさや動悸などの症状がある場合は、鉄を補うことで体調が改善することがあります。治療するかどうかは、症状・数値・背景にある原因をふまえて医師が判断します。まずは採血で状態を確かめましょう。
Q18. 鉄剤を飲んだあと、コーヒーは何時間あければよいですか? 明確な決まりはありませんが、鉄剤の前後1時間ほどはコーヒーやお茶を控えると無難とされています。とはいえ神経質になりすぎる必要はなく、続けやすさを優先してかまいません。
Q19. 鉄剤は毎日飲む方がよいですか? 以前は毎日の服用が一般的でしたが、最近は副作用の軽減や吸収効率の観点から、1日おきの隔日投与が選ばれる場合もあります。飲み方は自己判断せず、主治医の指示に従ってください。
Q20. 動悸や息切れは、貧血と心臓の病気のどちらが原因ですか?見分けられますか?
どちらの可能性もあり、見分けが大切です。鉄欠乏性貧血でも動悸・息切れは起こりますが、同じ症状は不整脈や心不全など心臓の病気でもみられます。「貧血だと思っていたら不整脈だった」「不整脈を心配して受診したら鉄不足だった」ということも珍しくありません。当院では採血でヘモグロビンやフェリチンなど鉄の状態を確認するとともに、必要に応じて心電図や心エコーなどの循環器検査も行い、貧血なのか、心臓の病気なのか、あるいは両方なのかを見極めたうえで治療をご提案します。参考文献
- 日本鉄バイオサイエンス学会編『鉄欠乏性貧血の診療指針』第1版、フジメディカル出版、2024年
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書、2024年
- World Health Organization. Guideline on haemoglobin cutoffs to define anaemia in individuals and populations. Geneva: WHO; 2024.
- Camaschella C. Iron-Deficiency Anemia. N Engl J Med. 2015;372(19):1832-1843.
- Lopez A, Cacoub P, Macdougall IC, Peyrin-Biroulet L. Iron deficiency anaemia. Lancet. 2016;387(10021):907-916.
- Camaschella C. Iron deficiency. Blood. 2019;133(1):30-39.
- Ponikowski P, et al. (AFFIRM-AHF). Lancet. 2020.
- Kalra PR, et al. (IRONMAN). Lancet. 2022.
- Anker SD, et al. (FAIR-HF2 DZHK05). JAMA. 2025.
- McDonagh TA, et al. 2023 Focused Update of the 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J. 2023.
- Heidenreich PA, et al. 2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure. J Am Coll Cardiol. 2022;79(17):e263-e421.
福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。
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動悸、不整脈、胸痛、息切れ、高血圧などでお困りの方は、心電図、ホルター心電図、心エコー検査などを活用しながら診療を行っております。気になる症状がある方や、健康診断で異常を指摘された方はお気軽にご相談ください。
この記事の監修
福本医院
院長 福本 淳
内科・循環器内科
平成9年 神戸大学医学部医学科卒
医学博士
循環器専門医(登録番号15490)
外国人患者様へのご案内|完全予約制・日本語での診療について / Information for International Patients
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健康診断で「心電図の異常」を指摘されたら ― 放っておかず、まずご相談ください
■ この記事のポイント
- 健診の心電図は「くわしく調べたほうがよい人」を拾い上げる検査で、「異常」=病気ではありません
- ただし「大丈夫」とも限りません。同じ所見でも、症状・危険因子・家族歴・初めての指摘かどうかで判定が変わります
- 結果票の判定は、A・B・C・D・Eなどの記号で示されます。Dは「重い病気」ではなく「くわしく調べましょう」という区分です
- 健診の心電図はわずか10秒ほどの記録です。ふだん出ている不整脈が写らないこともあります
- 結果票を持ってご相談ください。初診+心電図で約1,300円(3割負担)、保険診療で受けていただけます
<診察室から> 30秒でわかる健診の心電図


「異常」と書かれていても、病気が決まったわけではありません。 健診の心電図は、多くの方の中から「くわしく調べたほうがよい人」を拾い上げるための検査です。
同じ所見でも、判定は変わります。 症状があるか、高血圧や糖尿病があるか、家族に若くして亡くなった方がいるか、初めての指摘か、去年と比べて変わったか ― これらで判定が動きます。だから結果票の文字だけでは決められません。
結果票を持って、一度ご相談ください。 それだけで十分です。「大げさかな」と迷う程度が、ちょうど良いタイミングです。
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健診の心電図は「ふるい分け」の検査です
健康診断の心電図は、多くの方の中から「くわしく調べたほうがよい人」を拾い上げるための検査です。病気を確定させる検査ではありません。
厚生労働省の定期健康診断結果報告(令和6年)によると、心電図で所見があった方は10.9%でした。およそ9人に1人です。決して珍しいことではありません。
「異常」と書かれていても、病気とは限りません
所見に「異常」と出ても、それが必ずしも病気とは限りません。「あなたは病気です」という結論ではなく、「一度くわしく確認しましょう」という合図と考えてください。
ただし「大丈夫」とも限りません。自己判断は禁物です
同じ「異常」でも、その中身は、そのまま様子を見てよいものから、早めに確認・治療したほうがよいものまで大きな幅があります。自分がそのどちらなのかは、結果票の文字だけでは見分けられません。
たとえば心房細動は、自覚症状がなくても脳梗塞につながることがある不整脈ですが、早く見つけて対策できれば、そのリスクを大きく減らせます。狭心症や心筋症など、別の心臓の病気が背景に隠れていることもあります。
反対に、健診で「異常なし」であっても安心とは限りません。 健診の心電図は10秒ほどの記録です。その瞬間に出ていない不整脈は、心電図に写りません。心電図の所見は、診断の出発点であって、結論ではありません。
そもそも、なぜ心電図を受けたのでしょうか
心電図は、全員が受ける検査ではありません。 ここを知っておくと、ご自身の結果票の意味がわかりやすくなります。
特定健診(メタボ健診)の場合 ― 心電図は基本の項目ではなく、条件を満たした方に医師が必要と認めた場合に行う「詳細な健診の項目」です。その条件は次のとおりです。
当該年度の特定健康診査の結果等において、収縮期血圧140mmHg以上若しくは拡張期血圧90mmHg以上の者又は問診等で不整脈が疑われる者
(厚生労働省『特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き 第4.3版』)
つまり、血圧が高かったか、問診で脈の乱れが疑われたか、どちらかがあった可能性があります。「動悸がすることがある」と伝えたことがきっかけで心電図が追加された、という方もいらっしゃいます。
職場の定期健康診断の場合 ― 心電図は健診項目の一つですが、40歳未満の方(35歳の方を除く)は、医師が必要でないと認めれば省略できることになっています。裏を返せば、35歳と40歳以上では原則として実施される検査です。
人間ドックの場合 ― 通常、基本の検査項目に含まれています。
なお、健診の「判定値」と、病気の「診断基準」と、治療の「目標値」は、それぞれ別のものです。この違いは「高血圧の基準が130/80に下がった」は誤りですで詳しく説明しています。
結果票の「判定」を確認してください
まずは判定の記号をご確認ください。健診機関でよく使われている区分は、次のとおりです。
その前に、ひとつだけ。結果票の文字だけでは、受診が必要かどうかまでは決まりません。 たとえば同じ心電図所見でも、以前から変わらない場合と今回初めて現れた場合、症状がない場合と失神などの症状がある場合では、判断が異なることがあります。この記事の所見の表で判定に「幅」を持たせているのは、そのためです。

判定 意味と、どうすればよいか A 異常なし ― 今回の検査では問題ありませんでした B 軽度の変化 ― 日常生活に支障のない範囲です。次回の健診で確認します C1 要経過観察 ― 期間をおいて様子を見ます C2 要再検査 ― もう一度確認が必要です。受診をおすすめします D 要精密検査 ― くわしい検査が必要です。受診してください E 要治療 ― 治療が必要な可能性があります。早めに受診してください F 治療中 ― すでに通院されている方です。主治医にご相談ください 「D=重大な心臓病」という意味ではありません。 Dは「要精密検査」の区分です。心電図だけでは原因を確定できないため、必要に応じて詳しく確認したほうがよい、という意味を含みます。
判定の記号や区分は健診機関によって異なります。 お手元の結果票に説明が記載されていれば、そちらを優先してご覧ください。再検査の時期(3か月後・6か月後など)が指定されている場合は、その時期に受けていただくのが原則です。
※このあと所見ごとに示す判定の目安(「B〜C」「C〜D」など)は、日本人間ドック・予防医療学会の判定マニュアル(A〜Eの5区分)に基づいています。お手元の結果票がC1・C2に分かれている場合、そのどちらもおおむねこの「C」にあたるとお考えください。
結果票全体の読み方、血液検査の項目や「要再検査」と言われたときの考え方は、健康診断の受け方と結果票の見方でくわしく解説しています。
心電図でよくある所見の意味
所見の欄に書かれた言葉の意味を、5つのグループに分けてご説明します。以下の判定はあくまで目安で、最終的な判定は健診機関が行います。
脈の乱れ(不整脈)
所見 判定の目安 期外収縮(記録中に2個以下) B〜C 期外収縮(3個以上・連発) C〜D 心房細動・心房粗動 D 上室頻拍 D 洞頻脈(100拍/分以上) D 心拍過多(86〜99拍/分) C 洞徐脈(45〜49拍/分) A 洞徐脈(40〜44拍/分) C 洞徐脈(39拍/分以下) D 期外収縮は、脈が飛ぶタイプの不整脈です。 多くは治療の必要がありませんが、症状があるとき、心臓の病気があるとき、頻度が多いときは確認が必要です。
ここで知っておいていただきたいことがあります。 健診の心電図は、10秒ほどの記録です。期外収縮の個数は、その記録用紙の範囲内で数えます。その10秒に3個出れば「頻発」の扱いになりますし、逆に、ふだん出ている不整脈がその10秒に写らないこともあります。 これが、必要に応じて24時間や7日間の記録を行う理由です。
心房細動は、自覚症状がなくても脳梗塞につながることがある不整脈です。 判定はDです。早く見つけて対策する意味が大きい所見なので、必ずご相談ください。くわしくは心房細動とは?をご覧ください。動悸や脈の乱れ全般については不整脈とは?をどうぞ。
脈が遅いこと(洞徐脈)は、45〜49拍/分であればA判定です。 運動習慣のある方では珍しくありません。一方、脈が速い状態(100拍/分以上)はD判定です。「遅いほうが心配」と思われがちですが、判定は逆になります。
心臓の筋肉と血流(ST-T異常・Q波)
所見 判定の目安 軽度ST低下 B〜C ST低下 C〜D 平低T波 B〜C 陰性T波 C〜D ST低下と陰性T波の両方 D 境界域Q波 C 異常Q波 C〜D ST-T異常は、健診でもっともよく見かける所見のひとつです。 体質や自律神経の影響で出ることも多く、それだけで病気とは限りません。
ただし、判定を動かす条件がはっきりしています。 動脈硬化の危険因子(高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙など)がある、若くして冠動脈の病気になった血縁者がいる、今回が初めての指摘である ― こうした場合は、同じ所見でもD判定になります。
ST低下と陰性T波の両方がある場合は、それだけでD判定です。 単独の所見より、組み合わさったときのほうが重く扱われます。
胸の症状がある方は胸の痛み(胸痛)の原因とは?もあわせてご覧ください。
心臓の厚み(左室高電位・左室肥大)
「左室高電位」と「左室肥大」は、別の所見です。
- 左室高電位だけならB判定です。心電図の波が大きいという意味で、やせ型の方や若い方にも見られます
- これにST-T変化が加わると「左室肥大」となり、C〜D判定になります
心臓の壁が厚くなる背景として、いちばん多いのは高血圧です。 高い圧に逆らって血液を送り出すうちに、心臓の筋肉が厚くなっていきます。高血圧はどこまで下げるべき?で詳しく説明しています。
もうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。 症状はないけれど心臓に変化が出ている段階を、心不全では「ステージB(前心不全)」と呼びます。ここで見つけて手を打てば、症状が出る段階へ進むのを遅らせることができます。息切れ・むくみは心不全のサイン?をご覧ください。
電気の通り道(脚ブロック・房室ブロック)
所見 判定の目安 不完全右脚ブロック B 完全右脚ブロック C〜D 不完全左脚ブロック B 完全左脚ブロック D 左脚前枝ブロック・左脚後枝ブロック C PR延長(第1度房室ブロック) B〜D 右脚ブロックは「よくある所見だから大丈夫」と言われることがありますが、条件によって扱いが変わります。 完全右脚ブロックは、今回が初めての指摘で、かつ動脈硬化の危険因子をお持ちの場合、D判定です。以前から指摘されていて変化がなければ、C判定にとどまります。
完全左脚ブロックは、それだけでD判定です。 背景に心臓の病気が隠れていることがあるため、一度確認しておくことをおすすめします。
PR延長(第1度房室ブロック)は、多くの場合B判定です。 ただし、PRが300ミリ秒を超える場合や、失神・息切れなど脈が遅いことによる症状がある場合はD判定になります。
まれですが、知っておきたい所見
ブルガダ型心電図、QT延長、早期再分極(J波)などは、健診で指摘されることがある心電図所見です。
これらの所見があるだけで、危険な不整脈が起こるという意味ではありません。 一方で、一部には注意が必要な不整脈と関連するものがあるため、心電図の形だけでなく、これまでの症状や家族歴を合わせて判断します。
受診のときに、ぜひ教えてください
- これまでに突然意識を失ったことがある
- 原因のわからない失神やけいれんを起こしたことがある
- 若くして突然亡くなった血縁者がいる
- 突然死や遺伝性の不整脈を指摘された血縁者がいる
- 現在服用しているお薬(QT延長の場合はとくに重要です)
ブルガダ型心電図 ― 波形の形によってcoved型とsaddleback型に分かれます。coved型はD判定です。saddleback型はC〜D判定で、失神などの症状や家族歴があるかどうかで変わります。なお、通常の位置で撮った心電図がsaddleback型でも、電極を1肋間上げて記録するとcoved型になることがあります。 当院ではこの記録を行えます。
QT延長 ― QTcという指標の長さで判定します。C判定は男性450〜479ミリ秒、女性460〜479ミリ秒。480ミリ秒以上は男女ともD判定です。生まれつきのものだけでなく、お薬や電解質の異常、脈の遅さでも延びることがあります。服用中のお薬を必ずお持ちください。
早期再分極(J波) ― B〜Dまで判定に幅があります。心電図の形に加えて、失神・けいれんの既往や若くして突然亡くなった血縁者がいるかどうかで変わります。
これらの所見について、国立循環器病研究センターの解説もわかりやすいのでご参照ください。
同じ所見でも、判定が変わります
ここまでで、判定に「B〜C」「C〜D」という幅があることにお気づきかと思います。この幅こそが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
判定マニュアルには、こう書かれています。
同一所見でも年齢、性別、自覚症状、基礎疾患などにより、判定が異なることがある。(中略)とくに、自覚症状、脳心血管疾患の危険因子、家族歴は重要である

判定を動かすのは、次の5つです。
1. 症状があるか ― 動悸、胸の圧迫感、息切れ、失神。マニュアルには「心電図所見と因果関係が疑われる自覚症状がある場合は、心電図判定をDにすることを考慮する」と書かれています。
2. 動脈硬化の危険因子があるか ― 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満。ST-T異常や完全右脚ブロックでは、これがあるかどうかで判定が変わります。
3. 家族歴があるか ― 若くして突然亡くなった血縁者、遺伝性の不整脈を指摘された血縁者、若くして冠動脈の病気になった血縁者。
4. 初めての指摘か ― ST低下や完全右脚ブロックでは、「初回指摘時(過去にも指摘されたが、現在まで医療機関を受診していない場合を含む)」がD判定の条件に入っています。「去年も言われたから」は、受診していなければ「初回」と同じ扱いです。
5. 前回の心電図と変わっていないか ― PR延長では「前回と比較して明らかな延長がみられる」場合にC判定になります。
この5つは、すべて患者さんご自身が答えられることです。 そして、心電図の紙の上には書かれていません。だから、結果票の文字だけでは判定が決まらないのです。
以前の健診の結果票をお持ちいただけると、4番と5番がその場でわかります。 ぜひご持参ください。
結局、どうすればいいの?
判定がD・Eなら、所見の名前にかかわらず受診してください。 すでに治療中(F)の方は、結果票を主治医にお見せください。
判定がC1・C2なら、結果票に書かれた時期に再検査を受けてください。「気になれば」ではなく、指定された時期に受けていただくのが原則です。
判定がA・Bでも、次のいずれかに当てはまる方は一度ご相談ください。
- 動悸、胸の圧迫感、息切れ、めまい、失神といった症状がある
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症を指摘されている
- 今回が初めての指摘で、これまで受診したことがない
- 若くして突然亡くなった血縁者がいる
「大げさかな」と迷う段階での受診でかまいません。 むしろ、その段階がちょうど良いタイミングです。
受診すると、何をするの? ― 検査・時間・費用の目安
「受診したら何をされるのかわからない」という不安が、いちばんの障壁かもしれません。当院での流れをご説明します。
まず、結果票とこれまでの経過を確認します
結果票を拝見し、前の項でご説明した5つの点 ― 症状、危険因子、家族歴、初めての指摘か、前回からの変化 ― を確認します。以前の健診結果や心電図をお持ちであれば、ぜひご持参ください。
受診の際は、健診の結果票、保険証・マイナ保険証、お薬手帳をお持ちください。
必要な検査を行います
- 心電図 ― その場で取り直し、健診の所見を見比べます。必要に応じて、電極を1肋間上げた記録も行います
- 心臓超音波(心エコー)検査 ― 心臓の形や動き、壁の厚さ、弁の状態を確認します
- ホルター心電図 ― 24時間の記録で、日常生活の中での脈をチェックします
- 血液検査・胸部レントゲン ― 必要に応じて行います
Apple Watchなどで不整脈の通知を受け取った方や、より長い期間の記録が必要な方には、7日間ホルター心電図にも対応しています。いびきや日中の眠気がある方は、背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。
より専門的な検査や治療が必要な場合は、適切な医療機関へご紹介します。
時間と費用の目安
健康診断の結果にもとづく再検査・精密検査は、健康保険を使って受けていただけます。自費ではありません。
3割負担の方の目安は次のとおりです。
検査の組み合わせ 3割負担の目安 初診+心電図 約1,300円 初診+心電図+心エコー 約3,900円 初診+心電図+ホルター心電図 約6,500円 初診+心電図+心エコー+ホルター心電図 約9,200円 ※上記は初診料と記載の検査のみの目安です。血液検査やレントゲン検査を追加した場合、お薬を処方した場合、各種加算により、実際の窓口負担は前後します。
所要時間 ― 心エコーは当日施行が可能で、検査自体は10分程度です(混雑時は後日のご予約をお願いする場合があります)。ホルター心電図は装着が5分程度で、機器をお持ち帰りいただき、後日ご返却いただきます。解析の結果は、あらためてご説明します。
平日夕方の最終受付は19時15分です。 お仕事帰りの受診にもご利用いただけます。土曜日は14時45分が最終受付となります(15時以降は発熱外来の時間帯です)。ご予約いただくと待ち時間が短くなります。
受診の流れは福本医院の受診方法もご覧ください。
よくあるご質問
「心電図異常」と書かれていましたが、症状がなくても受診したほうがよいですか?
判定がD・Eであれば、症状がなくても受診をおすすめします。心房細動や左室肥大のように、症状がないうちに見つけることに意味がある所見があるためです。判定がA・Bでも、危険因子や家族歴がある方はご相談ください。
去年も同じことを言われましたが、毎年同じなら放っておいて大丈夫ですか?
「毎年同じ」と「一度も調べていない」は別のことです。 判定マニュアルでは、初回指摘の条件に「過去にも指摘されたが、現在まで医療機関を受診していない場合を含む」と書かれています。一度も調べていなければ、何年目でも「初回」と同じ扱いです。 一度確認して「変わりありません」とはっきりさせておくことに意味があります。
「要再検査」と「要精密検査」は何が違うのですか?
要再検査は「同じ検査をもう一度」、要精密検査は「別の検査でくわしく」という違いです。要再検査は時間をおいて同じ心電図を撮り直すのが基本、要精密検査は心エコーやホルター心電図など、心電図だけではわからないことを調べに行く段階です。
「ST-T異常」「ST低下」と書かれています。狭心症ということですか?
そうとは限りません。ST-T異常は体質や自律神経の影響でも出ます。ただし、動脈硬化の危険因子がある方、初めての指摘の方では判定が重くなります。 胸の症状があるかどうかも重要です。心エコーや必要に応じた検査で切り分けます。
「心房細動の疑い」と書かれましたが、もう一度心電図をとればわかりますか?
その場で出ていれば確認できますが、心房細動は出たり止まったりすることがあります。 受診時の心電図が正常でも否定はできません。その場合は24時間や7日間のホルター心電図で、日常生活の中での脈を記録します。
健診では異常と言われましたが、病院で心電図をとったら正常でした。どちらが正しいのですか?
どちらも正しいことがあります。 心電図は、その瞬間の心臓の電気の動きを記録したものです。健診の10秒と、受診時の10秒で、違う所見が出ることは珍しくありません。だからこそ、前後の記録を見比べることと、長時間の記録が役に立ちます。
健診では異常なしでしたが、Apple Watchで心房細動の通知が出ました。どうすればよいですか?
健診の心電図は10秒の切り取りなので、そこで出ていない不整脈は写りません。 一方、腕時計型の機器は長時間見ているぶん、拾える可能性があります。通知の画面や記録を保存してご持参ください。Apple Watchで不整脈・睡眠時無呼吸の通知が来たら?でくわしく説明しています。
以前の健康診断の心電図や結果票も持っていったほうがよいですか?
ぜひお持ちください。 前回と比べて変化があるかどうかは、判定を動かす重要な要素です。心電図の波形そのものがあれば理想的ですが、結果票の所見欄だけでも役に立ちます。
参考文献・出典
- 日本人間ドック・予防医療学会. 標準12誘導心電図検診判定マニュアル(2023年度版).
- 日本人間ドック・予防医療学会. 判定区分表(2026年4月1日改定・「検査表の見方」より).
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン.
- 厚生労働省保険局医療介護連携政策課. 特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.3版). 2026年3月.
- 厚生労働省. 定期健康診断結果報告「令和6年定期健康診断実施結果(年次別)」(e-Stat).
- 厚生労働省. 健康診断等に関する法令等について(労働安全衛生規則第44条および関係告示).
福本医院について
福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。
心斎橋、長堀橋、本町、四ツ橋から徒歩圏内にあり、なんば(難波)からも心斎橋筋商店街をまっすぐ北へ徒歩約15分、御堂筋線なら1駅です。新町・堀江・立売堀をはじめ大阪市西区、難波・日本橋方面からも多くの患者様にご来院いただいております。
動悸、不整脈、胸痛、息切れ、高血圧などでお困りの方は、心電図、ホルター心電図、心エコー検査などを活用しながら診療を行っております。気になる症状がある方や、健康診断で異常を指摘された方はお気軽にご相談ください。
この記事の監修
福本医院
院長 福本 淳
内科・循環器内科
平成9年 神戸大学医学部医学科卒
医学博士
循環器専門医(登録番号15490)
福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。
大阪メトロ御堂筋線・心斎橋駅から徒歩2分、なんば(難波)からは1駅です。長堀橋・本町・四ツ橋からも徒歩圏内で、新町・堀江・立売堀をはじめ大阪市西区からも多くの患者様にご来院いただいております。 -
Weight Is Determined by Habit, Age, and Sex — Why Diets Plateau and Why the Weight Comes Back
About this article. This is an educational article written by a physician. It is not medical advice for any individual, and it is not an invitation to consult. Fukumoto Clinic practices in Japanese only.
Part I derives, using nothing but arithmetic, why weight loss slows down and stops. Part II places that derivation against the international literature and states plainly where it is wrong. Part III is what I actually ask patients to do.
Two sentences, more than any others, are said to me in the consulting room.
“I kept restricting my food, and then the weight just stopped coming off.”
“I stopped dieting, and it all came straight back.”
In almost every case, neither sentence is a confession of weakness. Both describe something that body weight simply does. Weight has this property built into it, and you can see exactly why with arithmetic you already know.
Here is the conclusion, before the derivation:
Body weight = (Calories eaten − Calories burned in activity) ÷ K
where K is the basal metabolic rate per kilogram of body weightThe numerator is your habits. The denominator is a constant fixed by your age and sex. So:
Your weight is determined by your habits, your age, and your sex.
Put differently: a person who weighs 100 kg is living the habits that hold a body at 100 kg. Change the habits and the weight changes. Return to the old habits and the weight returns. That single sentence is the starting point of everything I do in weight management.
Part I — The derivation
1. Three equations nobody disputes
① Change in weight = Calories eaten − Calories burned
② Calories burned = Calories burned in activity + Basal metabolic rate
③ Basal metabolic rate = K × Body weightBasal metabolic rate (BMR) is the energy your body spends simply growing and maintaining itself — skin, fat, muscle, bone, and the internal organs. The bigger the frame and the organs, the larger the BMR.
Plants make this intuitive. A plant spends energy growing and maintaining its leaves, stem, roots and fruit, but it does not move. A plant’s “calories burned in activity” is zero, so all of its expenditure is basal. Human BMR is the same thing: the energy required to build and maintain the body itself.
K is BMR per kilogram of body weight (kcal per kg per day). Japan’s Ministry of Health, Labour and Welfare publishes it by age and sex in the Dietary Reference Intakes for Japanese (2025):
Basal metabolic rate per kg (kcal/kg/day) — Japanese reference values Age Men Women 18–29 23.7 22.1 30–49 22.5 21.9 50–64 21.8 20.7 65–74 21.6 20.7 75+ 21.5 20.7 A note for readers outside Japan. These are Japanese national reference values, derived from a Japanese population. Your own country’s authority will publish its own figures, and predictive equations such as Schofield or Henry are used elsewhere. The exact number of K is not what matters here. What matters is that K is a constant you cannot change by trying harder — and every step of the argument below holds whatever value you put in.
Two things about K decide everything that follows. It is fixed by age and sex — no effort of yours moves it. And it falls with age. Hold on to that second point; it returns later with some force.
2. Folding the three into one
Substitute ② and ③ into ①:
Change in weight = Calories eaten − Calories burned in activity − K × Body weightThere is a problem. The left side is in kilograms; the right side is in kilocalories. They cannot be equal as written. We need a conversion, and the conventional one is 1 g of body fat = 7 kcal, so 1 kg = 7,000 kcal. Written per day:
7,000 × (Change in weight per day) = Calories eaten − Calories burned in activity − K × Body weightThis is the central equation. Everything else falls out of it.
3. Why the loss keeps slowing down
Take someone who has just adopted a new set of habits. Assume calories eaten and calories burned in activity are now constant under those new habits — this is the whole point of a habit.
Month 1: 70 kg → 66 kg (4 kg lost). Write the equation over 30 days, using the average weight for the month (68 kg) to compute the basal term. Writing I for daily intake and A for daily activity calories:
7,000 × 4 = 30 × (I − A) − 30 × K × 68 … (A)Month 2: starting from 66 kg, suppose ΔW kg are lost. Same habits, so the average weight this month is 66 − ΔW/2:
7,000 × ΔW = 30 × (I − A) − 30 × K × (66 − ΔW/2) … (B)Now subtract (B) from (A). Because the habits did not change, I and A cancel completely. Only the basal terms survive:
7,000 × (4 − ΔW) = 30K × (2 + ΔW/2)Solve for ΔW:
ΔW = (28,000 − 60K) ÷ (7,000 + 15K)Now take the number 4 — last month’s loss — and rewrite it over the same denominator. Multiplying numerator and denominator by the same quantity changes nothing, so this is still just 4:
4 = 4 × (7,000 + 15K) ÷ (7,000 + 15K) = (28,000 + 60K) ÷ (7,000 + 15K)Put them side by side. Same denominator. The numerators differ by exactly 120K:
ΔW = (28,000 − 60K) ÷ (7,000 + 15K)
4 = (28,000 + 60K) ÷ (7,000 + 15K)ΔW = 4 − 120K ÷ (7,000 + 15K) < 4 kgKeep the exact habits that took 4 kg off in month 1, and month 2 will take off less than 4 kg. Always. The arithmetic leaves no room.
The reason is plain once you see it. Weight went down, so the basal metabolic rate — which is K × weight — went down with it. Same food, same exercise, but the body now burns less. The deficit shrinks by itself.
Repeat the identical calculation for month 3, month 4, and so on:
4 > ΔW₂ > ΔW₃ > ΔW₄ > … > ΔWₙ > 0Each month’s loss is smaller than the last, and never turns negative. ΔW converges to zero. The weight does not keep falling. It stops.
4. Where, exactly, does it stop?
Go back to the central equation and substitute the condition “weight has stopped changing” — that is, change in weight = 0:
0 = Calories eaten − Calories burned in activity − K × Body weightSolve for weight:
Body weight = (Calories eaten − Calories burned in activity) ÷ KWhich is where we came in.
Notice what vanished: the 7,000. That conversion factor governs only how fast you converge. It has no influence whatsoever on where you converge. This is worth sitting with, because it means every argument about the exact energy density of fat tissue — and there are many — is an argument about the speed, not the destination.
The numerator is intake and activity: habits. The denominator is a constant set by age and sex. The claim is proved.
How fast? Years, not weeks. Treat the central equation as a differential equation and the weight approaches its target exponentially, with a time constant of roughly 7,000 ÷ (K × physical activity level) days. For a man aged 30–49 at a “moderate” activity level (1.75), that is about 180 days — a half-life of roughly four months.
So a new set of habits takes more than a year to finish paying out. “It stopped after three months” does not mean you failed. It means you are not finished.
5. A worked example: cut 100 kcal a day
Halve the rice at dinner. Call it 100 kcal a day. Keep it up. What happens?
The naive prediction. 100 kcal × 365 days = 36,500 kcal. At 7,000 kcal per kg, that is 5.21 kg in the first year — and, presumably, another 5.21 kg the year after.
What actually happens. Nothing of the sort. As weight falls, BMR falls with it, and the whole thing converges. From the conclusion:
Weight change = 100 kcal ÷ KFor a man aged 30–49 (Japanese reference weight 70.0 kg, K = 22.5, activity level 1.75), the honest answer is about −2.5 kg.
Roughly −2.2 kg by the end of the first year. And then, no matter how long you keep going, it never goes past −2.5 kg.
Why is it smaller than 100 ÷ K? Strictly, the calories you burn in activity are also proportional to body weight — hauling a heavier body around costs more. Fold that in and the effective denominator becomes K × physical activity level, which is larger, so the total change is smaller. The figure above reflects that.
What cutting 100 kcal a day buys you is not “5 kg a year.” It is “a body 2.5 kg lighter, for the rest of your life.”
That is not a failure. It means a new weight has been defined by a new habit. Which is the entire point.
6. What the equation says about plateaus and rebound
Why am I not losing weight?

Because — the equation is blunt about this — your current habits match your current weight. The change has not gone far enough. You are still eating too much, or moving too little, or both.But note carefully: the slowing itself is normal. A plateau is not failure. It is arrival — at the weight your habits specify. If you want to go lower, you must change the habits again. Not try harder at the same ones.
What rebound actually is
If habits determine weight, then the contrapositive is immediate: go back to the old habits and the weight goes back too.
That is rebound. Not weak will. Not a broken metabolism. Not a bad constitution. The equation simply reverted.
And here is the uncomfortable corollary. Reaching your goal weight and then “stopping the diet” is returning to the old habits. So the weight must come back. There is no version of this where it does not.
Where diets and drugs fit
There are effective weight-loss methods, and there are effective weight-loss drugs. In this framework, starting one of them is exactly one thing: adopting a new habit.
Which means there are precisely two ways to avoid rebound:
- Continue the method or the treatment, indefinitely.
- Stop only once you already have habits that hold the goal weight.
Someone going from 70 kg to 50 kg introduces a method capable of −20 kg, and in parallel rebuilds their habits, and stops only when habits that sustain 50 kg are genuinely in place. That is the only path. Everything else is a loan that gets called in.
Weight-loss treatment is not the destination. It is the runway.
Getting older on the same habits makes you heavier
Look at the table again. K falls with age. In the conclusion, a smaller denominator with the same numerator means a larger converged weight.
So it is not “I gained weight even though I eat the same as I always did.”
It is “I gained weight because I eat the same as I always did.”
7. The “speed up your metabolism” myth
Look once more at equation ③:
Basal metabolic rate = K × Body weightK is a constant set by age and sex. Therefore the only way to raise your BMR is to get heavier. And correspondingly, when a diet works and your weight falls, your BMR falls. It has to.
“Raise your metabolism to lose weight” does not survive contact with this equation.
So why does muscle still matter enormously?
Because you should not be thinking about weight. You should be thinking about volume.
One gram of fat occupies about 1.10 cm³. One gram of muscle occupies about 0.91 cm³. Replace 10 kg of fat with 10 kg of muscle and the scale does not move by a single kilogram — while the body visibly tightens, by roughly 17% in volume.
The real goal of weight loss was never the number on the scale. It is less fat and less volume. Which makes building muscle — or at minimum, not losing it — decisive. That requires protein at or above the recommended intake, and resistance training built into ordinary life. Both are in Part III.
Part II — Where this sits in the literature, and where it is wrong
Everything above is arithmetic a schoolchild can check. That is its whole value. But arithmetic that nobody has checked against the literature is just confident arithmetic, so here is the check.
Hall et al. reached the same conclusion — with calculus
In 2011, Kevin Hall and colleagues at the US National Institutes of Health published a dynamic mathematical model of adult human metabolism in The Lancet 2). Their targets and their findings map almost exactly onto Part I.
They demolish the static rule — the “3,500 kcal per pound” rule, which says that a fixed daily deficit produces a steady, unending, linear weight loss. That rule had been written into official guidance by the NHS in the UK, the NIH and the American Dietetic Association in the US. It was derived by estimating the energy content of the tissue lost, and it ignores the fact that expenditure falls as the body shrinks — which is precisely the mechanism of Section 3 above.
What Hall’s model shows instead:
- Weight converges to a new steady state. Not endless linear loss — a plateau. (Sections 3 and 4.)
- A rule of thumb: for an average overweight adult, a permanent change of intake of 100 kJ per day (about 24 kcal) produces an eventual weight change of about 1 kg.
- It is slow. About half the total change arrives in the first year; about 95% takes around three years.
The last point deserves emphasis, because it is the one that rescues people. A 100 kg sedentary man who cuts 500 kcal a day settles at around 75 kg — but takes years to get there. The static rule predicts he loses 22 kg in the first year alone, and the resulting error can reach about 10 kg within that year. That gap between promise and reality is where most people conclude they have failed, and quit.
So: the arithmetic of Part I and the calculus of Hall agree on the shape of the answer. Weight converges, and it converges slowly. Nothing in Part I is original. It is a route to a known destination that a patient can walk unaided — which is the only thing I claim for it.
Where my equation is wrong
The numbers do not agree, and I would rather say so than have you find out.
The equation above Hall et al. Cut 100 kcal/day → eventual loss −2.5 kg about −4 kg Cut 500 kcal/day → eventual loss −12.7 kg about −25 kg (100 kg adult) Half-life of the change about 4 months about 1 year My equation under-predicts how much you can lose, and over-predicts how fast. Both errors have a single source, and it is worth naming precisely.
K is an average, and I used it as a marginal
K = 22.5 kcal/kg/day is a whole-body average: total basal expenditure divided by total body weight. But the tissues that make up that average are wildly unequal. Elia’s classic figures 3), in kcal per kg per day:
Tissue kcal/kg/day Heart, kidneys 440 Brain 240 Liver 200 Skeletal muscle 13 Adipose tissue 4.5 Everything else 12 Now ask the question that actually matters: when you lose one kilogram, which kilogram is it?
Overwhelmingly, adipose tissue — at 4.5 — plus some skeletal muscle, at 13. Your heart, kidneys, brain and liver do not shrink. They are carrying the enormous coefficients, and they are not the tissue leaving.
So the metabolic cost of the marginal kilogram is far below the 22.5 average. My equation divides by a denominator that is too big. Therefore it predicts too little weight change. The direction of the error is not in doubt; only the size of it is, and for that you should use Hall’s empirical answer — about 24 kcal/kg/day for the average overweight adult, not my 39.
Which means: the fatter you are, the more wrong I am
The gap between the average and the marginal widens with adiposity. Hall’s finding is explicit: adults with more body fat lose more weight for the same intake change, and take longer to get there. Independent work confirms that Elia’s coefficients hold up in non-obese adults but require adjustment in the obese 4).
So, honestly:
- Near a standard build, the equation works well. Its answer for a 100 kcal cut — about 2.5 kg — sits close to the figure published in Japan’s own dietary guidelines, which put the plateau at roughly 2 kg.
- In severe obesity, do not use it. For a 100 kg adult cutting 500 kcal a day it says −13 kg where Hall’s simulation says −25 kg. It will badly undersell what is achievable, and that is the last thing anyone in that position needs to hear.
One caution in the other direction, for completeness. Hall’s simulations assume the intake cut is actually sustained. In reality it rarely is: weight loss drives a compensatory rise in appetite of roughly 100 kcal per day for every kilogram lost 5). Real-world results therefore tend to land below the model’s ceiling — not because the person is weak, but because the biology is pulling in the other direction the whole way down.
What survives
Every number above can move. The structure cannot:
- Weight converges. It does not fall forever.
- The destination is set by habits, age and sex.
- A plateau is not failure.
- Rebound is the equation reverting, not a character flaw.
Whatever value you put in the denominator, convergence is preserved. That is the part I would defend anywhere.
Part III — What to actually do
If you weigh 70 kg and want to weigh 50 kg, there is exactly one task: acquire the habits of a person who weighs 50 kg. Here is what I ask patients to do.
1. Make it a hobby
The moment it becomes a penance or a quota, it is over — and a thing you do not continue is not, by definition, a habit. This is not motivational fluff; it is a technical requirement. Part I showed that reaching the new weight takes years. A method you cannot sustain for years is not a method. Treat the falling number as the day’s small pleasure. Picture, concretely, the version of you at the other end.
2. Weigh yourself daily — and read the trend, not the day
Step on the scale after your bath, every day, and record it. Look at the graph, not the number.
Weight behaves like a stock price. A 0.5 kg jump overnight is completely ordinary and is almost entirely water. Judging yourself on a single day’s reading is judging yourself on noise.
Get a scale that records automatically. Manual entry fails, far faster than anyone expects. A smartphone-linked scale logs the moment you stand on it. This single choice has an outsized effect on whether you are still doing this in six months — treat it as the investment that turns the habit into “just stand there.”
3. Movement — build it into the life you already have
What the guidelines say. Japan’s national physical activity guide (2023) recommends, for adults: 60+ minutes daily of walking or equivalent — about 8,000+ steps; resistance training 2–3 days a week; and avoid long unbroken sitting. For older adults, about 6,000 steps.
What I actually say. Nobody goes from a standing start to 8,000 steps and stays there. So: put the floor at 5,000 steps, hold it, then walk it up toward 8,000. A target you abandon never becomes a habit, and a habit is the only thing that moves the numerator.
Do the resistance training. Section 7 explained why: the goal is volume, not the scale. Lose muscle and the weight falls while the body stays soft.
Do not try to find time to exercise. Carving out a new hour is how people quit in week three. Convert what you already do:
- On a fine morning, get up an hour early and walk for 30 minutes.
- Swap the car commute for the train.
- On the way home, walk one, two, three stops — and get on the train when you have had enough.
- Take the stairs as far as you can, then take the lift the rest of the way.
Deciding in advance that you are allowed to stop partway is what makes it survive. (Cycling on flat ground, incidentally, is excellent transport and mediocre exercise. Do not count on it.)
4. Meal timing — leave a gap
This is the highest-yield item on the list.
Body fat is only mobilised for energy once the supply of glucose runs out. Put the other way round: while you keep eating, your fat is never called upon. Hence the gap between meals matters.
What I suggest is a gap of 15 hours or more, once a day:
Finish dinner by 21:00 → skip breakfast → eat lunch after 12:00 the next day. (21:00 to 12:00 is 15 hours.)
Skipping breakfast may feel wrong. But “three proper meals a day” is not automatically optimal for someone trying to lose weight. During a weight-loss phase, securing a genuine gap is the more coherent strategy.
Please read this before trying it. This approach is not for everyone. If any of the following applies to you, do not do this on your own judgement — speak to your own doctor first. Hypoglycaemia is a real danger.
- Anyone being treated for diabetes — particularly on insulin or sulfonylureas
- Anyone on any medication that can cause hypoglycaemia
- Anyone pregnant or breastfeeding
- Older adults, underweight people, anyone whose physical reserves are low
- Anyone with a history of an eating disorder
- Children and adolescents
“Hungrier is better” is false. A genuine gap helps. Extreme fasting is counterproductive. Run short of both energy and protein for long enough and the body will break down muscle to make up the difference — at which point your volume does not fall, and the mirror does not change. Hunger that brings dizziness, loss of concentration, or feeling unwell has gone too far. That is a signal, not a score.
5. Nutrition — cut carbohydrate, protect protein
Carbohydrate. Until you reach your goal weight, keep it low. Rice, bread, noodles — and sugared drinks, which are the easiest large win most people have available.
Protein is not negotiable. This is the one line you do not cut. Japan’s 2025 dietary reference intakes recommend:
Recommended protein intake (g/day) Age Men Women 18–49 65 50 50–64 65 50 65+ 60 50 While losing weight, do not go below this. Diet without enough protein and the body takes the deficit out of muscle rather than fat — which defeats the entire purpose.
Protein content of common foods Food Portion Protein Chicken breast, skinless 100 g ~23 g Beef or pork, lean 100 g ~20 g Fish (salmon, mackerel) 1 fillet (80 g) ~18 g Firm tofu 150 g ~10 g Natto 1 pack (50 g) ~8 g Egg 1 ~6 g Milk 200 ml ~7 g A chicken breast, a fillet of fish, two eggs and a pack of natto comes to roughly 62 g. Add tofu or milk and a man clears the recommendation.
Water. Eat less and you also drink less, because a surprising share of your fluid comes from food. Drink calorie-free fluids deliberately.
Vitamins. Eat less and you get fewer vitamins. A multivitamin covers the gap cheaply.
6. When you are going to eat anyway
Not a moral failure — a choice to be made well.
- Choose the protein-heavy option — grilled meat, yakitori, fish, eggs.
- If it must be a rice bowl — small rice, extra meat on the side, an egg on top.
- If it must be ramen — leave as much of the noodle as you can, and load it with pork and egg.
The principle never changes: take out carbohydrate, put in protein.
7. An occasional large meal is genuinely fine
This follows directly from Part I, and it matters more than it looks.
Weight is determined by habits. Turn that over: a one-off act, which is not a habit, does not determine your weight.
Suppose one day you eat 2,100 kcal more than you should. At 7 kcal per gram of fat, that is 300 g. And as long as it does not become a habit, the weight drifts back to whatever your habits specify.
A single big meal does not erase months of work. The thing to watch is never the day. It is the habit.
8. If you drink
Choose distilled spirits — a highball is the easy default. Beer, sake and sweet cocktails carry substantially more sugar.
One caveat, and it is the one people dodge: a low number on the label means nothing if the volume goes up. “It’s zero-sugar” is not a licence for a fourth one.
Separately from weight, alcohol affects blood pressure, cardiac arrhythmia and the liver. If you can drink less, drink less.
9. Think back to when you were thinner
The thinner version of you was, almost certainly, someone who:
- spent far more hours of the day hungry,
- had less money in their wallet,
- and went to the convenience store far less often.
Weight is set by habits — so recover those habits and you recover that weight. Concretely: keep carbohydrate out of arm’s reach and stop snacking; do not carry much cash; stay out of the convenience store.
The point is not to summon more willpower. It is to reduce the number of moments in which your willpower is tested. That is the whole trick, and it is why it works.
10. Ageing on the same habits makes you heavier
K falls with age. Smaller denominator, same numerator, larger converged weight. So unless you eat progressively less as you age, you will gain — with certainty. Not “despite eating as I always did.” Because of it.
11. When the weight will not move
The equation is unsentimental: the change in habits is not yet sufficient. Still eating too much, still moving too little, or both.
But — again — the slowing is normal. Weight converges; it does not fall forever. A plateau means you have approached the weight your habits define. To go lower, change the habits another notch.
One exception worth knowing. Rapid or unexplained weight change, in either direction, can indicate an underlying condition — thyroid dysfunction among others. If the numbers do not match the behaviour, that is worth investigating with a doctor rather than pushing harder.
12. If changing how you eat is genuinely beyond you right now
Some people read all of the above and know, honestly, that they cannot execute it. That is a legitimate position, and medicine has something to offer.
GLP-1 receptor agonists are now well established for weight management in people with obesity. They are prescription medicines with real side effects, real costs, and real variation in response between individuals — they require a doctor, and they require assessment of whether they are appropriate for you. What I can offer here is not a recommendation but a framing, and it is the same framing as everything else in this article:
Starting a drug is adopting a new habit. Nothing more mysterious than that. Which means Part I’s conclusion applies without modification: stop the drug, return to the old habits, and the weight returns. The equation does not care why the numerator changed.
So the treatment is worth doing when it is used as it should be: alongside a rebuild of the habits, with the goal of stopping only once habits that hold the target weight are actually in place.
The drug is not the destination. It is the runway.
13. Rebound, one last time
“Weight is determined by habits, age and sex” means, with no wriggle room, “return to the old habits and the weight returns.”
That is all rebound has ever been. Not willpower. Not your constitution. The equation reverted.
So: acquire habits that hold the goal weight, and only then finish the diet.
The goal of a diet was never reaching the target weight. It is owning the habits that keep you there.
Summary
- Weight is determined by habits, age and sex
- Hold the same habits and weight does not fall forever — it converges to one point
- The destination is (intake − activity) ÷ K, and the 7,000 kcal conversion has no effect on where you land
- Convergence takes years. A plateau is not failure
- Go back to the old habits and the weight goes back. That is rebound
- You cannot raise your BMR — but keeping muscle determines your body’s volume
- K falls with age. The same life makes you heavier
- This arithmetic under-predicts loss and over-predicts speed, increasingly so with obesity. For accurate individual projections, use Hall’s model 2) or the NIH Body Weight Planner
If your weight is not what you want it to be, the thing to change is not the weight. It is the habits. Live as the person at your goal weight lives. Stripped to its core, dieting is nothing but that.
Limits of this article
- It does not apply to severe obesity or severe underweight. The reference values used are drawn from populations of standard build. See Part II.
- Basal metabolic rate varies between individuals. This is an approximation built on population averages, and guarantees nothing about any one person.
- Conditions affecting metabolism change the premises — thyroid disease among them. Rapid weight change should prompt investigation, not effort.
- Short-term weight swings are largely water and glycogen, and cannot be read as changes in fat.
- 1 g of body fat = 7 kcal is an approximation. Adipose tissue contains water and other components.
Fukumoto Clinic practices in Japanese only, in Osaka, Japan. This article is educational and is not an invitation to consult, nor a substitute for individual medical advice. If you are being treated for any condition — diabetes in particular — discuss any change to your eating with your own physician before making it.
Author
Atsushi Fukumoto, MD, PhD — Director, Fukumoto Clinic
Internal Medicine and Cardiology
Kobe University School of Medicine, 1997
PhD in Medicine
Board-Certified Cardiologist (Japanese Circulation Society, reg. no. 15490)
Full profileReferences
- Ministry of Health, Labour and Welfare, Japan. Dietary Reference Intakes for Japanese (2025). Published October 2024.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html - Hall KD, Sacks G, Chandramohan D, Chow CC, Wang YC, Gortmaker SL, Swinburn BA. Quantification of the effect of energy imbalance on bodyweight. Lancet. 2011;378(9793):826-837.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21872751/ - Elia M. Organ and tissue contribution to metabolic rate. In: Kinney JM, Tucker HN, eds. Energy Metabolism: Tissue Determinants and Cellular Corollaries. New York: Raven Press; 1992:61-79.
- Wang Z, Ying Z, Bosy-Westphal A, et al. Evaluation of specific metabolic rates of major organs and tissues: comparison between nonobese and obese women. Obesity. 2012;20(1):95-100.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21836642/ - Polidori D, Sanghvi A, Seeley RJ, Hall KD. How strongly does appetite counter weight loss? Quantification of the feedback control of human energy intake. Obesity. 2016;24(11):2289-2295.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27804272/ - Ministry of Health, Labour and Welfare, Japan. Physical Activity and Exercise Guide for Health Promotion 2023.
First published (video): 13 July 2021. This English edition: July 2026.
福本医院は大阪市中央区南船場にある内科・循環器内科です。
大阪メトロ御堂筋線・心斎橋駅から徒歩2分、なんば(難波)からは1駅です。長堀橋・本町・四ツ橋からも徒歩圏内で、新町・堀江・立売堀をはじめ大阪市西区からも多くの患者様にご来院いただいております。 -
ダイエット方法 ―「ダイエット論」に基づいた、具体的な進め方
■ この記事のポイント
本記事は「ダイエット論 ― 体重は生活習慣と年齢と性別で決まる」の
続編にあたる、実践編です。理論編で導いた結論を、日々の生活にどう
落とし込むかをご説明します。・体重は「生活習慣 ÷ 年齢と性別で決まる定数」で決まります
・食事の間隔を1日15時間以上空けることが、最も効きます
・タンパク質は削らない(男性65g・女性50g/日)
・停滞は失敗ではなく、その生活習慣で決まる体重に近づいたということです
・リバウンドは意志の問題ではありません。元の生活習慣に戻れば体重も戻ります70kgの方が50kgになりたいのであれば、やるべきことは一つです。「50kgを維持できる生活習慣」を身につける。 ここから先は、そのために当院が実際にお勧めしている方法です。


理論の裏づけ(なぜ痩せなくなるのか、なぜリバウンドするのか)を先に
お知りになりたい方は、理論編をご覧ください。
【動画でご覧になりたい方へ】
同じ内容を動画でも公開しています。1. まず、ダイエットを「趣味」にする
苦行やノルマだと思った時点で、まず続きません。そして続かないものは、定義上、生活習慣にはなりません。
体重が減っていくことを、毎日の楽しみとして扱う。ダイエットに成功したご自身を、具体的に思い描いてみてください。
これは精神論ではありません。「継続できる形にする」という、技術的な要請です。理論編で示したとおり、新しい体重に到達するには年単位の時間がかかります。続かない方法には、そもそも意味がないのです。
2. 体重測定 ― 毎日測り、トレンドで見る
毎日お風呂上がりに体重計に乗り、記録する。グラフで評価する習慣をつけましょう。
大事なのは、その日の数値で一喜一憂しないことです。体重の動きは株価によく似ています。日々の上下ではなく、トレンド(傾向)で判断してください。1日で0.5kg増えることは普通にあります。それはほぼ水分です。
自動で記録される体重計を
手入力は、想像以上に続きません。スマートフォン連携に対応した体重計なら、乗るだけで自動的にアプリへ記録されます。
選ぶときは、通販サイトや検索エンジンで 「体組成計 スマホ連携」 と検索してみてください。iPhoneをお使いなら 「体組成計 ヘルスケア 連携」、Androidなら 「体組成計 Google Fit 連携」 と加えると、より絞り込めます。
確認すべきは、次の3点だけです。
- スマートフォンのアプリに、自動で記録されること
- お使いのスマートフォン(iPhone/Android)に対応していること
- 体重に加えて、体脂肪率が測れること
価格帯は幅がありますが、この3点を満たしていれば十分です。体重計選びは、じつは成否をかなり左右します。「乗るだけ」にするための投資だとお考えください。

3. 運動 ― 生活のなかに組み込む
国が推奨している量
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人について次のように推奨されています。
- 歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)
- 筋力トレーニングを週2〜3日
- 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにする
高齢者では1日約6,000歩以上が目安となります。
当院がお伝えしていること
とはいえ、いきなり8,000歩は続きません。続かない目標は、生活習慣になりません。
ですので当院では、まず1日5,000歩を最低ラインに置いていただき、そこから8,000歩へ近づけていくことをお勧めしています。スマートフォンのアプリ(iPhoneなら「ヘルスケア」)で、毎日の歩数を確認してください。
筋力トレーニング週2〜3日は、ぜひ取り入れてください。理由は理論編で述べたとおりです。ダイエットの目的は体重計の数字ではなく、身体の体積を減らすこと。筋肉が落ちれば、体重が減っても身体は締まりません。
「運動の時間」を作ろうとしない
時間を新たに確保しようとすると、挫折します。すでにある行動を、運動に変えてください。
- 天気の良い朝、1時間早起きして30分散歩する
- 車通勤を電車通勤に変える
- 通勤・通学の帰りに、1駅〜3駅、歩けるだけ歩く(途中から電車やバスに乗ればいい)
- マンションやビルでは、階段を昇れるだけ昇る(途中の階からエレベーターに乗ればいい)
「全部やらなくていい、途中まででいい」と決めておくと、続きます。
なお、平地での自転車は、あまり良い運動にはなりません。移動手段としては優秀ですが、運動量としては期待しないでください。
4. 食事習慣 ― 食事の間隔を空ける
ここが最も効きます。
体脂肪は、糖の供給が途切れて初めて、エネルギーとして使われ始めます。逆に言えば、何かを食べ続けている限り、体脂肪の出番はありません。ですから食事と食事の間隔を空けることが重要になります。
当院がお勧めしているのは、1日15時間以上、食事の間隔を空ける形です。
夜21時までに夕食を済ませる
→ 朝食は摂らない
→ 翌日12時以降に昼食
(21時 → 翌12時で、15時間)朝食を抜くことに抵抗を感じられるかもしれませんが、「3食きちんと」は、減量を目指す方にとって最適解とは限りません。減量期においては、空腹の時間を確保するほうが理にかなっています。
【必ずお読みください】この方法が適さない方
以下に当てはまる方は、自己判断で行わず、必ず主治医にご相談ください。低血糖などの危険があります。
- 糖尿病で治療中の方(特にインスリン、SU薬を使用中の方)
- その他、低血糖を起こしうるお薬を使用中の方
- 妊娠中・授乳中の方
- 高齢の方、痩せている方、体力の落ちている方
- 摂食障害の既往がある方
- 成長期のお子さま
「空腹であればあるほど良い」ではありません。
空腹の時間を確保することは有効ですが、極端な絶食は逆効果です。エネルギーもタンパク質も不足した状態が続くと、身体は筋肉を分解してエネルギーに変えます。筋肉が落ちれば身体の体積は減らず、見た目も締まりません。ふらつき、集中力の低下、体調不良が出るような空腹は、行き過ぎです。5. 栄養 ― 炭水化物を控え、タンパク質を守る
炭水化物
目標体重に達するまでは、炭水化物を極力控えましょう。ご飯、パン、麺、そして砂糖入りの飲料です。
タンパク質は「削らない」
ここは削ってはいけない項目です。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」における、タンパク質の推奨量は次のとおりです。
タンパク質の推奨量(g/日) 年齢 男性 女性 18〜49歳 65 50 50〜64歳 65 50 65歳以上 60 50 減量中こそ、この量を下回らないようにしてください。タンパク質が不足したまま減量すると、身体は脂肪ではなく筋肉を削ります。
タンパク質を多く含む食品
食品 目安量 タンパク質 鶏むね肉(皮なし) 100 g 約 23 g サラダチキン 1個(110 g) 約 24 g 牛肉・豚肉(赤身) 100 g 約 20 g 魚(鮭・さばなど) 1切れ(80 g) 約 18 g 木綿豆腐 1/2丁(150 g) 約 10 g 納豆 1パック(50 g) 約 8 g 卵 1個 約 6 g 牛乳 200 ml 約 7 g たとえば、サラダチキン1個+魚1切れ+卵2個+納豆1パックで、およそ 62g。ここに豆腐か牛乳を足せば、男性の推奨量にも届きます。
水分とビタミン
- 水分:食事量が減ると、食事から摂っていた水分も減ります。ノンカロリーの水分をしっかり摂ってください。
- ビタミン:食事量が減ればビタミンも不足します。マルチビタミンのサプリメントで補いましょう。
6. どうしても食べたいときは
我慢しきれないときの、現実的な選び方です。
- タンパク質の多いものを選ぶ ― 焼肉、焼き鳥、魚料理、卵料理
- どうしても牛丼なら ― 小盛り+牛皿+温玉のせ(ご飯を減らし、タンパク質を足す)
- どうしてもラーメンなら ― 麺をできるだけ残し、チャーシューと味付け卵をトッピング
考え方はどれも同じです。炭水化物を減らし、タンパク質に置き換える。
7. たまになら、しっかり食べても大丈夫です
これは「ダイエット論」から直接導かれる、重要な帰結です。
体重は生活習慣で決まります。裏返せば、習慣でない一度きりの行動は、体重を決めません。
仮にある日、2,100kcal 余計に食べてしまったとします。体脂肪1g=7kcal ですから、増えるのは300gだけです。そしてそれが習慣でない限り、体重はやがて今の習慣で決まる体重へ戻っていきます。
一度の食べ過ぎで、これまでの努力が消えることはありません。気にすべきは1日ではなく、習慣です。
8. お酒を飲むなら
蒸留酒を選んでください。特にハイボールがお勧めです。ビール、日本酒、甘いカクテルは糖質が多くなります。
ただし一点。表示カロリーが低くても、量を飲めば同じことです。「糖質ゼロだから」と本数が増えては、意味がありません。
なお、飲酒は体重とは別に、血圧・不整脈・肝臓への影響もあります。減らせるのであれば、減らすに越したことはありません。
9. 「昔、痩せていた頃」を思い出してみてください
痩せていた頃のご自身は、おそらくこうだったはずです。
- 空腹を感じている時間が、今よりずっと長かった
- 財布の中のお金が、今より少なかった
- コンビニに、今ほど行かなかった
体重は生活習慣で決まるのですから、その頃の生活習慣を取り戻せば、その頃の体重に戻ります。具体的には——
- 身の回りに炭水化物を置かない。間食をしない
- 財布にお金をあまり入れておかない
- コンビニには極力行かない
意志の力に頼るのではなく、意志を試される場面そのものを減らす。これが続けるコツです。
10. 歳を取ると、同じ生活では太ります
理論編の式を思い出してください。分母の基礎代謝基準値は、年齢とともに下がります。
分母が小さくなるということは、同じ分子(同じ生活習慣)なら、収束する体重は大きくなるということです。
つまり、歳を取る分だけ食べる量を減らしていかないと、必ず太ります。「昔と同じように食べているのに太った」のではなく、「昔と同じように食べているから太った」のです。
11. 体重がなかなか減らないときは
厳しいようですが、式はこう言っています。
生活習慣の改善が、まだ不十分です。
現状では、食べ過ぎか、運動不足か、その両方ということになります。
ただし、減り方が鈍ること自体は正常です。理論編で示したとおり、体重は減り続けるのではなく、ある一点へ収束していきます。停滞は失敗ではなく、その生活習慣で決まる体重に近づいたということです。さらに減らしたいのであれば、生活習慣をもう一段変える必要があります。
なお、急激な体重の増減や、生活習慣で説明のつかない変化がある場合は、甲状腺機能異常などの疾患が隠れていることもあります。気になる場合はご相談ください。
12. 食事習慣を変えるのが難しい方へ
ここまでお読みになって、「食事習慣を変えるのが、どうしても難しい」と感じられた方もおられると思います。
当院では、そうした方を対象に、自由診療(保険適用外)による減量治療を行っています。
- 自由診療のため、費用は全額自己負担となります
- BMI 27以上の方が対象です
- 主な副作用として、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、食欲不振などが報告されています
- 効果や副作用には個人差があります。医師の診察のうえ、適応を判断します
- 詳細・費用は自由診療のご案内をご覧ください
ただし、これは「新しい生活習慣を一つ取り入れる」ことにほかなりません。理論編で示したとおり、治療をやめて元の生活習慣に戻れば、体重も元に戻ります。
ですから当院では、治療と並行して生活習慣を改善していただき、目標体重を維持できる習慣が身についた時点で終了するという進め方をお勧めしています。治療は目的ではなく、生活習慣が変わるまでの助走です。
なお、糖尿病の治療(保険診療)とは、対象も目的も異なります。糖尿病の治療については、別途ご相談ください。
13. リバウンドとは何か
もう一度だけ、確認します。
「体重は、生活習慣と年齢と性別で決まる」ということは、「元の生活習慣に戻れば、体重も元に戻る」ということです。
これがリバウンドです。意志の問題でも、体質の問題でもありません。式が元に戻っただけです。
リバウンドしないために
目標体重を維持できる新しい生活習慣を身につけてから、
ダイエットを終了する。これが決定的に重要です。ダイエットのゴールは「目標体重に到達すること」ではありません。「目標体重を維持できる生活習慣が定着すること」です。
まとめ
- ダイエットを趣味にする ― 続かないものは生活習慣にならない
- 毎日測り、トレンドで評価する
- まず1日5,000歩から、国の推奨8,000歩へ。筋トレは週2〜3日
- 食事の間隔を15時間以上空ける(該当する方は必ず主治医にご相談を)
- 炭水化物を控え、タンパク質は推奨量を下回らない(男性65g・女性50g)
- たまになら大丈夫。決めるのは1日ではなく習慣
- 意志に頼らず、意志を試される場面を減らす
- 維持できる習慣が身についてから、ダイエットを終了する
体重の増加は、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病、さらには心不全のリスクに直結します。減量についてお困りのことがあれば、どうぞ当院にご相談ください。
理論的な裏づけを詳しくお知りになりたい方は、「ダイエット論 ― 体重は生活習慣と年齢と性別で決まる」をご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年10月公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html - 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年1月) https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
※ 本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個々の診断・治療に代わるものではありません。
※ 持病のある方、治療中の方は、実施前に必ず主治医にご相談ください。
※ 自由診療による減量治療は保険適用外であり、費用は全額自己負担となります。効果・副作用には個人差があります。初出:2021年7月26日(動画公開)/全面改訂:2026年7月
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